新春の箱根路とは打って変わって、うだるような暑さが続く中でも、学生ランナーたちは歩みを止めない。夏合宿特集第1弾は、名門復活を目指す中大の長距離ブロック主将・田母神一喜(たもがみ・かずよし、4年)をインタビュー。1500メートルで20年東京五輪を目指したスピードランナーが、今夏から“箱根仕様”に。その秘めた思いに迫った。6年ぶりの王座奪還を狙う東洋大、過去最高の戦力をそろえた国学院大からも目が離せない。

 そこに迷いはなかった。底上げが進む中距離界で日本トップクラスの実力を持つ田母神。6月の日本選手権をもって長距離へシフトし、9月の日本学生対校選手権をはじめとした今年度内の中距離種目を“封印”する決断を下した。その要因は、全日本大学駅伝予選での敗退にあった。

 「駅伝主将の舟津(彰馬、4年)と長距離ブロック主将の自分は日本選手権を控えており、出場を見送ったんです。それでも通過できるだけの力はあったと感じていたし、自信を持って送り出しましたが…。副主将の池田(勘汰、3年)に重荷を背負わせすぎて、実力を発揮しきれなかったんです」

 3組目に出場した池田は25位と失速。チームは17秒差で伊勢路切符を逃した。

 「行き場のない悔しさというか…。自分の言葉も、チームのみんなからしたら『中距離の選手だし』と思われていたのかもしれない。学生生活をこんな形で終わらせていいのだろうかと悩みました」

 指導を受けていた前800メートル日本記録保持者の横田真人氏(31)から「本当に今やりたいことを考えてみろ」とアドバイスを受けて決心がついた。欧州での室内大会転戦などで東京五輪出場のためのランキングポイントを獲得する予定だったが、ハーフマラソンを走れる体作りに着手。中距離ランナーとして入学した田母神にとって、本格的な走り込みは初めて。もちろん、3大駅伝の出場経験もない。

 「東京五輪より、箱根駅伝を選びました。地元開催の五輪ではありますが、その価値は次も変わらないと思います。それなら4年生として、今の自分にしかできないことをしよう」

 そうして始まった長距離のトレーニングも、今は道半ば。朝練習のなかった中距離時代と比べて圧倒的に走行距離が増え、体の疲労も抜けにくいという。夏合宿はBチームで足作りをして、秋に1万メートルに出場予定。福島・学法石川高時代の同期である相沢晃(東洋大4年)や阿部弘輝(明大4年)らが学生長距離界を引っ張る中でも、焦らず取り組むつもりだ。

 「箱根予選会はチームとして1位通過、本戦はシード権獲得が目標。自分はまだ練習についていくのがやっとの状態です。苦しいですが、自分のやるべきことをやってチームに貢献できる走りがしたい。スピードランナーの多い6区や、単独走も得意なので7区などの復路をイメージしています」

 3年時は趣味のカメラを持って仲間たちの雄姿を収めた箱根路も、1、2年時には先輩である堀尾謙介(22)=現トヨタ自動車=の給水担当として駆け抜けた。次は自分が伝統のCのユニホームで-。スピードスターの挑戦は始まったばかりだ。(太田 涼)

 ◆田母神 一喜(たもがみ・かずよし)1998年2月12日、福島・郡山市生まれ。21歳。学法石川高で本格的に陸上を始め、3年時に全国高校総体1500メートル優勝、世界ユース選手権800メートル7位。全国高校駅伝は2年時5区4位、3年時2区16位。2016年に中大法学部に進み、18年日本選手権1500メートル3位。自己記録は800メートル1分48秒56(中大記録)、1500メートル3分40秒66。家族は両親と姉2人。