引退、結婚、出産、ラグビー--。そして、再びトラックに戻ってきた元ハードル女王が陸上界をにぎわせている。7人制ラグビーを昨年限りで断念し、女子100メートル障害に6年ぶりに復帰した寺田明日香(パソナグループ)。27、28日に出場した大会ではともに優勝し、目標に掲げる東京五輪出場に向けて猛進している。

 6年ぶりに臨んだ6月の日本選手権で3位に食い込み、今月27日の実業団・学生対抗では自己ベストまで100分の2秒に迫る今季日本最高の13秒07をマークして優勝した。同28日のトワイライト・ゲームスでも優勝し、「だいぶ試合勘が戻ってきた。体が浮くところを修正できればもっと速く走れる」。手応えをにじませた。

 2013年に一度は陸上を引退し、翌年に結婚と出産を経験した。だが、アスリートだった自分に区切りをつけられず、「もやもやしていた」ころに7人制ラグビーと出会う。16年から本格的に競技を始め、日本代表ではトライも決めた。だが、足首を骨折してからは思うようなプレーができなくなり、引退を決意した。

 まだ29歳。「やっぱり陸上で東京五輪に出たい」と、慣れ親しんだ舞台に再び戻ってきた。ラグビー選手時代、激しいタックルを受けるなかで筋肉がつき、体重は4キロ増えたという。その経験が無駄ではなかったようで、「力強く走れるようになってハードルへ向かう怖さもなくなった。ラグビーに比べたらぶつかっても痛くないし、転んでも大したことないですからね」。手足に残った傷を見ながら、笑い飛ばす。

 「いろんなことを経験して戻ってきて、いまは陸上がすごく楽しい」。なにより、強い味方が加わった。「ママ、1番になってね」。スタンドから、まな娘の果緒ちゃん(4)の声援が背中を押してくれる。(山口裕起)