通算成績は58勝50分77敗。トップリーグでは52勝46分66敗。コミュニティーシールドを含めた国内のカップ戦でも6勝4分11敗。

 トッテナムはアーセナルに分が悪かった。

 だが、マウリシオ・ポチェッティーノ監督が着任した2014-15シーズン以降は3勝5分3敗と盛り返している。したがって近ごろのトッテナムは、アーセナルに対する苦手意識を完全に払拭した、といって差し支えない。

 さて、ローカルダービーは洋の東西を問わず必要以上に熱くなる。今回のノースロンドン・ダービーも、どこかでポール・ガスコイン(トッテナムOB)とパトリック・ビエラ(アーセナルOB)が対面すれば、短気で強気の彼らのことだ、ガチで殴り合いを始めるだろう。永遠のライバル意識がそこにある。

 もちろん、ピッチ上の大乱闘はご遠慮願いたいが、心と心のぶつかり合いはフットボールファンの琴線を刺激する。記録よりも記憶に残る一戦を期待せずにいられない。

両チームともに前節は敗戦。

 トッテナムMFムサ・シッソコも心を躍らせていた。

「間違いなく難しい試合になるけれど、サポーターもスタッフも選手も、みんなが待ち望むエキサイティングな一戦だ。俺たちはもう準備ができているよ」

 ただ、両チームとも前節の出来は芳しくなかった。

 トッテナムはニューカッスルを攻めあぐみ、ホームにもかかわらず0−1の敗北。リバプールとのアウェーゲームに臨んだアーセナルは、ダビド・ルイスの軽率なプレーで守備的なプランが崩壊。1−3で屈している。

 ノースロンドン・ダービーを前に、気持ちが少しだけ挫けたことは否定できないだろう。

自滅するチームに苛立つ指揮官。

 こうした状況に陥った場合、どのようにすればリカバリーできるか。

 症状としてはトッテナムの方が重い。

 チームの力量を踏まえた場合、ニューカッスル戦は3ポイントを取ってしかるべきだった。ところが先行された途端に焦り、イージーミスが目立つ。デル・アリとタンギ・ヌドンベレを負傷で欠き、クリスティアン・エリクセンとジョバニ・ロセルソを先発から外したために創造性を欠き、攻めが中央に偏り過ぎた。ポゼッション80%で枠内シュート3本というデータが、トッテナムの拙攻を如実に物語っている。

 要するにニューカッスルが善戦健闘したわけではなく、トッテナムが自滅したにすぎない。着任後、公式戦500試合目を勝利で飾れると信じていたはずのマウリシオ・ポチェッティーノ監督も、試合後にフラストレーションを隠さなかった。

「すべてがうまくいかなかった。正当化できないパフォーマンスだ」

トッテナムDFに効きそうなニコラ・ぺぺ。

 一方、アーセナルは1−3で敗れたとはいえ、相手がヨーロッパチャンピオンのリバプールなのだから、ある程度はあきらめもつく。ウナイ・エメリ監督はよく研究し、裏だけはとらせないような深めのブロックで応戦した。D・ルイスがきちんと対応さえしていれば、ひょっとすると1ポイントぐらいは持ち帰れたかもしれない。

 だが、単発ではあったものの、ニコラ・ペペのカウンターには、リバプールが世界に誇るセンターバックのビルヒル・ファンダイクでさえ手を焼いていた。ペペのスピードに対応するため適度な間を開け、鋭い読み・予測で瞬く間に対応するあたりはさすがだったが、トッテナムにこの男はいない。

 トビー・アルデルバイレルトとヤン・ベルトンゲンはスピードが低下してきた。ダビンソン・サンチェスは凄まじいばかりの運動能力を有しているが、状況判断が芳しくない。ペペのスピードは、リバプール戦以上に奏功するのではないだろうか。

 しかもトッテナムは最終ラインの設定が常に高い。D・ルイスのロングフィードがペペに渡る。トッテナムGKユーゴ・ロリスと1対1……。十分に考えられるシーンだ。

ボールロストに注意したいアーセナル。

 今回のノースロンドン・ダービーはアーセナルがホームだ。策士エメリがリバプール戦同様に守備的なプランを用いる可能性も捨てられないものの、エミレーツに詰めかける数多くのサポーターは自陣に引いていると絶望する。

 時が流れ、監督がアーセン・ベンゲルからエメリに代わっても、このクラブの持ち味は「ポゼッションに基づくアタッキング・フットボール」だ。

 しかし、球離れには細心の注意を払う必要がある。リバプール戦ではD・ルイスがパスの受け手を探し、マテオ・ゲンドゥージが囲まれるシーンが何度もあった。前半はファイナルサードで8度もボールロストするお粗末さだった。

 トッテナムはハイプレスが浸透し、前線と中盤が連動しながら襲いかかってくる。高い位置でボール奪取してショートカウンター。ハリー・ケインやソン・フンミンのハイ・インテンシティーを、アーセナルがしのげるとは思えない。

 ポゼッションに基づくアタッキング・フットボールが持ち味だとしても、マンチェスター・シティほどつなげられるわけではない。ボールをつないでリスクを冒すより、ときにはロングボールで局面を打開した方が得策だ。長く強く、正確なボールを蹴れるD・ルイスがいるのだから、状況によってはこのアイテムを存分に活かし、トッテナムを前後に揺さぶるプランも悪くない。

シーズンの行方を占うダービーマッチ。

 186回目を迎えるノースロンドン・ダービーは、単なる1試合ではない。勝者は勢いづき、敗者は大きなダメージに打ちひしがれる。アーセナルに12シーズン在籍したポール・マーソン(現スカイスポーツ解説者)は、「すでにトッテナムはタイトル争いから脱落した」と、場違いなマインドゲームを仕掛けているが、空気を読めない関係者のコメントはスルーしておこう。

 チャンピオンズリーグ出場権に少なからぬ影響を及ぼす一戦は、日本時間の9月2日深夜0時30分にキックオフされる。
 

(「欧州サッカーPRESS」粕谷秀樹 = 文)