バスケットボール男子のワールドカップ(W杯)で、1次リーグE組の日本は5日、米国に挑戦する。その日本代表には、米プロバスケットNBAウィザーズにドラフト指名された八村塁(21)に見劣りしない実績を米国の大学で築いた選手がいる。米国出身で、昨年4月に日本国籍を取得したファジーカス・ニック(34)だ。

 全世界で4億5千万人とも言われるバスケットの競技人口はサッカーよりも多い。そのうちNBAの選手は約450人しかなれない。競争は熾烈(しれつ)を極めるし、運にも左右される。

 ファジーカスは、八村同様、全米大学選手権で大活躍し、NBAでドラフト指名された。生き残るためにもがいた。左足首の骨が折れていても痛み止めを飲んでプレーを続けた。普通に歩くときですら左足を引きずるようにして歩くのはその代償だ。そうまでしたが、ほかの選手の補強の兼ね合いなどもあり、NBA生活は1シーズンで終わった。

 NBAから漏れた選手は世界各地へ渡る。ファジーカスが見つけた安住の地が日本だった。欧州、フィリピンを経て27歳でたどり着いた。

 所属した東芝(現B1川崎)では、卓越したシュート技術で1年目から大活躍し、チームを変貌(へんぼう)させた。誰かに勧められたわけでもなく、「日本が好き。ここで長くプレーしたい」と日本国籍取得に踏み切った。

 ファジーカスの取材をして思いだしたのは、ブラジル人のサッカー選手だ。職を求めて全世界を渡り歩き、その国の代表選手になることもある。日本代表MFラモス瑠偉さん(62)はそんな典型だ。

 ラモスさんはJ、ファジーカスはB、それぞれのプロリーグ開幕前に来日し、同じ川崎市のチームにいて日本国籍を取得。ラモスさんはW杯には行けなかったが、その活躍が日本のサッカー人気向上に寄与した。

 ファジーカスはW杯予選で4連敗中の日本代表を立て直し、突破に導いた。「私を救世主だという人がいるが、お世辞だと思う」と謙虚だが、それだけでは終わってほしくない。まだまだ日本のバスケット人気は根づいたとは言えない。世界を渡り歩いて磨いた技で、さらに盛り上げてほしい。(河野正樹)