南米大陸最高峰アコンカグア(標高6961メートル)の登頂とスキー滑降をめざしていたプロスキーヤー三浦雄一郎さん(86)が登頂を断念した。三浦さんの体調から、チームドクターが続行は難しいと判断した。

 長年にわたって三浦さんの身体を見続け、昨年6月に体力を測定した山本正嘉・鹿屋体育大教授(運動生理学)は「高所登山は生きるか死ぬかの世界。残念だが退却は仕方がない」と語った。

 酸素が薄い高所登山では心肺機能が重要になるが、三浦さんには心臓に持病があった。呼吸でどれだけの酸素を体に取り込めるかを示す最大酸素摂取量はエベレストに登頂した80歳の時と比べても6、7割に落ちていた。山本教授は「測定中も運動をすると不整脈が現れていた。平地のウォーキングがせいぜいという心肺機能だ。年相応かそれ以上に衰えていた」と指摘する。

 三浦さんの武器は足の筋力。そのため、ボンベからの酸素補給とゆっくりしたペースを守ることで心肺の弱点を補い、持ち前の筋力でスタミナを維持する戦略で頂上をめざしていた。ただ、86歳としては異例の健脚だが、80歳のエベレスト登頂時は40代相当だったものが、今はその8割まで落ちていた。

 山本教授は「心肺も足も衰えて、今回ばかりは心配していた」と打ち明ける。「三浦さんらしいどんでん返しを期待していたが」と残念がった。

 だが、86歳でアコンカグアに挑んだ今回の三浦さん。山本教授は、「高齢者が元気に暮らせることや、人間の限界を広げる大きな可能性があることを示してくれた」とたたえ、「三浦さんのことだから、また新しい挑戦をするのではないか」と話した。