東京・八王子で11日(日)に開幕するIFSCクライミング世界選手権。実施4種目の見どころをそれぞれ紹介していく連載第2弾では、クライミングの花形種目とも言えるリードを解説する。競技はボルダリング決勝の翌日、14日(水)の予選からスタートし、15日(木)に準決勝と決勝を行う。

「どの高さまで登ることができたか」。問われる持久力



 リードは高さ12m以上の壁で最大60手ほどのルートを登り、成績は「どの高さまで登ることができたか」(高度)で決まる。問われる一番の能力は持久力。いかに余力を残し省エネで高度を上げていくか、疲れが溜まった状況で一手でも多く出せるかが重要になってくる。ただし昨今のルートではダイナミックな動きや強度の高い一手が登場することも多いため、そこを突破するボルダリング能力も必要とされる。

 選手が練習で積み上げてきたことがそのまま成績に直結しやすく、大逆転や大番狂わせは他2種目と比べると少ない。ただし各ルート1トライ(※)しかできないため、思わぬ読み違いやスリップなどの凡ミスは要注意だ。

※基本的に予選は2ルート、準決勝と決勝は1ルートで行われる。

女王ガンブレットの牙城を切り崩す、アジアの新星たち

 女子は、昨シーズンはW杯年間優勝のヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)と世界選手権優勝のジェシカ・ピルツ(オーストリア)の2強であったが、今シーズンはアジアの新星たちが猛烈に台頭している。

 ガンブレットの牙城を切り崩しW杯目下2連勝中のソ・チェヒョン(韓国)と、ツァン・ユートン(中国)、森秋彩、世界選手権は欠場だが谷井菜月。この2003年生まれの4人は今シーズン初のW杯参戦にして、全員が表彰台を経験するなど勢いが止まらない。まさに今女子リードは群雄割拠の時代に入りつつある。

左から谷井菜月(今大会は欠場)、ソ・チェヒョン、ツァン・ユートン、6人目が森秋彩。W杯第2戦の決勝では2003年生まれの新世代が半分を占め、ファイナリスト最年長は22歳のジェシカ・ピルツ(左から4人目)だった。

男子は大会ごとにニュースターが誕生

 男子も昨シーズンまではヤコブ・シューベルト(オーストリア)、ステファノ・ギソルフィ(イタリア)などリードのスペシャリストが一つ抜け出した存在であったが、今シーズンは両者ともにまだエンジンがかかり切っていない印象を受ける。そんな中、第3戦までが終了しているW杯の年間ランキングトップは安定感のあるアレクサンダー・メゴス(ドイツ)であり、優勝こそないものの2度表彰台に立っている。また初戦でサッシャ・レーマン(スイス)、第3戦では西田秀聖が共に初優勝。大会ごとにニュースターも誕生し、より争いは熾烈になりつつある。

W杯での年間ランキング暫定首位はアレクサンダー・メゴスだが、まだ未勝利。第1戦と第3戦はサッシャ・レーマンと西田秀聖がそれぞれ初優勝するなど、実力は拮抗してきている。

注目選手[女子]

 どの選手が上位に食い込むかはルートのタイプがカギとなるだろう。長い手数で一定の強度がジワジワと続くルートであれば、ソを中心とした若い世代に有利になることは間違いない。大きな山場がなければどこまでも登っていけるのではないかと思えるほど、彼女らの持久力は底なしだ。

 一方で明確に強度の高い核心(※)があるようなルートになれば、そのような動きに対応できる野口啓代や若い世代の中でもボルダリング能力の高い森にチャンスがあると言えるだろう。ただどのようなタイプでも女王ガンブレットは高いレベルで対応してくるため、ボルダリング種目に引き続き最も注目すべき選手である。

※課題を攻略する上で最も難しく、肝となる箇所。

今年ボルダリングW杯で全戦優勝のヤンヤ・ガンブレットは、もともとリードがメイン。3年連続でW杯年間優勝中だ。

注目選手[男子]

 男子は難しい戦局になりそうだが、それでも前回大会の上位3名であるシューベルト、アダム・オンドラ(チェコ)、メゴスが優勝を争う展開か。この3選手はクライミングの基礎能力がとても高いため、世界選手権のような格式高い大会のいわゆる王道ルートで輝く姿が目に浮かぶ。特にオンドラは今シーズンW杯第2戦にのみ出場し他を圧倒するパフォーマンスで優勝しているため、コンディションも万全で死角が見当たらない。

W杯第2戦の表彰台で並び立った(左から)メゴス、アダム・オンドラ、ヤコブ・シューベルト。オンドラとシューベルトは2012年以降の世界選手権4大会で2回ずつ優勝を分け合っている。

 ただ男子もルートのタイプにボルダリング要素が強く出れば活躍する選手も大きく変わるため、より一層面白くなるだろう。そうなればボルダリングW杯年間王者の楢崎智亜や底力のある原田海などの日本人選手がリードのスペシャリスト達に競り勝つ展開になる可能性も大いにある。

原田海は前回大会で優勝したボルダリングが本職だが、持久力のトレーニングを増やしている今シーズンはリードも上り調子だ。


CREDITS

植田幹也 /

写真

IFSC/Eddie Fowke