東京・八王子で開催されるIFSCクライミング世界選手権がいよいよ今週末に迫ってきた。世界最高峰の戦いが日本初開催とあって否が応でも期待は高まるが、ここで実施される各種目の見どころを紹介していきたい。

 まずはボルダリング。11日間の大会で、1つ目に行われる種目だ。開幕日である11日(日)に女子予選、12日(月)に男子予選、そして13日(火)に男女の準決勝と決勝を行う。

様々な能力が求められるボルダリング

写真:窪田亮

 ボルダリングは、高さ4~5m程度の壁に設定された4~8手ほどのコース(課題)を登る。成績は「登った課題数」(完登数)、「中間まで到達した課題数」(ゾーン数)で決まり、それらが同じ場合は完登とゾーンの獲得に要したトライ数が少ない選手が上位となる。

 手数が短い分、1手1手の強度や複雑性が高い。パワー、バランス、瞬発力、柔軟性など様々な要素が問われ、他の選手の競技を見ることができないため登り方を見抜くことも重要だ。

 日本人が得意とする種目だが、どのようなタイプのコース設定になるかで順位が変わりやすいこともボルダリングの特徴。そのため、オリンピックフォーマットである3種目複合のコンバインドで上位に食い込めるかを左右する一番のカギとなる種目といっていい。

絶対的王者の君臨する女子

 女子は前回大会優勝者であるヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)が圧倒的な優勝候補。今シーズンはボルダリングワールドカップ(W杯)全戦で優勝という快挙を成し遂げた。そこをW杯年間ランキング2位の野口啓代と、3位のファニー・ジベール(フランス)、昨季年間優勝者である野中生萌の3人が追随するという構図だろう。しかしジベールは膝を、野中は肩を怪我していたため、気になるところではある。

ボルダリングW杯初の全戦優勝を果たしたヤンヤ・ガンブレット。

 この4人に日本の期待の若手である伊藤ふたばと森秋彩、そして復活の兆しを見せつつある16、17年の年間女王ショウナ・コクシー(イギリス)あたりまでが優勝争いに絡むか。

誰が勝ってもおかしくはない男子

 男子の戦況は混迷を極める。W杯年間ランキングでは上位から楢崎智亜、アダム・オンドラ(チェコ)、緒方良行、チョン・ジョンウォン(韓国)、藤井快と続くが、トップ層の20人あたりまで各選手の実力は拮抗している。日本勢もどの選手が上位にくるか蓋を開けてみるまでわからず、全員に表彰台と優勝のチャンスがあるだろう。前回大会では当時19歳の原田海が制している。

注目選手[女子]

 女子は、やはりガンブレットの登りから目が離せない。全身がバネのようにしなやかで、独特な身体の使い方も持ち味。コーディネーションと呼ばれる連続的にホールドを捉える動きの上手さが頭3つは抜けている。昨今の大会では決勝4課題のうちコーディネーション課題が1つは設定されることが多いことも彼女を有利にしている。同様の動きを得意とするのが野中で、2人のマッチアップに期待したい。

ガンブレットの対抗馬筆頭は野口啓代。ボルダリングW杯年間優勝4度を誇るが、これまで世界選手権は最高で2位。初の優勝を狙う。(写真:René Oberkirch)

 対抗馬筆頭が年間2位の野口。指先の強さとメンタルコントロールの上手さには一日の長があり、彼女のみが登れるというケースもよく見られる。地力が必要な課題設定になればガンブレットを凌ぐ活躍の期待もできる。

注目選手[男子]

 男子は混戦とは言ったものの楢崎智亜が優勝候補筆頭であることは間違いない。天性の運動神経系で登るタイプと思われがちだが、バランスや保持が必要な課題まで幅広く対応できる苦手の少ない選手。加えてコーディネーションに滅法強いという大きな武器も持つ。今シーズンW杯に4戦出場し優勝1回、準優勝3回と驚異的な安定感も特筆すべきだろう。

ダイナミックな動きに注目が集まりがちだが、楢崎智亜は今シーズン穴の少ない抜群の安定感で、自身2度目のW杯年間優勝を果たした。

 楢崎の最大のライバルは、やはりオンドラとなるか。岩場を含め、あらゆるジャンルで世界最高峰の記録を持つ名実ともに史上最強のクライマー。今季W杯初戦の決勝でジャミングという岩場でよく見られるようなテクニックが求められるタイプの課題が出た際は、彼以外の選手は全く対応できず、オンドラのみが登り切って軽々と優勝を決めた。クラシカルな課題設定ならばオンドラが群を抜いた強さを見せる可能性も高い。ボルダリングの公式大会では日本大会参戦は初めてなので、繊細な意識が必要と言わる日本の課題に対してどう対応してくるか楽しみである。

“史上最強のクライマー” アダム・オンドラ。今季W杯では最終戦まで楢崎と年間王者争いを演じた。


CREDITS

植田幹也 /

写真

IFSC/Eddie Fowke