ウインタースポーツのシーズンも終わりを告げようとしている。

 スキー競技では、ノルディックスキー・ジャンプの小林陵侑がワールドカップ総合優勝を果たすなど大活躍で脚光を浴びたが、小林以外にも着目すべき活躍をした選手がいる。

 その1人が、ノルディック・コンバインド(複合)の渡部暁斗である。

 ソチ、平昌の両五輪で銀メダルを獲得している渡部は、今シーズンのワールドカップでも総合2位の結果を残した。

活躍を支える探究心と向上心。

 その中でも特にすごいのが、2011-2012シーズンに総合2位となったのを皮切りに、これで8シーズン連続で、ワールドカップ総合3位以内に入ったことだ。これだけ長期間、世界のトップを争う位置にい続けた価値は大きい。しかもライバルとして競う海外勢に変動があるにもかかわらず、だ。

 ワールドカップ総合順位について、オリンピックや世界選手権より価値があると語る選手は少なくない。シーズンを通しての安定した結果であり、たまたま1つの大会で調子がよかったことで残せた成績ではないからだ。

 長年の活躍を支えてきたのは、かつて、代表選手の中で「もっとも質問してくる選手」と言われるほど強い探究心と向上心である。

 強くなるために、トレイルランニング、ボルダリング、水面のボードに立ってのバランス感覚の習得など、さまざまなトレーニングに取り組み、試行錯誤してきたのも好例だ。その根底には、世界一になりたいという強い気持ちがある。

 ただそれと同時に、葛藤も抱えている。

W杯総合優勝して思ったこと。

 昨シーズン、平昌五輪での銀メダルにとどまらず、ワールドカップでは総合優勝を果たし、世界のトップとなった。

 渡部はその優勝に触れつつ、こう語っていたことを覚えている。

「ワールドカップの総合成績は、選手や関係者にはすごさや意味は分かるし、自分の中でもそれがいちばんという揺るぎないものがあります。自分が納得するためというか、納得させるためには必要です」

 話はそこにとどまらなかった。

「でも(広く)対外的に伝わるものではない。さらにほかの人たちへと伝えるには、その成績だけではなかったのかなという、漠然とした感覚があります」

 競技の世界を超えて、その価値が広く伝わっていないことがもどかしかった。これは渡部だけの思いにとどまらないかもしれない。

 スキー競技は欧米、特にヨーロッパでは人気競技だ。世界で活躍する選手はスターとして扱われるし、待遇や環境もそれ相応のレベルにある。日本の選手も例外ではなく、活躍すれば、同じように海外から脚光を浴びる。

欧州の方が渡部の認知度は高い?

 一方、日本国内における注目の度合いは大きく異なる。

 例えばジャンプの葛西紀明が国内で広く注目されるようになったのは、ソチ五輪のラージヒルで銀メダルを獲得したのが契機だったが、海外ではそれ以前から注目と人気を誇る存在だった。2010年のバンクーバー五輪の時点で、数十名の海外メディアが葛西を取り囲むほどだったのだ。

 そして渡部の認知度も、ヨーロッパの方が圧倒的に高いのではないかと感じる。

 渡部もそれを意識し、日本国内に向けてのアピールに関心を寄せていた。平昌五輪の試合の前に語った、「テレビのチャンネルを変えられないような試合をしたい」という言葉も象徴的だった。

 そして平昌では銀メダルを獲得した。でもノルディック・コンバインドの地位、注目度などの環境には大きな変化は起こらなかった。

「多くの方に知ってもらうためにはメダルの色が大事かなと思いました」

北京五輪で「3度目の正直」を。

 状況を変えるには、メダルの色、つまり金メダルしかない。

 そんな思いとともに、五輪後のシーズンを戦った。だから見据えるのは3年後の北京五輪にほかならない。オフシーズンには「3度目の正直として、全力で獲りに行きたいです」と語っている。

 今シーズンのワールドカップ。総合2位という結果については、「地力の底上げができている証拠。確実に安定感はあるし、それがかなりハイレベルであるのは間違いない」とコメントしている。

 8シーズン連続で総合3位以内に入るという、驚異の成績を残し続ける渡部。競技の環境を変えるために、2022年での金メダル獲得をまっすぐに目指す。

(「オリンピックへの道」松原孝臣 = 文)