吉田沙保里さんの引退会見場には、母幸代(ゆきよ)さん(64)も駆けつけ、笑顔で花束を渡した。

 吉田さんが昨年6月の全日本選抜選手権の欠場を決めた時、幸代さんは「そろそろ引退したら」と声をかけ、「東京五輪は魅力的なんだよね」と言われたという。「沙保里は11月の際くらいまで(進退を)悩んでいた」と明かした。

 引退を受け「33年間は長いようで、あっという間。五輪も世界選手権も連れていってくれ、親孝行な娘でした」とたたえた。

 吉田さんは父栄勝さんが開いた教室で3歳から競技を始めた。幸代さんは「タックルを始めて、足元でコロコロ転がっていた。兄が2人で、3番目に生まれた娘。かわいくて大事な沙保里ちゃんというのは今も変わらない」。厳格な父に対して、母親は「姉のような存在だった」と吉田さんは言う。

 14年、栄勝さんが急死した。生前、娘に「いいところでやめろ。立つ鳥跡を濁さずだ」と言っていたという。幸代さんは引退会見の前日、仏前に「長い間、頑張ったよね」と声をかけた。「主人も『もういいだろ、よく頑張ったよ』と言ったと思う」