<スケートボード:日本選手権>最終日◇12日◇新潟・村上市スケートパーク◇パーク男女決勝、ストリート男女決勝

スノーボードでオリンピック(五輪)銀メダルの平野歩夢(20=木下グループ)が、夏冬五輪出場への第1関門を突破した。スケートボード「日本一」を争う大会で初優勝。3位だった3月の日本オープンとの総合成績で強化指定選手入りし「東京五輪へ前進できた」と話した。

地元での大会、自身のスポンサーが大会スポンサーに就いた。スノーボードのハーフパイプを模したような縦長の「ホームコース」に多くの選手が苦しむ中、慣れ親しんだアドバンテージもあった。もちろん、応援も圧倒的。市内3カ所でパブリックビューイングも行われた。6万村上市民の期待を一身に背負った。

世界選手権14位の第一人者、笹岡健介(20)が負傷で満足な滑りができず、日本オープンで争った池田大亮(18)も負傷欠場した。それも、プレッシャーになったはず。父英功氏は「重圧はあったと思う」と話した。「平野を勝たせる大会」は「勝たなければいけない大会」でもあった。

それでも、冬季五輪で激闘を演じてきた平野は強かった。1本目、異様なムードの中で永原悠路(13)ら多くの選手がミスしたが、最後に滑走した平野はできる範囲のトリックで確実に得点を稼いだ。大会によって得点レベルは異なるから単純比較はできないが、日本オープンでは4位にも入れない65・7という「低い」得点で優勝を決めた。

これで、東京五輪へのスタートラインに立った。五輪代表は五輪ランキングで決まる。ランキングのためのポイント獲得対象大会には、日本代表として派遣される必要がある。各種目3人の強化指定選手に入らなければ、五輪への道は限りなく0になる。指定選手になって、初めて「五輪挑戦権」が与えられるのだ。

「簡単ではないことは、理解している」と平野がいうように、五輪へは「いばらの道」が待つ。エアの高さを武器に大会を制し、DJも「高さは正義!」と連呼していたが、高さだけで高得点が出るほど世界は甘くない。本人も「高さだけではダメ」と話す。

確かに、スノーボードと同じように高さは魅力。空中感覚が抜群で、着地ポイントも完璧だからスピードを落とすことなくスムーズに次のトリックへいける。ただ、トリックの個性や質は改善の余地がある。

「もっと技を変えていかないと」と、ボウルの最上部にある鉄製のコーピングを使ったスライド技やグラインド技などを積極的に取り入れることにも意欲をみせた。今は、かつてスノーボードと同じように取り組んでいた頃のトリックを思い出している感もあるが、今後はさらに技の幅を広げることが世界への道だ。

ともに世界一がいるストリートとパークの女子、堀米雄斗(20)という圧倒的なエースを擁するストリート男子に対し、日本のパーク男子のレベルは低い。日本代表の西川監督は東京五輪で金メダルを目指す他の3種目に比べてパーク男子は「入賞が目標」という。「世界のトップ100で、日本は50位前後」と、五輪ランクで20位以内へのハードルの高さを口にした。

五輪ランクで代表になれなくても、開催国枠1はある。ただ、現状ではストリートが本職ながら世界選手権で6位に入った堀米が日本NO1。14位の笹岡が続く。ホームの利で日本選手権に勝った平野だが、真の国内NO1になるにも、まだ時間が必要だろう。

もっとも「難しいからこそチャレンジする価値がある」と平野は話す。大会のために早くから同じ会場で練習していた笹岡は「すごく、よくなっている。今後もよくなる可能性はある」と平野の成長ぶりを口にする。日本代表の早川コーチも「能力はある。経験を積めばよくなる」と話す。

「不安はある」と話す平野だが、挑戦には前向き。「両立している人はいないし、誰もができるチャレンジではない」。周囲は「東京五輪出場」を求めるが、本人は「結果よりも、その先。さらに強い自分になれる」と、挑戦そのものに意味があることを強調した。「勝利」や「1位」ばかりを求めるスポーツ界で、新しい「横乗り系」は「オンリー1」が大切。平野は誰にも出来ない挑戦で「世界唯一」になることを目指して、いばらの道を歩む。【荻島弘一】