新日本プロレスのG1クライマックスは8月3日、4日の大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)での2連戦が終わった。AとBの両ブロックともそれぞれ9戦中7試合を消化したが、優勝の行方は混とんとしてきた。

 ジョン・モクスリーが独走していたBブロックは、モクスリーが矢野通とジェイ・ホワイトのワナにはまって、まさかの2連敗。モクスリーの首位は以前変わらないが、それを1勝差で内藤哲也、ホワイト、石井智宏、後藤洋央紀の4人が追う展開になった。

 4日、鷹木信悟との「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」内での対決を制して優勝戦線にどうにか踏みとどまった内藤は言った。

「わずかでも可能性がある限り優勝を目指す」

 鷹木との戦いは2人にとって特別な意味がある試合だった。

「鷹木と初めて出会ってから19年、最後に向き合ったのは20歳くらいの時かな。だから、16〜17年前のことなんだけれども、今日、久々に向き合ってみて、アニマル浜口ジムで切磋琢磨していた時代がフラッシュバックしてきたね。すごく懐かしかった。

 ほとんどオレは鷹木に勝ったことなかったから、オレにとって彼は嫉妬の対象でしかなかった。こうしてプロのリングで戦い、そして彼に勝てたことで、ずっと今まで心に溜め込んでいたものが発散されたかな」

 内藤はプロレスラーを目指してアニマル浜口ジムに通っていた若き日々を思い浮かべていた。何度やったかわからないスパーリングで鷹木に勝てなかった悔しさも同時に思い出していた。

「オレは史上初の偉業を目指してる」

 しかし、ノスタルジーに浸っている場合ではないことを、内藤はよくわかっていた。

「このG1クライマックス、別に鷹木に勝ちたくて出たわけじゃないからね。リング上でも言った通り、オレは(IWGPインターコンチネンタル王座とIWGPヘビー級王座の2本のベルトを同時に巻く)史上初の偉業を目指してやっている訳だしね。そこにオレはたどり着いてみせますよ。

 まあ、状況は厳しいけどね。この鷹木からの勝利を無駄にしたくないし、するわけにもいかない。彼からの勝利がものすごく価値のあることだってオレは知っているから。これを無駄にしないためにも、あと2試合、全力で戦いますよ、そして優勝を目指します」

 内藤は他力本願という変わらない現状を踏まえたうえで「優勝」という言葉を口にした。

 では「想像することは楽しい」と、内藤が普段から言っている内藤流の想像を勝手に膨らませてみよう。

モクスリーの敗北にかかる内藤の未来。

 内藤が8月12日に日本武道館で行われるG1クライマックス優勝決定戦に進むためには、残りの2試合に勝つことが必須の条件だ。

 まずは8日に横浜でジェフ・コブ、11日の日本武道館でホワイトと当たる。

 そして、内藤に残るわずかな可能性を考えて最終の勝ち点を12とした場合、モスクリーには少なくとも1つは負けてもらわないといけない。

 モクスリーは8月8日の横浜で後藤と、11日の日本武道館でジュース・ロビンソンと当たる。この2人の対戦相手の「どちらかには勝ってほしい」と内藤はただ願うしかない。

 だが、それだけでは、不十分なのだ。

 もし、6勝3敗の勝ち点12でモクスリーに並んだところで、直接対決でモクスリーに負けている内藤は優勝戦に進めない。モクスリーの勝ち点が増えないことは好都合なのだが、モスクリーのさらなる連敗(4敗目)を期待するのは虫が良すぎるだろう。

 もちろん、モクスリーの勝ち点が伸びずに内藤がすんなり2つ勝てば、その優勝戦進出は現実に近づく。だが、それはわずかな可能性の中でもかなりレアなケースと言えるだろう。

 では、そのほかの場合、どうなれば内藤にはいいのか?

 3人が勝ち点12で並ぶことを想定してみよう。

内藤に光明を与える選手は……。

 内藤に都合のいいのは、3人が勝ち点で並び、直接対決の勝ち負けがルール上消える展開になることだ。

 まだホワイトとの直接対決を11日に残しているから、引き分けは別として、この2人が勝ち点12で並ぶことはない。試合終了後には……どちらかが脱落していることを意味する。

 内藤には好材料がある。勝ち点で並ぶ可能性もある石井と後藤にすでに勝っているからだ。つまり内藤的には石井の連勝も後藤の連勝も、どちらでも大歓迎というわけだ。

 石井は8日に鷹木、11日にタイチと戦う。だが、石井は勝ち点12で並ぶことはできても、モクスリー、内藤、後藤にも負けているから優勝戦進出の条件を満たすことはできない。

 では、後藤はどうだ。8日にモクスリーと当たる。11日に鷹木だ。

 後藤が2つ勝てれば、内藤、モクスリー、後藤が6勝3敗、勝ち点12で並ぶことになる。モクスリーは内藤に勝っているが、内藤は後藤に勝っている。そして、後藤がモクスリーに勝つということで、直接対決の成績が問われない状況が生まれる。

 そうした場合には優勝戦進出者決定戦になるが、それ以外のケースは、複雑を極める。

オカダ連勝ストップ、飯伏単独2位……。

 内藤ファンはより複雑な展開を想像してみる価値があるだろう。

 今夏の大会、まだ、引き分けは1試合もないが、引き分けまで考えると想像をもっと楽しむことができるだろう。

 一方、Aブロックは3日に、オカダ・カズチカの連勝がついにストップした。今年3度目となったSANADAとの対戦で「武道館は消化試合にする」と言っていたオカダの思惑が崩れた。29分47秒という時間切れ寸前でSANADAのムーンサルト2連発を浴びてオカダは敗れた。

「一番負けたくないやつ」とライバル視しているSANADAにオカダは悔しさをにじませた。

 同日、昨年のG1優勝決定戦以来の対決で、飯伏幸太が棚橋弘至をヒザで粉砕、棚橋に3つ目の黒星をつけた。飯伏はオカダに1勝差で単独の2位だ。

 飯伏は7日の浜松でザック・セイバーJr.に勝って、10日の日本武道館でオカダを倒せれば、自力で2年連続の優勝決定戦に進出できるのだ。

(「プロレス写真記者の眼」原悦生 = 文)