8月18日に行われた札幌記念(GII)を制したブラストワンピース(牡4歳、美浦・大竹正博厩舎)。同馬はこのレースで3着だったフィエールマン(牡4歳、美浦・手塚貴久厩舎)とともに10月6日に行なわれる凱旋門賞(GI、フランス・パリロンシャン競馬場)へ挑戦する。

 今年の凱旋門賞は他にキセキ(牡5歳、栗東・角居勝彦厩舎)も挑戦予定で、同馬はすでにフランス入り。9月15日にパリロンシャン競馬場で行なわれるフォワ賞を叩き台に本番へ向かう方向だ。

「幸い現地入り後も落ち着いているようです」

 世界中でGIを勝ちまくってきた角居調教師はそう語る。鞍上には凱旋門賞2勝のクリストフ・スミヨン騎手を確保したが、角居調教師自身は、ヨーロッパでのビッグタイトルがまだない。

 まずはキセキがフォワ賞でどのようなパフォーマンスを披露するか。過去のデータ的にはここで惨敗を喫するようなら本番での巻き返しはかなり難しくなるだけに、好走を期待したい。

札幌記念組の2頭はイギリス経由で。

 一方、札幌記念組の2頭、ブラストワンピースとフィエールマンはまずイギリスへ飛ぶという。競馬の聖地でもあるニューマーケットに入り、かの地でJ・チャプルハイアム調教師が間借りするアビントンプレイスという場所にある厩舎に入厩。ここで調教を積んだ上で直前にフランスへ移動。大一番に挑戦する。

 ニューマーケットは有名なウォーレンヒルと呼ばれる坂路コースの他、ロングヒルやゴールデンマイル、また、アルバハトリと呼ばれるコースなど、調教コースが豊富。競馬が開催されるニューマーケット競馬場でも申請次第で調教が可能だ。

3連覇を狙うエネイブルも遠征組。

 ちなみにアビントンプレイスはこの夏、ナッソーS(GI)を制したディアドラやキングジョージVI世&クイーンエリザベスS(GI)とインターナショナルS(GI)に挑戦したシュヴァルグランも入厩した場所だ。

 現在もまだディアドラは入厩しているので、困った時や分からない事があれば同じ日本チームとしてのサポートも充分に考えられるだろう。そういう意味でも悪いロケーションではなさそうだ。

 そもそもニューマーケットに入り、ここから凱旋門賞へ挑む形は日本馬としては初めてだが、突飛なことではない。イギリス馬の多くはこのパターン。3連覇を目指しているエネイブルを管理するジョン・ゴスデン調教師はニューマーケットに厩舎を構えており、毎朝の調教をここで行っている。つまりエネイブルもニューマーケットからの遠征組なのだ。

 また、少々古くなるが、1998年に日本馬のシーキングザパールがモーリスドゲスト賞(GI)を優勝した時も同様だった。管理する森秀行調教師は同馬をニューマーケットの厩舎へ置き、そこで調整を重ねた後、船でフランスに渡って栄冠を手中に収めたのだ。

ノーザンファームにとっての大願。

 では、なぜ今、このタイミングでニューマーケット滞在なのか。

「ニューマーケットに馬を連れて行くのはもちろん、初めてです」

 ブラストワンピースの大竹正博調教師はそう語る。これはフィエールマンの手塚貴久調教師も同様。共に凱旋門賞への挑戦はもとより、ヨーロッパの競馬への参戦も今回が初めてである。つまりこのニューマーケット滞在作戦は指揮官が音頭をとって実現したのではないことが察せられる。

 この2頭に共通しているのは言わずもがな、いずれもノーザンファームの生産馬という点である。

 凱旋門賞制覇は日本のNo.1ファームにとっても大きな目標の1つ。2017年はサトノダイヤモンドを、2016年はマカヒキを大舞台に送り込んだが、それぞれ15、14着と惨敗。それ以前にも2006年のディープインパクトも3位入線(後に失格)したが、未だ大願は成就されていない。

違うアプローチで求める好結果。

 ノーザンファームの過去の挑戦に共通しているのが、いずれもフランスの厩舎に入厩したという点。

 つまり今回のイギリス・ニューマーケット入りは、模索を続ける日本一の生産者が、違うアプローチでの好結果を求めたということなのだろう。

 果たして新しい形での挑戦が、3連覇を目指すエネイブルを筆頭とした、強いヨーロッパ勢に対し、どのような答えを導き出すことができるのか……。

 今年の凱旋門賞は単なる勝ち負けだけではなく、今後を占う意味でもその結果が注目される一戦となりそうだ。
 

(「競馬PRESS」平松さとし = 文)