12日に行われたスピードの国際公式戦「au SPEED STARS 2019」。大会は、さすがの実力をみせた海外選手が男女ともに優勝を果たしたが、男子で緒方良行が日本新記録を樹立、竹田創が2位に入るなど、日本勢も活躍をみせた。

 「周りの雰囲気で登るタイプなので、応援はありがたかった」と観客への感謝を述べたのは竹田。地元の宮城県にはスピード専用ウォールがなく、「筋トレやランニングなど自分なりに工夫してトレーニングをしていた。スピード壁での練習は毎週1回来ていた昭島でおこなっていた」といい、壁での練習量が少ないにもかかわらず好記録をマークしたことに、高いポテンシャルを感じさせられた。

 一方で、緒方が「今まで後半の上部パートで負けてしまうことが何度かあった」と話したように、今大会では後半に勢いが衰えて逆転を許す日本人選手が多くみられ、課題も浮き彫りとなった。このことについて、国内王者の池田雄大は「これまで上部パートのみを練習するレーンが日本にはなく、相対的に上部の練習量が少なかった」とその要因を推察した。

 それでも、3年連続での出場となったベテランのスタニスラフ・ココリン(ロシア)は、日本人選手が実力を高めてきていることを認め、「脅威に感じている」とコメントを残した。緒方や竹田が躍動したように、日本の実力が伸びてきていることに間違いはない。今大会は、スピード種目でも日本人選手が活躍する未来を感じさせるものとなった。

竹田創コメント
「これほどのタイムが出るとは思わなかったので、自分でも驚いています。周りの雰囲気で登るタイプだったりするので、応援していただきありがたかったです。普段は(地元の宮城県に)スピード壁がないので、筋トレやランニングなど自分なりに工夫してトレーニングをしています。3月からほぼ毎週1回は昭島まで来て、スピード壁での練習をしていました。まだスピード1本に絞ろうという気持ちはないんですが、可能性の一部として考えています。もしそうなった時は、2024年のパリ五輪でスピードに出場して、日本人はスピードも強いんだというところを見せたいですね」
緒方良行コメント
「練習では良いタイムが出ていたんですけど、中々本番で更新することができなかったので、今回日本新という結果を残せてとても嬉しいです。観客も盛り上がっていて、登っていてすごく気持ちよかったです。いつも上部の方で足を滑らせて、後半に負けてしまう経験が何度かあったので、それからはずっと上部だけを練習していました。今日は下部から上部までスムーズに登れたので成長を感じることができました」
藤井快コメント
「決勝は気持ちが入りすぎて、スタートで気持ちが空回りしてしまいました。メンタルのコントロールが大切ですね。ミスが無ければ安定して6秒台に入れることは分かったので、各パートの精度を高めていきたいです。緒方選手は練習でも6秒台半ばを頻繁に出していて、日本記録はいつ出てもおかしくなかった。抜かれたことはショックですが、まだまだここから巻き返せると思っています」
楢崎智亜コメント
「最近スピードの調子が悪くて、新たなムーブの試行錯誤や、ボルダーで苦手な動きを練習しているうちに、登りの姿勢が変わってきてしまっている。自分がタイムを落としているうちに周りが伸ばしてきていて少しマズいなと感じています。ただ(日本新を出した)緒方選手の記録は自分にも出せる感覚はあるので、今月のコンバインドジャパンカップで抜かしたいですね」
池田雄大コメント
「自分の思い描いていたイメージを(竹田)創君が取った感じで、悔しいですね。既に次の選手と戦う気持ちでいたので気持ちが空回りしてしまいました。(日本人は後半に抜かされるケースが見受けられたが?)今まで日本では上部のみを練習できるレーンがなく、上部を練習したかったら、そこまでミスなく下部を登っていかないといけなかった。最近ここ昭島に上部の練習レーンができましたが、これまで日本人選手はそこの練習量が足りていなかった。上部は練習すればするほど伸びてきます。もし来年もSPEED STARSがあるとしたら、日本人選手は5秒台をばんばん出していると思います」
野中生萌コメント
「スピードが本業の選手たちに囲まれて、中々ない機会だったなので良い経験になりました。足のスリップなどミスが多かったので、それがなければ良いタイムが出たと思うので悔しいです。ただ、スピードの選手に途中まで勝つことができて手ごたえも感じることができました。ファイナルを見ていてもみんなミスをしたりしていて、そうなると展開は本当に分からなくなるので、どの選手にもチャンスはあるなと感じましたね」
野口啓代コメント
「目標としていた決勝ラウンドのトーナメント方式で登ることができて良い経験ができました。今は池田雄大選手にコーチに付いてもらっていて、その成果もあってW杯重慶大会で自己ベストを更新できて、タイムも安定してきました。最後のランジのパートで遅くなるなど、修正するポイントはたくさんあります。フィジカル面や、飛ぶ際のポジションなど、まだまだ改善できると思っています」
伊藤ふたばコメント
「最後のパートが課題でしたが、だいぶ良くなってきました。久しぶりのスピードの大会で、決勝トーナメントまで体験できたのは大きかったです。今日は自己ベストも出せましたし、安定して9秒台を出せるようになってきました。ただ、決勝トーナメントでは勝てそうだなと思ったところで滑ってしまったり、今後もそういった場面があると思うので、メンタルも改善していきたいです」
ルドヴィコ・フォッサリ コメント
「今日ここに来ることができて、さらにタイムも良かったのでとても満足しています。みなさんが明るく、W杯のような雰囲気で盛り上げてくれたので楽しかったですね。去年と比べても日本人選手の実力は上がってきていると感じています。緒方選手も日本記録を塗り替えて、W杯でも良い成績を残してくれるのでないでしょうか。8月に東京で行われる世界選手権で優勝することが次の目標です」
アンナ・ブロジェク コメント
「日本ではクライミング熱が高まっていると聞いていたので、すごく盛り上げていただいて楽しく登ることができました。いいタイムも出たので、とても満足しています。練習では、日本人選手の多くが8秒台のタイムを出していて、実力が上がってきていると感じています。今後はW杯でいい成績を残して、日本に戻ってきて世界選手権で優勝したいと思います」
スタニスラフ・ココリン コメント
「大会の雰囲気がすごく良かったですね。大会に参加して3年目ですが、毎年レベルアップしていると思う。海外で行われている大会と比べると、場合によってはこちらの方が盛り上がっていたかもしれません。自分の結果には全く満足できていません。今日のタイムだとW杯ではおそらく決勝トーナメントには進めないでしょう。(日本人選手の進歩は感じる?)間違いなくあると思います。日本代表はコーチの方も海外の代表チームから学ぶ機会を設けているので、その影響もあるはず。少しずつタイムが近づいていて、脅威に感じていることは事実ですね」

CREDITS

取材・文

編集部・篠幸彦 /

写真

窪田亮