25、26日におこわれたコンバインドの国内王者を決める「第2回コンバインドジャパンカップ(CJC)」。東京2020オリンピック出場につながる世界選手権八王子大会への代表権が懸かった大会を制したのは、男子が大会2連覇となった楢崎智亜、女子が…


 25、26日におこわれたコンバインドの国内王者を決める「第2回コンバインドジャパンカップ(CJC)」。東京2020オリンピック出場につながる世界選手権八王子大会への代表権が懸かった大会を制したのは、男子が大会2連覇となった楢崎智亜、女子が今シーズンの国内3冠目に輝いた野中生萌だった。

 楢崎智亜は「全体のレベルがかなり上がってきているので、自信になった」と手ごたえを語り、「スピードとボルダリングでの逃げ切りが勝ち方だと感じている」と8月の世界選手権八王子大会を見据えた。一方で2位の原田海は「ボルダリングとリードを中心にやりつつ、スピードは安定したタイムを出す」とスタンスを変えずにいくといい、各選手の戦略に違いもみえた。

 大会2連覇はならなかった女子2位の野口啓代は、「私は東京五輪までと決めたことでこの3年間やってこれた。東京五輪がなければ、もうやめていたかもしれない。東京五輪までしか競技を考えていない」と心境を明かし、「この一年は悔いの残らないようにやり切りたい」と最後まで全力で戦うことを誓った。以下、決勝を戦った選手たちのコメント一覧。

楢崎智亜コメント(男子優勝)
「連覇できて嬉しい。全体のレベルがかなり上がってきているので、自信になった。タイムを狙っていたスピードで結果が出たので流れに乗れた。ボルダリングが3課題になったのは体力面を考慮すると良いと思うが、1課題でも落としてしまうと逆転が難しいと感じた。リードは世界トップ選手との差がまだ埋まっていないので、世界選手権ではスピードとボルダリングでの逃げ切りが勝ち方だと感じている。やってきたことに間違いはないという手ごたえがあるので、自信を持って世界選手権に臨みたい」
原田海コメント(男子2位)
「体の動きやメンタルコントロールも上手くいき、調子はここ最近で一番良かった。シーズンの中でここに合わせてきた結果だと思う。リードの完登はボルダリングW杯のシーズン中も持久トレーニングをしていたので、そこが大きかったのと、最後は腕もつっていたが、絶対登ってやるという意地で登った。世界選手権ではボルダリングの2連覇と、最近やりがいがあると感じているリード単種目でも表彰台を狙っていきたい。2位という結果は本当に悔しく、コンバインド優勝も狙っていきたいという意思が強くなった。スピードは他の選手に比べるとまだ遅いので、ボルダリングとリードを中心にやりつつ、スピードは安定したタイムを出すというスタンスは変えずに行こうと思う」
藤井快コメント(男子3位)
「改善点、反省点が目立つ決勝だった。スピードは下部でミスがあり、それでも自己ベストが出たので、うまくハマればもう少し速くなると思う。ボルダーでは疲労が溜まっていて出力が出ず、リードは正直やりたくなかったというくらい疲れていた。世界選手権のほうがよりハードになるのは明らかなので、この二日間でこれだけの疲労があるというのはまずいと思っている。正直体力だけでは若い選手たちに敵わないので、そこは効率的な登りなどでカバーするしかない。コンバインドはリードの安定感があれば逆転も可能で、今回も内容は良かったとは言えないが逆転できたので、そこは狙っていた通りにはなった」
土肥圭太コメント(男子4位)
「世界選手権代表は狙いにはいかず、できるだけ考えないようにして自分の登りに集中していた。いつか出てみたい大会だったので相当嬉しい。(ボルダー50%、筋トレ50%の練習と聞いたが)ボルダーのW杯で活躍するのが目標だったが、今はリードもやらなきゃという気持ちが大きい。オリンピック代表のうち1人は来年のCJCで決める可能性があると聞いた。今は相当成長を実感できているので、来年のCJCまでには(このペースで行くと3種目の実力が)間に合うかもしれないと考えると、東京オリンピックの可能性もあると思っている」
緒方良行コメント(男子5位)
「5位という結果はやはり悔しい。世界選手権に出るために結果を出さなければいけなかったので、ここで決めたかった。ボルダーは3完登できるチャンスがあったし、スピードでも1位が取りたかった。今の日本のレベルだと予選通過も簡単なことではなく、決勝では自分の持っている力を出し切れれば成績はついてくると思っていて、とにかく自分の力を出そうと臨んでいた。土肥選手は世界ユースだったり、ユース五輪だったり、重要な大会で決め切れる。彼と僕との差はやっぱりメンタルだと思う」
楢崎明智コメント(男子6位)
「あまり良いところを作れなかった。スピードは練習の段階からスタートがうまくいかずに最後まで修正できず、ボルダリングは1課題目で登る前から難しいと思い、そこから流れに乗ることができなかった。リードもまだいけたが、この一手というところで落ちてしまった。全体の流れが悪くても、そこを断ち切って良い登りをするという気持ちを世界選手権までにちゃんと作っていかなければいけない。今日は登る前から諦めてしまっていた。そこがコンバインドの難しさだと思った」
野中生萌コメント(女子優勝)
「本当に嬉しい。スピードで確実に1位を取ることが重要だったが、勝因はボルダーだった。あそこで一撃すれば勝てるというのがわかっていたので、そこでしっかり決められたのが勝因だと思う。2課題目はトライできるタイムは残っていたが、チャンスがあるという課題でもなかったので、捨てる怖さはあったが最後に賭けた。リードは最後にちょっと抜けてしまった感じではあったが、疲れもかなりあったのであれが今の実力だと思う。野口選手や他の選手のプレッシャーをすごく感じていたので、逃げ切れてホッとしている。世界選手権は今日よりも長い日程なので、体力面の調子をもっと上げていきたい。金メダルを取りたいという気持ちは変わらずに持っている」
野口啓代コメント(女子2位)
「3種目とも悪くはなかったが、ボルダリングで1位が取れなかったこと、リードで完登できなかったことが敗因。3種目ともバランスよく上がってきているとは思うが、どれも1位を取るには届かなかった。リードの落ちたところは掴みやすいホールドではあったが、スピードとボルダーの疲れもあって、得意な種目ではあったが完登には届かなかった。私は東京五輪までと決めたことでこの3年間やってこれた。東京五輪がなければ、もうやめていたかもしれない。東京五輪までしか競技を考えていないので、この一年は悔いの残らないようにやり切りたい」
森秋彩コメント(女子3位)
「目標としていたリードを完登しての表彰台が達成できて嬉しいし、自信につながる。普段から激しい練習を連続でやったりしているから、体力的な問題は全然なかった。東京オリンピックは以前は程遠いと思っていたが、今回(世界選手権のコンバインド代表に)選ばれて、0%ではないなって思い始めた。スピードがまだまだだと今回わかったので、もっと野中さんとかにも付いていけるようになって、ボルダーやリードでもW杯での経験を活かして、総合的に高い所に行ってオリンピックに出たいなと思う」

CREDITS

取材・文

編集部・篠幸彦 /

写真

JMSCA/アフロ、編集部