マンチェスター・シティはウェストハムを5-0で叩きのめした。リバプールに1-4の敗北を喫したとはいえ、チャンピオンシップ(2部)から昇格したノリッチは縦に速く、勝負を捨てない好チームだった。そして、マンチェスター・ユナイテッドはハイプレスとロングカウンターによりチェルシーに4-0の快勝を収めている。さぁ、プレミアリーグの新シーズンがいよいよ開幕した。

 しかし、喜んでばかりもいられない。去就が微妙で、パフォーマンスしだいでは早々と、遅くとも来年1月には戦力外を通告される選手たちがいる。

 アーセナルのウナイ・エメリ監督は、「イングランドの移籍市場は8日で閉じられたが、他国はまだ開いている。8月下旬から9月初旬にかけて数人の選手が出ていくだろう」と語っていた。最有力候補は責任転嫁を繰り返すシュコドゥラン・ムスタフィだが、メスト・エジルの立場も非常に危うい。攻→守の切り替えが鈍く、インテンシティにも不安がある。前線からのハードワークに重きを置くエメリのゲームプランには適していない。

「ジョー・ウィロックには数多くのチャンスが」

 この夏、アーセナルはレアル・マドリーからダニ・セバジョスを獲得し、エメリ監督は「ジョー・ウィロックには数多くのチャンスが訪れる」と語った。エジルとアーセナルの関係が終焉に近づきつつあることの証明である。

 2012年12月19日、アーセナルのアーセン・ベンゲル監督(当時)は、有望な若手の契約更新に相好を崩し、明るい未来に夢を馳せていた。名伯楽の前に並んでいたのは、アーロン・ラムジー、カール・ジェンキンソン、アレックス・オクスレイド・チェンバレン、キーラン・ギブス、ジャック・ウィルシャー。いずれも英国系で、彼らを軸とする数年後のアーセナルはヨーロッパを制するに違いない──という、それはそれは大きな期待に満ちあふれていた。

最も期待されていたウィルシャー。

 しかし、ラムジーはユベントスに、ジェンキンソンは2部のノッティンガム・フォレストに移籍した。オクスレイド・チェンバレンもリバプールに去った。

 5人の中で最も期待されていたのがウィルシャーである。

 チャンピオンズリーグで対戦したバルセロナのシャビ(現アルサッド監督)が、アンドレス・イニエスタ(現ヴィッセル神戸)が、口を揃えて「稀に見る才能」と絶賛し、名将ジョゼップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ監督)をして、「バルセロナでも通用する」と言わしめるほどのレベルだった。

長期欠場を繰り返す理由。

 ただ、無類の負けん気がウィルシャーの行く手を阻んだ。無理な体勢からタックルを仕掛けたり、高すぎるインテンシティで立ち向かったり、その結果が長期欠場の繰り返しだ。アーセナルで最多の出場数は2010-11シーズンの35試合。その後7シーズンの平均出場数は12.5試合に過ぎず、ローン移籍したボーンマスのデータ(2016-17シーズン)を含めても、16.4試合と戦力とは言い難い。

 ウェストハムに移籍した昨シーズンも、度重なるケガで8試合しか出場できなかった。

 プレシーズンは好調で、マヌエル・ペジェグリーニ監督も「計算できる選手の1人」と語ってはいるが、ウィルシャーはいつ壊れるかわからない“ガラスの天才”だ。またしても故障者リストに名を連ねるようだと、一気に構想外にもなりかねない。同タイプのシャビやイニエスタがなぜ壊れなかったのか。彼らのもとを訪れ、アドバイスに耳を傾けるべきだ。まだ27歳。いまからでも遅くはない。

マンチェスター・シティのメンディはケガに泣いた。

 マンチェスター・シティのバンジャマン・メンディも、昨シーズンはケガに泣いた。太ももやひざの故障が度重なり、10試合の出場に終わった。いや、昨シーズンだけではなく、2017年の夏に入団した後、ピッチに立ったのはわずか23試合だ。ジョゼップ・グアルディオラ監督にすれば、シャレにならない計算外だ。昨シーズンまではファビアン・デルフ(現エバートン)とオレクサンドル・ジンチェンコでやりくりし、今シーズンはPSVからアンヘリーリョを買い戻したものの、メンディほどのダイナミズムは望むべくもない。

 本稿執筆時点で、メンディは9月中にも復帰すると伝えられている。コンディションは整いつつあるようだ。しかし、シティ入団後の経緯を踏まえると、監督、コーチは慎重にならざるをえない。左サイドのキーパーソンとして異彩を放った瞬間に、長期欠場を余儀なくされている。こうしたタイプは計算ができない。実際、チーム内の序列はジンチェンコ、アンヘリーリョに次ぐ3番手だ。ポテンシャルではメンディがはるかに上まわっているというのに……。

センターバックの序列は?

 3シーズン続けて負傷に泣くようだと、シティとの関係は冷え込むだろう。グアルディオラ監督もこう言った。

「二度あることは三度ある、というじゃないか。メンディは負傷に悩み、同じような問題が再発するリスクが付きまとう。最終的にはケガをしない選手、したとしてもすぐに立ち直る選手がポジションをつかむものだよ」

 シティでは、ニコラス・オタメンディの立場もよろしくない。バンサン・コンパニがアンデルレヒトに移籍し、センターバックの序列はアイメリック・ラポルテ、ジョン・ストーンズに次ぐ3番手に上がったが、グアルディオラ監督には評価されていない。マイナスポイントは雑なフィードだ。だからこそ、この夏シティはボーンマスのネイサン・アケ、ユベントスのレオナルド・ボヌッチに興味を示し、高すぎる移籍金に難色を示したものの、ハリー・マグワイア(レスター→ユナイテッド)のエージェントにも接触した。この動きがすべて、といって差し支えない。

退団が最善策のようにみえる。

 グアルディオラ監督は、センターバックにも高度なビルドアップ能力を要求する。対人プレーが強みのオタメンディはメニューにない。双方の事情を踏まえると、退団が最善策のようにみえる。

 ユナイテッドのフレッジは、構想外でもなければ不満分子でもない。オーレ・グンナー・スールシャール監督の承諾を得て、プレシーズン中に母国ブラジルで挙式。早々とチームに再合流したものの、他の選手に比べるとフィットネス不足は明らかで、開幕戦でベンチから外れていたが大騒ぎする必要はない。現在はマンチェスターで調整に励んでいる。

約76億円の移籍金だったが……。

 とはいえ、中盤のレギュラー候補としてフレッジの名前がなぜか聞こえてこない。ポール・ポグバの去就が微妙で、ネマニャ・マティッチの衰えが隠せなくなっているにもかかわらず、だ。調整で後れをとったダメージはやはり大きい。アカデミー出身の大器スコット・マクトミネイ、ハードワーカーとして新境地を開拓しつつあるアンドレアス・ペレイラに小さからぬ差をつけられてしまった。

 スールシャール監督も、「常にコンディションを整え、どのような局面でも闘える選手を優先する」と語った。5200万ポンド(約76億円)もの移籍からわずか1年、フレッジの2シーズン目は難しい形で幕を開けている。

 エジル、メンディ、オタメンディ、フレッジ……彼らには何回かのチャンスが与えられるだろう。ただ、調整の遅れは、一度落とした信用は、そう簡単に取り戻せない。悔しさを押し殺して現状に身を委ねるか、新天地で心機一転を図るか。難しい決断のときは、いずれ必ずやって来る。

(「欧州サッカーPRESS」粕谷秀樹 = 文)