ラグビーW杯日本大会は9月20日、1次リーグの日本-ロシア戦(味スタ)で開幕する。前回大会の15年イングランド大会では1次リーグ3勝1敗としながら、勝ち点差で8チームが出場する決勝トーナメント進出を逃した。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(49)は前回果たせなかった8強を目標に設定。一生に一度の自国開催の舞台で、快挙の夢へ挑む選手たちを連載企画「桜の勇者たち」で紹介する。第2回は変幻自在のキックで不動SOとなった、SO田村優(30)=キヤノン=の魅力に迫る。

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 2018年6月9日、大分で行われた日本-イタリア戦。20-17で迎えた後半21分だった。SO田村優(30)=キヤノン=が左中間深い位置から、逆サイドへ約40メートルのキックパス。右ライン際、ピンポイントでキャッチしたフッカー堀江翔太(パナソニック)からWTBレメキ・ロマノラバ(ホンダ)に渡り、トライが生まれた。

 「あそこが空いているのは分かっていた。偶然ではない」と田村は解説する。堀江は「優と目が合った。通じるやろなと思った」。日本代表戦の重圧の中で、あうんの呼吸で生まれたビッグプレー。正確なキックがあってこそ、なせる技だ。

 密集から出たボールを最初に受けて、攻撃の起点となるのがSOだ。田村はボールを保持した際の思考を「常にキックとパスとランのオプションがある。その中で判断を組み合わせていく」と説明する。瞬時に最良のプレーを選択できる視野の広さと、戦術眼を持ち合わせる。そして最大の武器が、多彩に操るキックなのだ。

 15年のW杯イングランド大会で日本を指揮したエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は、パス&ラン主体に試合を組み立てた。対してジェイミー・ジョセフHCはキックを多用する戦術を好む。ジェイミー体制で代表での田村のプレーの幅は広がった。

 「今は空いているスペースにボールを運ぶ手段としても(キックを)使っている。エディーの時にはなかった。ジェイミーに『使っていいよ』と言われたので、練習しています」。SO3番手だった前回大会から今では不動の存在だ。

 ジョセフHCは「田村はビッグゲームプレーヤー。日本代表のジャージーを着ることでベストパフォーマンスをしてくれる」と大舞台での強さにも太鼓判を押す。勝負強さを問われた田村は「分かんないですね。スイッチ?勝手に入ります」。動じない精神力を持つ司令塔。変幻自在のキックで、試合の支配者となる。