ガンバ大阪が横浜F・マリノスに1-3で敗れ、これで6戦勝利なし。

 順位は14位だが、自動降格の17位松本との勝ち点差は4、降格危機に片足を突っ込んだ状態から抜け出せない。

 マリノス戦は、流れを変えるキッカケにしなければならないゲームだった。

 それまで5試合連続ドロー。神戸戦や磐田戦は勝ち点を失った感があるが、鹿島戦のように引き分けをもぎ取った試合もあった。負けていないが、勝ててもいない。遠藤保仁が「何とも言えない」というように微妙だ。

 連敗している状況であれば、システムや選手を思い切って入れ替えていくこともできるが、負けていないのでチームとして何をどう修正していくかの難しさがある。

 これまで宮本恒靖監督はベースを変えずにやってきた中で、マリノス戦に勝てばやってきたやり方に自信が持てる。勝ち点3を得るために相手を入念に分析し、戦術的な練習をこなし、周到な準備をして満員の三ツ沢に乗り込んできた。

前半は窮屈だったが、後半に復活。

 マリノスにボールを保持されるのは想定内。ボランチとサイドバックがキーになるチームなのでそこへプレッシャーをかけつつ、ショートカウンターを狙う。だが、相手の圧力に両ワイドを下げられて5バックになり、押し込まれた。

 練習でやってきたことができない状態では、次に打つ手がなくなってしまう。選手は監督から指示されたことを「やろう、やろう」と思い過ぎるあまり、窮屈にプレーしている。遠藤は、「勝ち点3を獲りたいので、先に失点したくない感じになっている」と話したが、「取られたくない」というネガティブな思考では選手の良さは出にくい。

 結局前半は何もできず、1失点で収まったことが幸運に見えるほど低調な出来だった。

 しかし後半13分、遠藤とパトリックを投入し、4バックになってから流れが変わる。

 0-2で負けている状況で、点を取りにいく必要がある。高い位置でプレッシングをかけてボールを奪い、リズムを徐々に手繰り寄せる。

功を奏した4バックにも遠藤は慎重。

 とりわけ良さが光ったのは井手口陽介だ。もともとポジションを外してボールを獲りにいけるタイプ。アグレッシブに戦える環境に置けば彼の良さが輝く。

 そして、中盤でボールの出し入れをしてゲームをコントロールしていたのが遠藤だ。テンポの良いリズムを生み、流れを作った。いまだに、こうした変化は他の選手には作れない。

 井手口も「ヤットさんの存在が大きいのは否めない」とあらためてその存在感を認めている。遠藤を軸に展開した攻撃で1点を返したものの同点にはいたらず、逆にマリノスに決定的な3点目を奪われて試合は終わった。

 流れが良くなった4バックは、今後ガンバらしいサッカーを取り戻す上でポイントになるのではないか。一見するとそう思いがちだが、遠藤の見方は慎重だ。

「点を取るためにリスクを負っての4バックなので、今日はハマったけど、スタートからだったらまた変わる。これが最善のサッカーとは思わない」と冷静に語った。

チームに明確な方針を示したい。

 では、勝てない現状では何をすべきか。

「チームが攻撃的にいくのか、守備的にいくのか、明確にすること。周囲の選手に対してサポートすること」

 遠藤が語ったのは当たり前のことだが、それが今のガンバはできていない。

 宮本監督は相手チームによって戦術を変え、“受ける”戦いをしている。どんな相手に対しても自分たちのサッカーを貫くだけの強さを、まだガンバは持ち得ていないという判断があるのだろう。

 しかし対戦相手でやり方を変えるとしても、どう戦うのかが中途半端にも映る。また、補強した宇佐美貴史、パトリックの動きがまだ周囲と噛み合っていない。「前にいた時とは違うし、そんなに簡単にはいかない。僕らがサポートしていかないといけない」と遠藤が語るが、もう9月なのにチームの完成度はまだ道半ばという状態だ。

管理と個性という永遠の課題。

 宮本監督のスタイルは、練習で個々の仕事を徹底させ、試合で完遂させることが勝利に繋がるというロジックだ。それ自体が間違いとは言えないが、完璧を求めて言い過ぎると選手は硬くなる。

「ミスができない」と考えれば安パイなプレーが増え、アグレッシブさを失ってしまう。しかも結果が出ていないので、選手はこのままでいいのか不安になっている。

 ならば一度、選手を“放牧”してはどうだろうか。

 ガンバの選手は、個の能力が高く、自由な発想でプレーするタイプが多い。そのため、伸び伸びやらせた方が個々の特徴を出しやすく、それがパワーになっていく。西野朗時代はまさにそうだった。

 ただ宮本監督は現役時代、その西野監督のやり方に異議を唱えたことがあるので、ある程度、自分が管理する中でという考えなのだろう。

宮本監督は愚痴も文句も吐き出さない。

 参考になるチームがある。

 東京ヴェルディは、永井秀樹監督がシーズン途中で就任したが、選手が伸び伸びプレーして、とてもいいムードだ。ヴェルディユース上がりの若い選手を登用し、彼らが自由にプレーした方がチームとして機能すると理解しているからだ。

 チームにいる選手の特性とそれを活かすためにどうすればいいのか、チーム全体が見えているからこその判断だろう。

 マリノス戦後、宮本監督は終始険しい表情で、言葉も少なかった。

 思い詰めた表情には愚痴も文句も吐き出さない覚悟が見て取れたが、一方で余裕のなさが気にかかる。選手時代から責任感が強く、基本的になんでも自分でやってしまうし、できてしまう。それだけにすべてを自分で抱えてしまいがちだ。

 そうして選手時代、日本代表のキャプテンとしてドイツW杯で苦しんだ。監督になっても、そこは変わっていないようだ。

選手を乗せるのも監督の仕事。

 宮本監督は一途ゆえ、こうと決めたらなかなか翻意しないが、戦い方や選手起用を含めて何も変わらなければこの豪華メンバーで降格争いをせざるをえない状況になる。選手に何かを求めるには、監督自身の変化も見せないと難しい。このままでは逆にいろんなものを失いかねない。

「おまえら、思い切りやってこい。責任は全部、俺が取る」

 難しいことを言わず、そういう声を明るく選手にかけられる監督になれるかどうか。選手をうまく乗せて、気持よくプレーさせるのも監督の務めだ。

 鳥栖戦までの2週間、宮本監督はチームより先に自らに変化を生じさせることができるだろうか――。

(「話が終わったらボールを蹴ろう」佐藤俊 = 文)