8月28日から米国ニューヨーク州レイクプラシッドで開催されたフィギュアスケート・ジュニアGP大会第2戦。1980年冬季オリンピックが開催地されたこの町で、15歳の佐藤駿が男子タイトルを射止めた。

 高校に上がったばかりの佐藤は初出場だったこのジュニアGP大会で、当初どのような目標をたてて挑んだのか。そう聞くと、声は小さいながらもはっきりとこう答えた。

「優勝したいと思っていました。先週、(鍵山)優真くんがフランスで優勝したのでとても刺激を受けて、自分もこの大会で頑張って優勝出来たらな、と思っていました」

 1週間前にフランスで開催されたジュニアGP開幕戦では、16歳の鍵山優真が優勝を果たした。

 ここでの佐藤の優勝により、今年のジュニアGP大会では、2戦連続して日本が男子タイトルを獲得したことになる。

強敵ゴゴレフを振り切りトップに立つ。

 SP『キャラバンの到着』では、3アクセル、3ルッツ+3トウループ、そして3ループを完璧にきめた。スケーティングに伸びがあり、体が良く動いているように見えた。

 スピン3つのうち2つでレベル4を獲得した。

 この大会の優勝候補だった2018年ジュニアGPファイナルチャンピオン、カナダのスティーヴン・ゴゴレフを0.34の僅差で上回り、79.19でトップに立った。

「緊張はそれほどでもなかったです。でも6分間ウォームアップが終わってから、少しだけ緊張しました」

 そう感想を述べた佐藤だが、もともと本番でもひどく上がる性質ではないのだという。

フリーでは3度の4回転に挑戦。

 翌日のフリーでは3度、4回転に挑戦した。

 冒頭の4サルコウは着氷でステップアウトしたが、次の4トウループは2回ともクリーンに降りた(4+3トウループは4トウループをきれいに降りて、2つ目の3トウループの着氷で手をついた)。

 もともと4回転の練習はサルコウからはじめていたが、トウループに切り替えてみたら調子が良く、まだ中学生だった昨年あっさり試合で成功させた。だが4サルコウはまだ試合ではきれいにきめていない。

「練習では3、4回跳んだうちの2、3回は決めるんですが、本番ではなかなか……」とちょっと苦笑した。

 後半では3ルッツの転倒などミスもいくつかあったものの、フリー137.93、総合217.12でSPに続き、フリーでも国際大会のパーソナルベストスコアを更新。2位のゴゴレフに13ポイント以上の点差をつけて優勝をきめた。

二世スケーターの活躍が目立つ。

 SPでぴったり佐藤の後ろについていたスティーヴン・ゴゴレフは、フリーでは冒頭で2度転倒があり、フリー5位、それでも総合2位に残った。ロシアのグレブ・ルットフリンがフリーで4サルコウを成功させて2位になり、SP5位から総合3位に上がった。

 4位には、アメリカのイリヤ・マリニンが入った。米国代表だが、両親はウズベキスタン出身で元四大陸チャンピオンのタチアナ・マリニナとウズベキスタンチャンピオンのローマン・スコルニアコフである。

 余談になるが、この大会のアイスダンスで2位に入ったロシアのデイビス&スモルキンのディアナ・デイビスはエテリ・トゥトベリーゼコーチの娘であり、フランス大会で優勝した鍵山優真の父親は、元全日本チャンピオンの鍵山正和だ。このところ二世スケーターの活躍が目立っている。

憧れの選手は羽生結弦。

 ジュニアGP大会デビューで優勝して好調なスタートをきった佐藤だが、将来シニアで戦っていくにはまだまだ足りないものがあるという自覚はある。

「4回転だけでなく、スピンなどももっと上達しないといけない。それと、体力づくりをしていかないといけないと思っています」

 お手本にして憧れている選手は、羽生結弦だという。同じ仙台出身ということで、彼自身、若い頃の羽生とよく比べられることもある。

「(羽生選手は)スピンやステップなど、すべてがうまい。また常に安定しているところも、すごいなと思います」 

 今季のフリーはニーノ・ロータの『ロミオとジュリエット』で、羽生結弦がソチオリンピックで滑った音楽でもある。

「この『ロミオとジュリエット』は、とても難しいプログラム。もっと滑りこんで、羽生選手のように動きに感情を込められるようになっていきたい」と目を輝かせた。

次のチャレンジはザグレブ大会。

 仙台で東日本大震災を経験したのは、小学校1年生のころだった。幼かったとはいえ、被災してスケートができなくなったときのつらさはよく覚えているという。

「あのときの(練習ができずにつらかったという)気持ちを忘れないようにして、頑張っていこうと思っています」

 現在は埼玉で日下匡力(くさかただお)コーチに指導を受けている。はじまったばかりの今シーズンだが、目標はジュニアGPファイナルに到達すること。そしてジュニア世界選手権で、表彰台に上がることだ。

 ファイナル進出を決める次のジュニアGP大会はザグレブ大会である。

 スケートをやっていてもっとも楽しいのは、ジャンプをうまく降りた瞬間だという佐藤。「気持ち良いな、って思うんです」とシャイな笑顔を見せる。ザグレブでもまた、気持ちの良い滑りを存分に見せて欲しい。

(「フィギュアスケート、氷上の華」田村明子 = 文)