ラグビーW杯日本大会は9月20日、1次リーグの日本-ロシア戦(味スタ)で開幕する。前回大会の15年イングランド大会では1次リーグ3勝1敗としながら、勝ち点差で8チームが出場する決勝トーナメント進出を逃した。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(49)は前回果たせなかった8強を目標に設定。一生に一度の自国開催の舞台で、快挙の夢へ挑む選手たちを連載企画「桜の勇者たち」で紹介する。第1回は日本が世界に誇る韋駄天(いだてん)、WTB福岡堅樹(26)=パナソニック=の魅力に迫る。

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 とにかく速い。獲物を狙う猫のように、背を丸く収縮させる独特の姿勢。そこから爆発的な加速力で瞬時にトップギアに入る。それでいて、刻むステップはしなやか。屈強なDF陣を鮮やかに突破する韋駄天ウイングが、福岡だ。

 「基本的にかけっこは負けなしだった」。50メートル5秒8。サッカー元日本代表FW岡野雅行氏と同タイム。「父と犬の散歩にいって、神社からの下り坂を一緒に駆け下りて勝負していました」。野犬より速かったという岡野氏同様、犬にまつわる逸話も持っていた。

 開業医の祖父、歯科医の父を持ち、福岡高時代に携わった医師の影響もあって、医師を志した。そんな将来設計にラグビーが入り込む。高校3年時の花園での勝利によって得た自信で「上を目指したいと思えた」と大学で続けることを決めた。

 才能を見いだされて、大学で一区切りの予定も変わった。13年に日本代表に初招集され「(19年)W杯までラグビーを続ける道を選ぶきっかけになった」。後押しした祖父の言葉があった。『才能を持って生まれてきた人間はそれを社会に還元する責任がある』-。「文武両道でやってきたので、その言葉で両方を目指したいという思いをより強くした」。

 全盛期を迎えつつある26歳。「素晴らしいタイミングでW杯、五輪が日本で開催される。ゴールが決まっているから、今、頑張れる」。20年で引退。その後は医師への道を歩むことを決めている。

 W杯前回大会は敗れたスコットランド戦のみの出場。「何も貢献できなかった」と振り返る。今大会、1次リーグ最終戦でスコットランドと再戦する。「4年前と一緒だったらこれまでやってきた意味はない」。おそらく決勝トーナメントをかけた大一番。韋駄天が、その先へ導く。