日本のアメリカンフットボールで、脳振盪(しんとう)など頭部の安全に配慮したタックルの導入が急速に進む。頭を上げて、肩で当たる「ショルダータックル」がそれだ。指導の第一人者の元米プロフットボールリーグ(NFL)コーチが来日し、日本の学生や指導者らにノウハウを伝えた。

 「ヘルメットを使ったヒットは競技本来のコンセプトではない。ヘルは頭を守る物だ。頭部傷害を軽減するため、正しいのは肩からのヒットです」。9日、東京都内の大学で開かれたアメフト講習会。NFLシアトル・シーホークス元守備コーチのロッキー瀬藤さんが、約100人の指導者らを前に語った。日系2世の瀬藤さんはショルダータックル指導の第一人者だ。母校の南カリフォルニア大で11年間指導し、10年から7年間はシーホークスで守備コーチを務めた。

 アメフト界ではかつて頭から当たりにいくことが文化としてあった。だが、激しい衝突を繰り返すことで記憶を失ったり、情緒不安定になったりする「慢性外傷性脳症」の危険性が明らかに。09年を皮切りに脳にダメージを受けたと元プロ選手らがNFLを相手に訴訟を起こし、その後、集団訴訟へと発展。頭への衝撃を軽減するため対策は急務だった。注目されたのが、ショルダータックルだった。

 瀬藤さんがいたシーホークスでは12年から採用。頭を相手の進行方向に入れるのではなく、間合いを詰めながら相手に最も近い側の足、肩でヒットするのが従来との違いだ。シーホークスでは10、11年と14回ずつあった脳振盪発生回数は、13年は9回、14年は5回に減少したという。瀬藤さんは頭から当たるよりも威力が弱まるとの指摘には「相手に近い方の足と肩でヒットするので(腰が入って)パワーが生まれる」とし、「安全でも効果がなければ、生活のかかった選手はやらない。最高の守備をつくれたことで結果に表れ、シーホークスは(14、15年には全米王者を決める)スーパーボウルにも出場できた」と話す。

 日本アメリカンフットボール協会も脳障害などの減少に効果があるとして、米国のアマチュア統括団体と連係して、17年から普及に力を入れている。すでに社会人XリーグのIBMや、学生界でも法大や東大などが導入している。

 瀬藤さんの講習会には、アメフト以外の指導者の姿も。ラグビートップリーグNECの宮尾正彦コーチは、安全と競技力向上の両面で成果を出しているアメフトのタックル技術指導に興味を持ったという。「ラグビー界でも脳振盪が深刻な問題となっている。学んだことを指導に生かしていきたい」と話す。

 瀬藤さんの次回の講習会は16日、関西学院大の学生会館新館3階「会議室9」(兵庫県西宮市上ケ原一番町)で。受講料は事前申し込み4800円。当日7千円。問い合わせは、ロッキー瀬藤クリニック事務局(電話090・2150・3048、詳細はhttps://www.facebook.com/CoachRockySeto)。(榊原一生)