トビウオジャパンの顔・瀬戸大也(ANA)が昨年来の好調を持続したまま、4月2日開幕の日本水泳選手権を迎える。

 7月の世界選手権(韓国・光州)代表選考会を兼ねた今大会では、昨年と同様に200mおよび400m個人メドレーと200mバタフライに出場する予定。1年前は3種目とも2位での日本代表入りだっただけに、「すべて優勝して世界選手権へ」との思いを強めて最終調整に入っている。

「3種目2位」の悔しさを抱えていた瀬戸が確実な上昇カーブを描き始めたのは、昨夏のパンパシフィック選手権、ジャカルタアジア大会頃からだった。夏のビッグイベントを終えた後はトライアスロンに挑戦するなど、違った角度からの“気づき”も得て強化を図ってきた。

 その結果、昨年12月の世界短水路選手権(中国・杭州)男子200mバタフライでは、1分48秒56の世界記録保持者であり、ロンドン五輪金メダリストであるチャド・ルクロス(南アフリカ)との競り合いを制し、1分48秒24の世界新記録で初優勝を飾ったのだ。

すごく効率の良い練習を追求。

 好調は年明け以降も継続中で、3月17日のにいがたオープンでは100mバタフライで52秒22の好タイムをマークしている。

 400m個人メドレーで銅メダルを獲得したリオデジャネイロ五輪以降に取り組んできた新しい試みが実を結んだ格好だ。リオ五輪を終えた後は、指導を受ける梅原孝之コーチとのコミュニケーションを増やし、必要なトレーニングが何であるのかを何度も揉み、練り直し、メニューを組み立ててきた。

 瀬戸は言う。

「見直した結果、すごく効率の良い練習ができるようになりました。しっかり泳ぐ時もあるし、ちょっと抜き気味な練習もあるし、という感じです。リオ五輪前まではつねにガッツリやっていたので、ヘロヘロになり過ぎて良い練習ができないこともあったのですが、今はやるところはやる、ちょっと抜くところは抜く。スイムの練習でメリハリがつくようになりました」

「これが筋トレ?」という内容。

 スイム以上に大幅に変えたのが筋肉トレーニングだ。まずは考え方の土台から再確認。水泳選手であるということを軸に方向性を練り直し、水の中でパフォーマンスを発揮するための方法を考えていった。

 リオ五輪後に専属トレーナーをつけ、泳ぎに活きるメニュー、泳ぎに繋がるメニューを追求。この結果、他の選手がウエイトトレーニングに1時間半以上費やすようなときも、瀬戸は1時間以内で終わるということが増えた。持ち上げる重量も軽くなった。

「以前は時間的にもガッツリやっていましたし、重いものをガンガン持ち上げていましたが、今は『えっ、これがウエイトトレーニングなの?』と言われるような内容です。でも、それがスイムにすごくつながっています」

 リオ五輪前はウエイトトレーニングの時点で筋肉が疲れきってしまい、水中練習の妨げにまでつながることもあったのが、最近はそういう悩みがなくなったそうだ。

「リオ五輪の前は、一度ガクッとくるともう、休まないと立て直しが利かないような状態になっていたのですが、今ではつねに水中で追い込むことができるようになり、バテづらくなりました。しっかりと練習をこなせる体なので、練習もすごく楽しいですね」

 練習で充実感を得ることでさらに良い練習ができる。そんな好循環が生まれた。

「今年中に東京五輪決めたいです」

 日本選手権では決勝で2位以内に入ることに加え、日本水泳連盟が設定する派遣標準記録II(個人メドレー200m:1分57秒98、400m:4分13秒09)を突破することが世界選手権代表入りの条件だ。世界選手権では金メダル獲得で東京五輪の代表に内定する。

「今年は全部優勝して代表権を勝ち取れるようにしたい。そして、世界水泳ではまずは1個でもいいから金メダルを取って、今年中に東京オリンピック決めたいです」

 瀬戸はリオ五輪前年の世界選手権で400m個人メドレーの金メダルを獲得し、いち早くリオ五輪代表に内定した経験がある。ただ、そのときは時間の余裕を生かして痛みのあった両かかとの三角骨を除去する手術をし、練習できない時期があった。

「もし、今年の世界選手権で金を取ることができて東京五輪の内定をもらえたら、4年前とは違う1年間になっていくはずです。リオのときは、前年に内定をもらったことで手術をすることを決めましたが、今年はそういうこともなく、さらに早い段階から強化できると思います」

首痛対策でマウスピース装着。

 トレーニング以外の部分でも新たな取り組みとして、昨年から噛み合わせの矯正を始めた。瀬戸によれば、「僕は、スタートで力んで首を痛めることが多かった。その予防も兼ねるという意味合いで、噛み合わせの矯正を始めました」。

 また、矯正に伴ってマウスピースの装着を開始。これによってよりスムーズに力を出せるようになっているという。昨年12月の世界短水路選手権で世界記録を樹立したときも、矯正用のマウスピースを装着していたそうだ。

「つけている方が力が出る感じがしましたし、首を痛めることもなくなりました。まだ分からないですが、今後はレース用のマウスピースも作っていこうかなとも考えています」という。

「プラスになるのではないかというものは、まずは試してみます。やれるべきことはすべてやって、悔いのないように東京を迎えたいと思っています」

“ミスター・ポジティブ”と呼べる前向き思考の持ち主。2度目の五輪となる東京の大舞台でゴールドの頂に立つため、まずは日本選手権で無双の泳ぎを見せるつもりだ。

(「オリンピックPRESS」矢内由美子 = 文)