◆陸上 全米大学選手権第3日(7日、米テキサス州オースティン)

 新時代の到来だ。男子100メートル決勝で、サニブラウン・ハキーム(20)=フロリダ大=が9秒97(追い風0・8メートル)の日本新記録で3位に食い込んだ。桐生祥秀(23)=日本生命=が17年9月に出した記録を0秒01更新した。男子200メートル決勝でも日本歴代2位の20秒08(追い風0・8メートル)で3位となり、男子400メートルリレーも第2走者として今季世界最高37秒97での優勝に貢献。今秋のドーハ世界陸上(9~10月)と、20年東京五輪での決勝進出へ、期待が大きく膨らんだ。

 背中を夢中で追いかけ、サニブラウンは必死の形相でゴールに飛び込んだ。9秒97。今季世界6位タイの日本新だ。「あまり実感はない。(後半に)ストライドが伸びてしまったので、そこをまとめれば、もう少しいいタイムが出たと思う」。5月11日に米大学南東地区選手権で9秒99を出してから1か月足らず。日本人初となる2度目の公認9秒台にも、淡々と課題を口にする姿がたくましかった。

 優勝したオドゥドゥル(ナイジェリア)は今季世界最高タイの9秒86。約1メートル先でゴールしていた。「めちゃくちゃハイレベル。このレベルで走れて本当に良かった」と振り返った。84年ロス五輪4冠で、現ヒューストン大コーチのカール・ルイス氏も「素晴らしいアスリートだ。過小評価されているが、この大会は世界大会と同じくらいの大会。ここでうまくやれたら、他でもやれる」と“お墨付き”をくれた。

 188センチの長身を生かし切れば必然のタイムだ。日本陸連科学委員会によると、短距離2冠に輝いた17年日本選手権時は最大ストライドが246センチの44・7歩で100メートルを走った。17年ロンドン世陸王者ガトリン(米国)は44・1歩で、ひけをとらない。米国で筋力強化に励み、出力も増した。五味宏生トレーナーは尻の筋肉の発達を指摘し「エンジンが大きくなっているのは確か。増えるところは増え、絞るところは絞れている」と認める。課題の出足も改善。サニブラウンは「いろいろな人のおかげでここまで来られた」と感謝した。

 17年ロンドン世陸は200メートルで最年少(18歳156日)ファイナリストとなり、7位入賞。同大会で引退した世界記録保持者ウサイン・ボルト氏の後継者候補の呼び声に、日本の若武者は「簡単になれれば苦労はしない」と苦笑いしつつも、「目標は、最大のものをもって励みたい。数年後、どうなっているか分からない」と口にした。城西高を卒業した17年春には「地上最速を目指す」とも言った。究極目標は世界記録9秒58。9秒台も日本新も通過点だ。

 ドーハ世陸代表を争う次戦の日本選手権(27日~、福岡)は17年大会以来となる国内レース。約1年半ぶりの帰国に「牛丼が食べたい。温泉にも入りたい」と笑いつつ、「まだ今後も速いタイムが出ると思っているので、その都度、更新していければ」と視線を鋭くした。昨年の今頃は、右脚肉離れのリハビリ中だった。「いい復帰の年。よくここまで来られたなと」。ほんの少し自分を褒めた20歳は、世界との戦いを真っすぐ見つめる。