2012年8月。英・ロンドンの五輪スタジアム。男子400メートルリレーの決勝は、ウサイン・ボルトを擁するジャマイカが36秒84の世界新で優勝。日本も5位(後に4位に繰り上げ)に食い込み、数万人が詰めかけたスタンドはどよめきと歓声に包まれた。

 当時早稲田大2年生で同競技の日本代表だった九鬼巧(26)は、スタンドでレースを見守った。お祭り騒ぎの周囲とは対照的に、九鬼の心は冷めていた。「早く日本に帰りたかった」。陸上を始めて以来、初めて味わった「補欠」の悔しさ。何年経っても忘れることができない。

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