南米大陸最高峰アコンカグア(標高6961メートル)の登頂とスキー滑降をめざしていたプロスキーヤー三浦雄一郎さん(86)が、同行する医師のドクターストップを受け入れ、下山した。世界に14座ある標高8千メートル峰のうち、6座を無酸素登頂した登山家の小西浩文さん(56)は朝日新聞の取材に、「死を覚悟してでも登りたかっただろうが、断念したのは大人の判断。この世にまだ仕事があるということでしょう」と語った。

 小西さんは、「標高6千メートルの空間では、滞在しているだけで体力の消耗が激しい。年齢に関係なく、いつ死んでもおかしくないほどリスクが高い」と話す。

 三浦さんは2002年にチョー・オユー(標高8201メートル)に登頂したが、その挑戦前、小西さんにアドバイスを求めたことがあるという。「そもそも心臓に持病があるのに高地へ向かうのは禁忌だ。それでも三浦さんには並外れた生命力があり、自己管理能力や事前準備、作戦の立て方がプロ中のプロだからこそ、高齢でも挑戦が可能になっている。決して無謀なことをしているわけではない」

 小西さん自身、8千メートル峰の無酸素登頂に挑んでは撤退した経験が幾度もある。「この悔しさをバネにして、近いうちにまた新たな挑戦をすると思う。三浦さんにはとことん突き詰めて冒険を続けてもらいたい」と話した。

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 こにし・ひろふみ 1962年、金沢市生まれ。15歳で本格的に登山を始める。82年のシシャパンマを皮切りに、ブロードピーク、チョー・オユー、ガッシャーブルム2峰、ガッシャーブルム1峰、ダウラギリ1峰と標高8千メートル峰の6座で無酸素登頂した。映画「植村直己物語」にも出演。著書に「生き残った人の7つの習慣」(山と渓谷社)。(辻健治)