「賞味期限切れかもしれない」。一度はそう口にした男が、新たな刺激を糧に進んでいる。競泳男子背泳ぎの入江陵介(29)=イトマン東進。今月12日からの水泳世界選手権(韓国・光州)に、競泳日本代表の最年長として乗り込む。

 6月下旬、米アリゾナ州のフラッグスタッフ。標高2100メートルの高地にあるプールで、精力的に泳ぐ入江の姿に驚かされた。持久力の向上が見込める代わりに、疲労がたまりやすいなど調整の難しい高地での練習をこれまで苦手としてきたからだ。入江は言う。「若いとき以上に、しんどいことをしないといけない。世界選手権のハードな日程を戦い抜くには、高地での練習が必要」

 16歳だった2006年、競泳では平成生まれで初めて日本代表入りした。無駄の少ない効率的な泳ぎを武器に、その年のアジア大会の200メートルで金メダルを獲得し、一気に注目を浴びた。09年に作った100、200メートルの日本記録は、まだ破られていない。平泳ぎの北島康介らと並び、日本競泳界の「顔」の一人であり続けてきた。

 周囲からの期待はしかし、入江を苦しめた。12年ロンドン五輪では個人種目で銀メダルと銅メダルを獲得。それでも「金でなければ負けというイメージを持たれ、しんどかった。入賞で喜んでもらえる選手だったら楽なのにと思った」。16年のリオデジャネイロ五輪は100メートル7位、200メートル8位。「全力でやってきて、これ以上、何をすればいいのかと。もう限界。真っ白になった」。「賞味期限切れ」の一言が、涙ながらに口をついた。