令和初の“高校バスケ・夏の王者”は、強かった。

 昨年末のウインターカップで、圧倒的な力の差を見せつけて優勝した福岡第一(福岡)。ガード2人とセンター1人、チームの軸となるポジションに去年のスタメンが3人残った今年のインターハイは、ウインターカップ閉幕直後から「優勝最有力候補」と目されていたと言っても過言ではない。

 そしてその見立てのとおり、福岡第一は平均得点95.6点、平均失点55.8点という文句のつけようのない内容で、トーナメントをぶっちぎった。

 それでもエースガードの河村勇輝は、「この優勝はあくまでもウインターカップのための通過点」と淡々と語り、河村とコンビを組む小川麻斗は「ディフェンスの甘さが目立った」と反省。このチームの死角が一体どこにあるのか……。ライバル指揮官たちのそんな嘆きが、今にも聞こえてきそうな気がする。

アフリカ人留学生がいると強い。

 そんな福岡第一を筆頭に、男子高校バスケ界の上位を多く占めているのが、アフリカ人留学生を擁するチームだ。

 バスケットボールが3メートル5センチの高さにあるゴールにボールを入れる競技である以上、彼らが持つ2メートル超の身長、それと同等かそれ以上に長い腕、驚異的な跳躍力は、明確かつ大きな優位性を持つ。

 さらに、彼らはパワーと筋量にも優れており、ゴール下のコンタクトプレーにも強い。今大会でベスト16に進出したチームでは8チーム、ベスト8で6チーム、ベスト4で全チームがいわゆる“留学生チーム”だった。

 県立広島皆実(広島)と県立能代工業(秋田)は、日本人のみのメンバー構成でベスト8まで勝ち上がり、広島皆実は報徳学園(兵庫)、能代工業は開志国際(新潟)と、ともに留学生チームの前に涙をのんだ。

広島皆実は長身の選手たちを起用。

 広島皆実は2年前のインターハイ、深渡瀬海(現・大東文化大2年)と三谷桂司朗(現・広島皆実高3年)という2人の190cmオーバーを起点に、藤井貴康コーチ就任以来初のベスト8に進出。3回戦で留学生チームを打ち破り、4回戦で福岡第一と接戦を演じたこの大会を受けて上位を目指すマインドが根付いたが、ベスト4の壁は厚かった。

 190cm前後の選手を同時起用し、1人が留学生を止め、1人がそのスキを突く。留学生チームとやり合う生命線をこのようにとらえている藤井コーチは、今年の大会でベスト4入りをかけて戦った報徳学園戦でも、191cmの三谷と187cmの大福谷をスタメンに起用した。

 オールラウンダーの三谷はアウトサイドにポジショニングし、大福谷をゴール下に飛び込ませて得点を奪うというスタイルを想定していた。

 しかし「県内にも留学生はいるけれど、全国ベスト4に入るような選手のプレーはまったく違っていた」と大福谷が委縮し、そのシュートを決められず。第1ピリオドから7-21と大差がつき、その後も修正できず61-96で敗れた。

“見えない壁”と公立校の予算。

 留学生の桁違いの高さとパワーに慣れ、苦手意識をなくすことは、それを打ち破ろうとする日本人チームにとって必要不可欠なことだ。

 エースの三谷も「レイアップに行くときに彼らがゴール下にいたら迷ってしまうし、アウトサイドシュートを打つときも『外したら彼らにリバウンドをとられて逆速攻される』と考えて、思い切ったシュートが打てない。難しいところです」と、留学生チームの“見えない壁”を語った。

 新チームの始動から今大会までの約7カ月間で、広島皆実が留学生チームと戦ったのは6回ほど。

「日常的に彼らと戦わないことには、心理的な要素で判断を誤ったり、シュートを打ちきれなかったりすることが続いてしまいます」

 藤井コーチは“慣れ”の大切さを痛感しているが、限られた予算で活動する公立高校として、どのようにしてその経験を培っていくのか。指揮官の手腕に期待がかかる。

留学生チームに勝った能代工。

 広島皆実が4回戦で初めて留学生チームと対戦したのに対し、能代工業は3回戦で留学生チームの高知中央(高知)に勝ってベスト8に進出している。

全国制覇を数えること実に58回。田臥勇太(宇都宮ブレックス)など多くの名選手を輩出してきた日本屈指の名門は、アフリカ人留学生が来日した2000年代半ばから徐々に全国上位で勝てなくなり、2016年には47年ぶりに全国大会を逃す憂き目にあった。

 そうした状況を打開するため、2018年度からはOBで、トヨタ自動車(現アルバルク東京)、日立(現サンロッカーズ渋谷)などで采配をふるった小野秀二がコーチに就任。かつてと比べれば集まる選手のレベルは超一流とは言えないが、それでも昨年は3大会連続でベスト16以上に進出するなど、さっそく力をつけている。

 去年よりももう1つ高いところへ行こう。

 この目標を達成し、さらに上位進出を目指して昨年のインターハイ王者の開志国際に挑んだが、58-83と大敗した。主将の須藤陸は「ベスト8に進めたのは自信になったけれど、留学生のフィジカルの強さでチーム全体が疲弊した。たとえ留学生チームと連戦しても、強度の高いプレーができないと今日のような試合になってしまうと実感しました」と話した。

チーム伝統の「平面バスケ」で戦う。

 小野コーチが目指すスタイルは、激しい運動量とスピードで相手を惑わす能代工業伝統の「平面バスケ」がべース。さらに、5人全員がよく動いてノーマークを作り出し、留学生の影響を受けにくい3ポイントシュートで得点を奪う要素も付け加えた。

 今でこそ全国各地から選手が集う環境にあるが、能代工業はもともと「田舎町の小さく普通の選手が、都会の大きく非凡な選手たちにいかに勝つか」という発想から強くなったチームである。

 その黎明期の“匂い”を知る小野コーチだからこそ、高さと能力に優れた留学生が台頭する現在の状況に、当時を重ねる部分があるのかもしれない。

「我々の頃ってずるかったんです」

「今の選手たちは成功体験が少ないんですが、そういうときこそ図太さが必要だと思うんです。我々の頃の能代工ってけっこうずるかったんですよ。死んだふりをしてパッと手を出すような(笑)。そういうずるさというか、勝つために何が何でもやってやるというプレーが出てくると、もっと楽しくなると思うんですけどね」

 2018年5月に行ったインタビューで、小野コーチは楽しそうに話していた。

 コーチ就任から2年経ち、選手たちも戦い方やマインドをよく理解できるようになってきた。「勝ち進めば当然試合数は増えていきます。その中でも精度の高いバスケットを徹底することと、誰が出てもプレーの質が落ちない層の厚さが必要です」と、名将はウインターカップを見据えている。

「縦の力」の差を崩すために。

 今回はベスト8まで勝ち上がれなかったものの、ウインターカップでの上位進出が期待できる“日本人チーム”は他にもある。

 言わずと知れた八村塁の出身校で、現在も将来性豊かな選手を抱える明成(宮城)は、インタ―ハイ優勝1回に対しウインターカップ優勝5回と、冬にめっぽう強い。今大会は不出場だったが、U16、U18の主力が多く所属する福岡大学附属大濠(福岡)や洛南(京都)も、ウインターカップでは出場する算段が高い。

 2017年のインターハイで優勝し、昨年は「日本で一番、福岡第一と競ったチーム」と注目された福岡大大濠は、片峯聡太コーチ自身が同校の選手時代に留学生たちと対戦している。

「当時も私がコーチに就任したころも『とにかく走ればなんとかなる』という考え方でしたが、今は緩急をつけた戦い方で、我々が常にゲームのイニシアチブを握ることを意識しています」

 こう明かしてくれた。

 冒頭でも触れたように、ゴールが頭の上にある以上、留学生たちが持つ「縦の力」は圧倒的に有利で、日本人チームにはどうしたって分が悪い。高く強固な牙城をかいくぐり、よじ登り、頂点に近い場所に進むために生み出すプロセスを、今後も興味深く見つめていきたい。

(「バスケットボールPRESS」青木美帆 = 文)