東京2020オリンピック競技大会まで500日を切った今春、競技の魅力やアスリートの息づかい輝くプレー数々、アスリート語録をWebマガジンに特別編集。その名も「ROAD TO TOKYO2020~昭和から平成そして令和にバトンをつなぐ東京五…

東京2020オリンピック競技大会まで500日を切った今春、競技の魅力やアスリートの息づかい輝くプレー数々、アスリート語録をWebマガジンに特別編集。その名も「ROAD TO TOKYO2020~昭和から平成そして令和にバトンをつなぐ東京五輪~」

今回は、2020年のクライミングシーンにおいて様々な貢献を続ける、ベテラン女性アスリートの語録に注目しよう。

プロフリークライマー・野口啓代選手だ。

2009年から、ボルダリング・ワールドカップで数々の好成績を残したプロフリークライマーの彼女に、スポーツライターの田中夕子が独占インタビューを敢行。ワールドカップにおけるストロングポイント、そして世界女王の卓越した能力に迫った2017年の語録に注目したい。

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田中> はじめまして、こんにちは。
野口> はじめまして、こんにちは。よろしくお願いします(握手をする)
田中> 痛い、痛い、痛い!!
野口> ごめんなさい!笑!
 
田中>やっぱり、すごいですね。見た目は華奢ですけど(野口選手の握力は55kgで、一般女性のおよそ2倍)
野口>強く握りすぎちゃった笑
田中>さすが世界のアスリートの握力でしたね。

「大会が一番好き」クライマー野口啓代の強さ

田中> ワールドカップで優勝されてるんですけども、ご自身で自分の強さっていうのがどういうところに理由があると思いますか?
野口> 2009年10年と14年15年にワールドカップを取ってるんですけど、その間の11年12年13年はずっと年間ランキングが2位で、またその後優勝できるようになったという感じなんですが、何かやっぱり一番はワールドカップとか、大会が一番好きです。
 
田中> 大会が一番好き?
野口> 子供の頃からずっと国内大会に出ていて、高校1年生になる16歳から世界の大会に参戦しはじめたんですけど、やっぱり大会が楽しくて大会に出るためにとか、大会で優勝するために、毎日練習を頑張れるっていうのがあったので、やっぱり大会が一番好きなことだと思います。

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(日本山岳協会選手強化委員会ボルダリング日本代表ヘッドコーチの安井博志に聞いたインタビュー内容は、以下)
 

安井> 彼女の凄さはいつもモチベーションを上げて来られることですね。シーズン前になると。これはやはりクライミングという競技そのものが本当に好きだと思うんですね。多くの同世代の選手達っていうのはもう一線から退いていまして、彼女が世界の中でも一番ベテランになるんですが、それでもまだ進化し続けているというところは、本当に素晴らしいと思います。これは本当に繰り返して言いたいところですね。

野口啓代が語るクライミング競技3つの魅力

田中>クライミングの競技を野口さんの方から詳しく教えていただきたんですけど。
野口>現在は、ワールドカップでは3種目行われてまして、一つ目は高さ15メートル位の壁を登るリード種目というもので、そちらは全選手がハーネスを履いて、ロープを自分でカラビナと呼ばれる安全を確保する器具にかけながら登っていきます。高さを競うので、本当にいかに上まで登れたかで順位を決めます。ボルダリング種目の方は、大体高さ5メートル以下の壁で行われるんですが、決勝であれば4課題を登って、その4課題中、何課題登れたかで順位を競います。全然違う課題が用意されているので、色んなムーブとか色んな動きをこなせないと、なかなか登れないですね。もう一つはスピード競技と言って、本当に単純に15メートルの壁を速さを競うんですが、全世界、同じホールド、同じ壁、同じ傾斜でホールドの向きまで決められているので、陸上競技とか水泳競技と同じで、普段練習したのを本番で全く同じ壁で、良いタイムを出せた人が勝てるっていう本当に速さを競う競技です。
 
田中>改めて聞くと面白いですね。
野口>全部できないとトップになれないので、本当に速さもそうですし、長さとか持久力もそうですし、あとは課題の難しさであったり、攻略、全部求められます。

クライミング世界女王野口啓代の卓越した能力

田中>指懸垂、実際に見せていただいてもよろしいでしょうか?
野口>はい、もちろんです。
 
安井>やはり身体能力は突出している部分があります。特に指先の力は類い稀なところがあります。しかも彼女は普通3本位かかれば、結構安定するって言われるものに対して、2本になっても、ましてや1本になってもしっかりと捉えてるんですね。驚きます(時には指先に全体重をかけることを要求されるクライミング。指先がホールドにかかれば体を安定させることのできる彼女の指先の力は驚異的である)
 
野口>これ自体が第一関節だけで、ぶら下がって。
田中>すごいですね、指だけですもんね。
 
野口>そうですね、指だけを鍛えるものなので。例えばここから。
田中>これ皆できるものなんですか?
 
野口>やっぱりある程度やってないとできないですし、ちょっとずつやっていかないと指も怪我しちゃうので。
田中>そうですよね、普通の懸垂とまた違う。
 
野口>そうですね、本当に第一関節しかかかっていないので、指の力ともちろん、背中とか肩とか全部使うんですけど。
田中>見せていただくと本当にすごいですね。やられている方からしたら普通のことかもしれないですけど。
 
野口>そうですね、なかなか指の本当第一関節とか、指先まで使うスポーツって、クライミング以外ないので、クライミングの何か特徴だと思います。
田中>手ってちなみに見せて頂いても良いですか?
 
(野口が手を出す)
 
田中>指紋がないんですか。
野口>そうですね、トレーニング中なので指皮がないですね。
 
田中>さすが、世界で戦う手って気がしますね。でもこっちだけ見てるとアスリートですけどやっぱい女性らしく、赤がお好きな。
野口>赤は勝負カラーなんです。

小学5年生の時に家族旅行先のグアムでフリークライミングに出会う。クライミングを初めてわずか1年で全日本ユースを制覇、その後数々の国内外の大会で輝かしい成績を残し、2008年には日本人女性としてボルダリングワールドカップで初優勝、翌2009年には年間総合優勝、その快挙を2010年、2014年、2015年と4度獲得し、ワールドカップ優勝も通算21勝を数えた。

2018年にはコンバインドジャパンカップ、アジア競技大会で金メダル。東京2020で行われる複合種目への活躍が期待される日本が誇る世界屈指の女性クライマーであり、「Mind Control」(8c+)、「The Mandara」(V12)を完登するなど外岩の活動も積極的に行う、マルチなアスリート。所属は、TEAM au。東京五輪では活躍が期待される選手の1人。

東京2020大会は、全55競技(オリンピック33競技・パラリンピック22競技)の開催が予定され、誰もがその雄姿に思いを馳せ、熱狂していくシナリオは揃っている。 体操や競泳、柔道、レスリングなど日本のお家芸だけで なく、追加種目の野球、ソフトボール、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンにも注目だ。

『スポーツブル』が願うことは、東京から世界へとスポーツを通して感動の瞬間とドラマ、そして選手の内なる声を、より早く、より深く、伝え、見る者の 心を揺さぶる熱狂を届けること。新しい令和という新時代と共に迎える東京2020大会。最高の舞台で、満開に耀く歓喜の瞬間を共有したいと願っている。 

取材・文/スポーツブル編集部