アスリートという人種は自分の未来を“結果的に”言い当ててしまうことがある。

 その形は卒業文集に書いた「将来の夢」であったり、大きな目標を叶えるための段階を子細に書き記した「夢ノート」であったり。

 夢を空想で終わらせずに正夢に変える。目指す場所にいたるためにプロセスを積み上げる力、こうなりたいという将来の姿を具体的にイメージする力は、トップ選手になるための条件と言えるのかもしれない。

 現在女子ゴルフの世界ランキング7位にいる畑岡奈紗も、何度かそんな予知にも似た状況を発現させてきた。

 国内女子最年少となる17歳8カ月でプロ宣言した時、会見の場で掲げた目標の1つが「2年以内に米ツアー優勝」だった。そしてプロ2年目となった昨季、宣言通りに米ツアーで初優勝を含む2勝を挙げ、一気にブレークしたのである。

プロ転向時に知らなかった厳しさ。

 どれほど確信的な目標だったのか。3月中旬、地元の茨城で調整中だった畑岡奈紗は、あの時の言葉を振り返って言った。

「プロ転向した時はまだプロツアーの厳しさだったり、プロ生活もどうやっていくかも分かっていなかった。難しいとは知りながらも、東京五輪もあるので、2年以内に優勝したいと目標にしていた。最初の1年を戦ってみて最初はシードも取れなかったのですごく厳しいなとは感じていた」

 ルーキーイヤーの2017年は7戦連続予選落ちなど悪戦苦闘が続き、シードも確保できずに終わった。日本ツアーを踏まずに予選会を経て飛び込んだ最高峰の舞台は、母・博美さんに「日本に帰りたい」と漏らすほど厳しい世界でもあった。そのどん底を考えれば、翌シーズンに優勝の誓いを叶えられたことは想像を超えた飛躍だった。

「1年目で結果を出せなかった分、2年目で優勝できたのは周りから見ても結構早かったんじゃないかと思うし、自分でもそんなに早く優勝できると思ってなかったのですごく自信になった」

全米女子プロでの猛チャージ。

 世界ランキングでもトップ10入りを果たした充実のシーズンにあって、優勝以外にも大きなハイライトがあった。41年ぶりの日本人メジャー制覇にあと一歩に迫った7月の全米女子プロ選手権である。  

 最終日を9打差の23位からスタートした畑岡は、2イーグル、5バーディー、1ボギーの64と猛烈なチャージで首位に並んだ。

 朴城炫、柳簫然とのプレーオフは1ホール目で脱落したとはいえ、前週に米ツアー初優勝を飾った勢いのままにメジャータイトルにも手が届くだけの実力を示した。

3カ月前に打たれていた布石。

 このプレーオフにも布石があった。

 全米女子プロでのプレーオフからさかのぼること3カ月、畑岡はカリフォルニア州ミッションヒルズCCで行われるメジャー大会、ANAインスピレーションでのことだ。

 結果は48位だったが、自らのプレーが終わってもすぐに会場を離れることなく、三つ巴のプレーオフにもつれ込んだ優勝争いを会場に残って観戦していた。

「なかなか自分の調子が上がっていなかったけど、いつかそういう風に自分もメジャーでのプレ-オフになったときに、勝つ選手というのはどういう戦いをしているのか最後まで見ていこうと思った」

 惜しむらくはこのプレーオフが8ホール目までもつれこんで翌日順延となり、畑岡が決着の瞬間までは見届けられなかったこと。

 もしメジャーチャンピオン誕生の瞬間まで目の当たりにしていたら、より鮮明になったイメージは3カ月後のプレーオフで畑岡になにがしかの影響を及ぼしたかもしれない。

5年以内のメジャー優勝を狙って。

 大きなチャンスを逃したとはいえ、11月には日本開催のTOTOジャパンクラシックで米ツアー2勝目を挙げるなど目覚ましい活躍を見せ、日本女子No.1選手の立ち位置を確立した。

 プロ3年目を迎える今季は、プロ転向会見で語ったもう一段上の目標である「5年以内にメジャー優勝」に本格的に照準を定めていくシーズンになる。

 多忙で短いオフが明けて、すでに米ツアー3試合、沖縄での日本ツアー開幕戦に出場。まだトップ10入りはなく、畑岡自身のプレーの感覚もそうした成績に応じたレベルにとどまっているようだ。

「もうちょっとトレーニングや練習をしたかったなという状態で開幕してしまった。クラブも新しくなったりで慣れるまでには時間もかかる。4試合を戦ってみて足りていない部分を感じたので、そこを重点的に練習していきたい」

「いいプレーを4日間続けないと」

 再渡米直前の日本で過ごした時間は、仕切り直しの意味も含めて、ちょうどいい調整期間となったはずだ。KIAクラシックを経て、4月4日からは今季メジャー初戦となるANAインスピレーションが開幕する。

「シーズンが始まって結構早い段階で迎えるメジャーになる。グリーンが硬く、距離もあって、ラフも長い。いろいろな部分ですごく難しかったなという印象が昨年は強かった。全米女子プロでプレーオフをしたけど、それも最終日にいいスコアを出してやっと追いついた。

 いいプレーを4日間継続していかないと、特にメジャーでは勝てないと去年メジャーを5大会戦って感じた。まだ4日間トーナメントでの優勝もない。体力面だったり、まだすべての面で成長が必要だと思っている」

池に飛び込むイメージは完璧!?

 ANAインスピレーションでは前身大会の時代から、優勝者は18番グリーンの脇にある「ポピーズ・ポンド」と呼ばれる小さな池に飛び込むのがならわしとなっている。

 畑岡も勝てばもちろん水の中にダイブして喜びを爆発させるはずである。

「はい、イメージはできてます。そういうことも考えておかないといけないと思うので」

 頭で考えたことはいつしか現実になっていく。であれば、そのイメージもメジャー制覇への大事な足掛かりになる。
 

(「ゴルフPRESS」雨宮圭吾(Number編集部) = 文)