9・10日、国内最大規模のボルダリングコンペ「THE NORTH FACE CUP 2019(TNFC)」の本戦がClimb Park Base Camp(埼玉県・入間市)で行われ、女子は野口啓代が、男子は緒方良行が最上位カテゴリーのDivision1を制した。

 スポーツクライミング3種目のうちボルダリングで争われる本大会の本戦には、昨年から全国12のクライミングジムで行われた予選を勝ち抜いた選手たち672名が集まった。男女合わせて12カテゴリーの各予選に出場した総数は2,292人で、その数はボルダリングジャパンカップ(BJC)へのエントリー数をも上回る。大会方式もBJCとは異なり、予選、準決勝は攻略する課題の順番も選手ごとに選択でき、事前に他選手の登り方を見ることができるセッション形式で行われ、決勝は1課題のみ(男女Division1のみ3課題)で競うサドンデス形式が採用されている。

 決勝のフィナーレを飾ったDivision1、女子で栄冠に輝いたのは先日のリードジャパンカップ(LJC)でも優勝した野口啓代だった。優勝者を決する第3課題を迎えたのは、野口と伊藤ふたばの2人。互いの健闘を誓いあって先陣を切った伊藤は、パワフルな強傾斜課題に真っ向から挑むも、4手目を捉えることができない。伊藤が3+の成績で終えて登場した野口は、頂上に設けられた桜の木に到達すべく伊藤の記録を超えていく。最終的には5+まで達し、2年ぶりに女王へと返り咲いた。2位には伊藤、3位には昨年優勝の野中生萌が入った。

予選・準決勝は多くの選手が入り乱れるセッション方式で行われた。(写真:編集部)

勝負を決する決勝第3課題の頂上付近には桜の木が設けられ、大会を彩った。(写真:編集部)

 Division1男子では、決勝第2課題を終えて緒方と韓国からの招待選手、チョン・ジョンウォンが勝ち残った。第3課題、先を登る元W杯年間王者・チョンは初手のランジで体の振られに耐えきると、距離のあるゴール取りも難なく決めて一撃に成功。緒方にプレッシャーをかける。しかし大声援の中で登場した緒方は見事な一撃返しでこれに応え、勝負はスーパーファイナルに持ち越された。そして最終課題、最後まで序盤を抜け出せなかったチョンが1+で終えると、緒方は1トライ目でチョンの記録を超え、優勝を確実なものとした。今年のジャパンカップ3大会で中々結果が出ずに「大会に対してネガティブなイメージが付いていた」という緒方にとって、今大会は嫌な流れを変えるきっかけになりそうだ。3位には楢崎智亜が入った。

 会場内の桜や屋外にも登場した協賛ブース、総額200万円の賞金なども用意され、さらなる盛り上がりをみせた今大会。来年以降はどんな進化を遂げていくのか、今からが楽しみだ。

<選手コメント>

野口啓代コメント
「今年はBJCで優勝できなかったので、シーズン前に(ボルダリングの大会で)優勝して自信を付けたいと思っていたので優勝を狙っていました。TNFCはW杯シーズン前の最後の大会なのでいつも自分の調子を図れる部分もありますし、ノースフェイスさんには日頃からサポートもしていただいているので、みなさんの前で良いところを見せたいという気持ちが毎回強いです。(賞金100万円の使い道は?)全然考えてなくて、何に使おうかなって楽しく考えようと思います(笑)」伊藤ふたばコメント
「予選、準決勝はセッション方式だったので難しいところもあり、動きが良くなくてトライ数が重なってしまいましたが、決勝3課題目まで進むことができて良かったと思います。(伊藤選手にとってTNFCはどのような大会?)この大会には小学3年生からずっと出ています。小学生からトップレベルの選手まで幅広い年代の人たちが同じ場所に集まって触れ合えますし、私たちもキッズの登りを見ていると刺激ももらえたりする、とても楽しい大会ですね」緒方良行コメント
「最近は大会で中々成績が残せていなかったので、このタイミングで優勝できて自信が取り戻せたのですごく嬉しいです。今回は正直優勝とか、決勝に行きたいっていうのが全くなくて、純粋にクライミングを楽しみたい、本当にそれだけで、それが勝因かなと思います。決勝第3課題も別に一撃しなくて良いから、純粋に楽しもうと思っていました。(直前に地元・福岡に帰省していたが?)最近の大会は代表選考が絡んでくると成績にばっかり目がいって、結果が出ないという負の連鎖が続いていました。親に最近コンペが楽しくないことがあると打ち明けたら、『別に勝てとは言わないし、純粋に楽しんでくれたらそれでいいよ』って言ってくれました。正直この大会も出るか迷っていたんですよ。LJC(27位で予選敗退)の後ですごい落ち込んでいて、このまま出場してまた成績が悪かったらW杯に向けて悪いイメージのままシーズンに入ってしまうので。でも『何も考えなくて良いから楽しんだらいいんじゃない?』って気軽に言ってくれて、それで直前に戻ることを決断して出場しました。だから親にはすごく感謝していますね」チョン・ジョンウォン コメント
「TNFCには何回も参加していますが、毎回楽しめています。課題のクオリティも高いし、良い経験を積めるのでW杯前の良い練習にもなっています。来年はより良い結果を出したいです」

<Division1 決勝>

【女子】
1位:野口 啓代
2位:伊藤 ふたば
3位:野中 生萌
4位:森 秋彩
5位:田嶋 あいか
6位:菅原 亜弥
【男子】
1位:緒方 良行
2位:チョン・ジョンウォン(KOR)
3位:楢崎 智亜
4位:藤井 快
5位:原田 海
6位:井上 祐二

CREDITS

取材・文

編集部 /

写真

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