名古屋市のラジオ局「ZIP―FM」のミュージックナビゲーターで、プロバスケットボール・Bリーグの会場アナウンスもする、DJの小林拓一郎さん(39)が、故郷の愛知県豊川市でバスケットコートをつくろうとしている。親から受け継いだブドウ畑を「みんなが楽しめる場所にしたい」という。映画『フィールド・オブ・ドリームス』ではトウモロコシ畑を切り開いて野球場をつくるが、それを思い起こさせるような話が動き始めた。

 「コバタク」で知られる小林さんの実家は農家。昨秋、父の吉光さんが急逝して同市土筒(どどう)町内の畑を相続した。数年前までブドウを栽培していた長方形の約2200平方メートル。手放す案もあったが、長男の小林さんが「バスケットコートをつくりたい」と言いだした。

■「バスケットなかったら……」

 小林さんは、バスケットで生き方を学んだという思いがある。

 同市立南部中で入部。うまくなりたいと、部活動以外に大人たちのクラブに自ら申し出て加わった。国府高では「試合で4人しか集まらなかったことがある」という部活動だったが、「アメリカでバスケット選手になりたい」と言ってオレゴン州立大に進学した。

 すぐストリートバスケットに加わり、すごくうまいと感じた相手が高校ではスタメンでないと聞き、レベル差を痛感した。だが、バスケットで身についたチャレンジ精神で大学内のDJに挑戦。卒業後、帰国してDJとなった。Bリーグ・シーホース三河の前身だったアイシンに自ら売り込み、2007年から会場アナウンスで盛り上げるホームコートMC(司会者)をしている。

 「バスケットがなかったら今の自分はいない」と小林さん。米国の街にはいたる所にコートがあり、好きな時にみんなが楽しむ風景があった。「そんなストリートバスケットコートをつくりたい」という夢が広いブドウ畑で膨らんだ。家族の賛同も得て、実現に動き出した。

 昨年11月下旬から、畑を囲む風よけの木を伐採し、ブドウ栽培のワイヤを張っていた約200本のコンクリート柱を撤去する作業を始めた。休日を利用して親族でするつもりが、簡単ではない。そんな話をSNSで発信すると、面白がったり、共感したりした人たちから手伝いの申し出があった。重機も借りられ、今年1月にはほぼ更地に。農地転用など事務的な手続きのアドバイスをしてくれる司法書士の同級生も現れた。

 小林さんは「当初はどうなるかと思ったが、仲間ができて視界がクリアになった」。コートの周りにコンテナを使ったカフェや階段状の客席をつくる構想も少しずつできてきた。「利用は基本的に無料としたい。バスケットだけではなく、広場として何にでも使ってもらってもいい。自由に集まって楽しめる開放的で公共的な場所にしたい。資金や管理方法など、山ほど課題が出てくるでしょうが、できればみんなでつくり上げていきたい」。5月には運営会社を設立。2020年夏のオープンを目指している。(松本行弘)