27日午前、第14回ボルダリングジャパンカップ(BJC)の準決勝が行われ、男女各6名のファイナリストが決定した。 準決勝は男女ともに高難度課題がひしめいた。序盤から完登者が少ない展開で、男子では第1、第4課題、女子では第4課題で完登者が現…


 27日午前、第14回ボルダリングジャパンカップ(BJC)の準決勝が行われ、男女各6名のファイナリストが決定した。

 準決勝は男女ともに高難度課題がひしめいた。序盤から完登者が少ない展開で、男子では第1、第4課題、女子では第4課題で完登者が現れなかった。このシビアな状況で男子首位通過を決めたのは楢崎智亜。第2課題を一撃すると、苦戦した第3課題はTOP手前のホールドを飛び越して完登を決めるなど観客を沸かせ、唯一の2完登。初のBJC優勝に向けて勢いをつけた。その後に石松大晟、藤井快、杉本怜、村井隆一が続き、昨年のファイナリスト6名中5名が2年連続で最終決戦に臨むことになった。

 ファイナル行き最後の切符を掴んだのは予選首位だった土肥圭太。最終課題でゾーンを掴んだことで、18歳の若武者が初の決勝進出を決める。一方、上位6名と同じ1完登を記録しながら涙を呑んだのが、男子準決勝で最年少の川又玲瑛。15歳の世界ユース王者は、第3課題を初登するなど健闘を見せたが、最後は土肥とのゾーン獲得数1の差で敗退となった。

 結果的に2完登が決勝進出ラインとなった女子。首位通過を決めたのは、野口啓代でも野中生萌でもなく、18歳のアジアユース女王・中村真緒だった。難関第1課題を2トライ目に決めて勢いに乗ると、バランシーな第2課題、スタートから走る第3課題を連続完登。完登後の笑顔でも会場を魅了し、唯一の3完登で堂々の首位通過となった。それに伊藤ふたば、野口啓代、野中生萌が順当に続き、倉菜々子、平野夏海が初の決勝入りを決めている。特に16歳の平野は、昨年リードW杯でも決勝に進出した逸材で、決勝での登りにも注目が集まる。ともに15歳の昨年大会2位・森秋彩は7位、同6位・谷井菜月は9位で、惜しくも敗退となっている。

BJC初の決勝進出を首位で決めた中村真緒。

 

<選手コメント>


川又玲瑛コメント
「3課題目を取れたときは『やってやった』という気持ちでしたけど、それまでの流れが悪かったので決勝にいけるかというと微妙なところでした。W杯で活躍している楢崎選手だったり、藤井選手だったり、トップの層が厚くて、年齢の近い土肥選手も今大会すごく強くて僕も負けずに頑張りたいです。最後のほうまで決勝進出のラインにいて、残りたいという気持ちもあったんですけど、やっぱり土肥選手が自分より強かったなと思います。第3課題が登れたのは、これまで練習してきたことが報われてすごく自信になったんですけど、そのほかの1課題目や4課題目でゾーンが取れなかったところに詰めの甘さが出てしまいました。もっともっと練習して、またここに帰ってきて絶対に優勝したいです」
緒方良行コメント
「緩い傾斜が他の選手と比べて登れていなくて、そこの強化が必要だと思いました。でも自分の場合はメンタル面でトップの選手たちと差を感じました。昨日の予選もまさにそうで、前半焦ってしまって、手も震えてきて、今までだったら今以上にメンタルが弱かったのでラウンドの最後まで引きずってダメになることが多かった。でもそこで切り替える練習というのをここ1年やってきたので、昨日は途中で切り替えることができました。そこは去年と比べて成長できたところだと思います」
楢崎明智コメント
「決勝に残れなくて、とても悔しいです。課題の一つ一つが難しく、完登が少ない展開になっていたので、全部のゾーンを獲らないといけないと感じていました。順位はともかく、完登ゼロという結果は全然納得できていません。フィジカルの強化が課題ですね。シンプルなボルダリング能力を高めていかないといけないと感じました。続くスピード・ジャパンカップ(SJC)では絶対に決勝トーナメントに残りたい。リード・ジャパンカップ(LJC)では優勝を目指します。今日の結果を踏まえて、しっかり調整していきたいと思います」
渡部桂太コメント
「ハードな課題ではありましたが、ゼロ完登という結果は残念でした。満足のいく登りができませんでした。どんなタイプの課題が出ても対応できる準備はしてきたつもりですが、それを上回る課題が出てきたなという印象です。次のスピードとリードのジャパンカップに向けて準備をしていきたいです」
森秋彩コメント
「1課題目は最後まで諦めず登ったらできたので嬉しかったです。2課題目は走ることにギリギリまで気がつかなくて、最初に気がついていればいけていたと思います。3課題目は押す動きは得意なんですけど、体をうまく返せなくてできなかったです。4課題目は最後だからすべての力を出し切ってやろうと思って、ゾーンは取れたんですけど、そこでもすぐに落ちてしまって。でもとりあえず出し切れたのでよかったです。予選からコーディネーションが多くて、昔から苦手だったんですけど今回はできたので成長できた部分だと思います。ただ、オブザベーション能力はもっと上げていきたいと思います」
菊地咲希コメント
「とても難しい課題でしたが、(自分が)登れる課題はきちんと登れることができて、よかったです。大会全体としては楽しむことができたと思います。今年は日本代表に選出されたら、W杯で準決勝に進出することとワールドユースでのメダル獲得を目指して頑張っていきたいです」
小池はなコメント
「準決勝は楽しんで登りたいと思っていました。実際に登ってみて、ユースの課題とはまったく違う印象でした。具体的には距離とホールドの悪さですね。もっとムーブの引き出しを広げる必要を感じました。今年はワールドユースの表彰台を目指して頑張っていきたいです」

<準決勝>

男子
1位:楢崎 智亜(22/TEAM au)/2t4z 8 14
2位:石松 大晟(22/Base Camp)/1t4z 1 15
2位:藤井 快(26/TEAM au)/1t4z 1 15
4位:杉本 怜(27/マイナビ)/1t4z 5 14
5位:村井 隆一(24/千葉県山岳連盟)/1t3z 3 6
6位:土肥 圭太(18/神奈川県立平塚中等教育学校)/1t3z 5 5
――――――
7位:川又 玲瑛(15/宇都宮市立瑞穂野中学校)/1t2z 4 6
8位:緒方 良行(20/神奈川大学)/0t4z 0 17
8位:楢崎 明智(19/TEAM au)/0t4z 0 17
10位:井上 祐二(23/福井県山岳連盟)/0t4z 0 20
11位:高田 知尭(23/鳥取県山岳・スポーツクライミング協会)/0t3z 0 8
11位:渡部 桂太(25/住友電装)/0t3z 0 8
13位:島田 蒼也(24/大分山岳連盟)/0t3z 0 9
14位:北江 優弥(20/無所属)/0t2z 0 7
15位:波田 悠貴(21/埼玉県山岳連盟)/0t2z 0 9
16位:天笠 颯太(18/神奈川県山岳連盟)/0t1z 0 2
17位:樋口 純裕(26/佐賀県山岳・スポーツクライミング連盟)/0t1z 0 6
18位:野村 真一郎(22/茨城県山岳連盟)/0t0z 0 0
18位:名嶋 祐樹(20/Base Camp)/0t0z 0 0
18位:本間 大晴(18/日本大学)/0t0z 0 0

女子
1位:中村 真緒(18/青山学院大学)/3t3z 7 5
2位:伊藤 ふたば(16/TEAM au)/2t4z 2 5
3位:野口 啓代(29/TEAM au)/2t4z 2 6
4位:野中 生萌(21/XFLAG)/2t4z 3 7
5位:倉 菜々子(18/私立安城学園高等学校)/2t3z 8 13
6位:平野 夏海(16/私立国士舘高等学校)/2t2z 11 9
――――――
7位:大河内 芹香(20/長崎県山岳連盟)/1t4z 6 17
7位:森 秋彩(15/つくば市立手代木中学校)/1t4z 6 17
9位:谷井 菜月(15/橿原市立光陽中学校)/1t3z 1 12
10位:小武 芽生(21/エスエスケイフーズ)/1t2z 1 2
11位:菊地 咲希(16/東京都立世田谷総合高等学校)/1t2z 2 3
12位:菅原 亜弥(16/神奈川県山岳連盟)/1t2z 2 6
13位:小池 はな(13/埼玉県山岳連盟)/1t2z 2 9
14位:渡辺 沙亜里(28/無所属)/1t2z 5 4
15位:大田 理裟(26/山口県山岳・スポーツクライミング連盟)/0t3z 0 8
16位:金子 桃華(19/Base Camp)/0t2z 0 5
17位:工藤 花(15/山形市立第四中学校)/0t2z 0 6
18位:小倉 紗奈(14/奈良県山岳連盟)/0t2z 0 7
19位:小島 果琳(17/私立岐阜聖徳学園高等学校)/0t0z 0 0
19位:廣重 幸紀(23/福井県山岳連盟)/0t0z 0 0

※左から氏名、年齢、所属先、成績
※成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数

CREDITS

取材・文

編集部・篠幸彦 /

写真

大杉和広