日本ラグビー協会の次期会長に、元日本代表CTBで新日鉄釜石の黄金期を築いた森重隆副会長(67)が昇格する見通しとなった。9月開幕のワールドカップ(W杯)日本大会が迫る中、協会が会長交代に踏み切る背景には、前会長である森喜朗元首相(81)の大きな影響力があった。

 「W杯後の日本ラグビーの将来像を描けていない」「若手理事を活用できていない」。森喜朗氏は4月、現執行部に対してそう苦言を呈し、岡村正会長(80)らの続投が既定路線だった6月の役員改選を再考するように求めた。その際、自らも名誉会長を退任して「覚悟」を示していた。

 執行部は揺れた。複数の協会幹部によると、当初は「1人の意向で人事を変えるのはおかしい。従来の方針通り、理事全員で留任しよう」との主張もあった。森喜朗氏の意向を踏まえて岡村氏が任期限りで退任する意向を固めると、協会を実質的に切り盛りしていた河野一郎副会長(73)を昇格させる案も出た。

 しかし、実質的に現体制を継続させる構想に森喜朗氏は反対したという。

■「ルール通りに」と森喜朗氏

 新会長の人選では、東芝社長や日本商工会議所会頭を歴任した岡村氏のように財界からの外部登用も検討された。ただ、限られた時間で適任者を見つけられず、内部昇格が基本線になった。

 協会には「選任時70歳未満」という理事の定年規定があり、岡村氏らには「理事会決議があれば70歳以上でも理事になれる」という特例が適用されてきた。ここでも「定年のルール通りに人選すべきだ」という森喜朗氏の意向をくむ形で、6人いる会長と副会長の中で唯一60代の森重隆氏に白羽の矢が立ったようだ。

 「W杯前に役員を代えるのはよくない」という懸念がかき消された要因には、日本スポーツ界を巡る事情もある。相次ぐ不祥事で競技団体幹部の高齢化や多選への風当たりは強まり、日本オリンピック委員会の竹田恒和会長(71)も定年制と組織の新陳代謝を理由に退任を決めている。

 新体制は6月の理事会で決まる予定。明大や新日鉄釜石で実績を重ねてきた森重隆氏は「ひげ森」の愛称で親しまれるなどラグビー界での人望は厚いが、中央競技団体の運営能力は未知数だ。

 ラグビー界には競技人口の減少など課題が山積している。学閥にとらわれず若手や外部の人材を要職に起用し、組織を活性化できるか。次世代に引き継ぐ基盤作りが、新体制の最大の使命になりそうだ。(野村周平)