前田健太対大谷翔平。

 6月11日、米国で2度目の対戦となった両者の対決は、右中間本塁打と空振り三振に終わった。前田は打者・大谷のポテンシャルの高さに敬意を払った上で、結果についてはこう説明した。

「ちょっと裏をかこうとしすぎたのがありますね。前回(昨年7月6日)の対戦で投げていないボールを選択してしまった」

 1回2死走者なし。左打者には直球とチェンジアップを配する攻めが多い中で、フルカウントから選択した1球は外角からのバックドアスライダーだった。82マイル(約132キロ)が少し甘く入ったところを大谷は見逃してくれなかった。

 2打席目は2回2死一塁。再びフルカウントとなった。

「裏をかくのをやめたっていうか。自分の自信のあるボールで勝負するのがベストだというのが1打席目でわかったので。ストレートとチェンジアップ。もう、余計なことはしないでおこうって決めました(笑)」

 8球目。最後は85.5マイル(約138キロ)のチェンジアップで空振り三振。“裏事情”を明かす中で、先輩の意地を見せた。

 これで米国での2人の対決は4打数1安打、1本塁打、2三振。日本時代を含めれば11打数3安打、1本塁打となった。

「打たれたら大変なことになる」

 前日、対戦を前に前田は日本報道陣に囲まれた。普段は多くても4、5人しかいない登板前日取材。なのにこの日は20人以上が集まり、テレビカメラも2台いた。メディアの狙いは対大谷であることは言うまでもないが、自分を取り囲んだ今季最多の日本人メディアに前田は常に笑顔で話した。

「楽しみな部分もありますし、もちろんいい打者なので抑えないといけない、頭も使わないといけない。あとはいろんなメディアの人がたくさん書くと思うので、打たれたら大変なことになる(笑)」

 今回の対戦後も、常に屈託のない笑顔で答えてくれた前田の姿は印象的だった。同時に前田の大谷への強い思い入れ、2人の距離感の近さも感じた。

 それは前田のこんなコメントにも表れた。

対戦は1年に1回はあるかないか。

「1年に1回あるかないかの対戦なんで、そういう意味では対戦できるのはいいことだと思いますし、周りの方に注目してもらえるのは有り難いです。

 僕も翔平もやることは変わらないでしょうし、いつも通り、僕は抑えるために、向こうは打つために努力するだけなので、そこは変に意識せずに、純粋に抑えるために頑張りたいと思います」

 メジャーで戦う日本人選手にとって、大谷翔平は誰にとっても、可愛い後輩であり、自慢の日本人選手である。言うまでもなく、それは大谷翔平が二刀流として、メジャーを席巻する選手だからである。

「打って、投げて、走る」前田健太の価値観。

 野球選手として、前田の最大の価値観は「打って、投げて、走る」である。事実、今季、彼の打撃成績は24打数6安打、打率.250。二塁打も2本放ち、2打点も挙げ、今季の目標の1つに「本塁打を打つこと」も掲げている。

 5月15日のパドレス戦、前田は二刀流として、メジャー史上初の快挙も成し遂げた。

 投げては6回2/3零封、12奪三振。打ってもチームの全得点を叩き出す2安打、2打点。打点が公式記録となった1920年以降、12三振を奪い、2点以上のチーム全打点を挙げたのはメジャー史上初の快挙となった。

 まさに本家本元、大谷翔平の先を行く「リアル二刀流」として、歴史にその名を残した。そして、打者・前田として、なかなかのコメントを試合後に残した。これには本塁打全盛の大味な野球に辟易としている米国の一部メディアも手を叩いて喜んだ。

「バットに当たれば、何かが起こると言うことがわかったと思う。三振すれば何も起こらない」

DHの試合は乗り気じゃない?

 “俺だって、二刀流で勝負したい”

 こんな思いもどこかにあるだろう。

 だから、前田は11日の敵地でのエンゼルス戦を前に楽しくない部分もあると言った。

「(DH制は)プラスになる部分はあんまりない。マイナスな部分は僕の楽しみが減る。単純に投げる日に打席に入るのが楽しみなんで。僕の楽しみが削られるのはマイナスですね(笑)」

 前田健太が大谷翔平に抱く思いは“憧れ”に違いない。マエケン対大谷翔平を取材し、前田のそんな思いを感じた。

(「メジャーリーグPRESS」笹田幸嗣 = 文)