「目標が達成出来たすごく良いシーズンでした」 2018シーズンを充実の表情で振り返ったTEAM au・野口啓代。過去にボルダリングW杯4度の年間チャンピオンに輝いた絶対女王は2018シーズン、勝ちたいと目標に立てていた、ワールドカップ八王…

「目標が達成出来たすごく良いシーズンでした」
2018シーズンを充実の表情で振り返ったTEAM au・野口啓代。過去にボルダリングW杯4度の年間チャンピオンに輝いた絶対女王は2018シーズン、勝ちたいと目標に立てていた、ワールドカップ八王子大会とアジア競技大会のコンバインド種目で見事頂点に立ち、まさに有言実行のシーズンとなった。

野口が競技をやる上で持ち歩く必須アイテム

2018年11月27日、筆者はシーズンを終えた野口にインタビューをさせてもらう機会を設けた。テーマは「野口啓代の今季を支えた“勝負アイテム”」。まずは、大会や練習、合宿などに普段から必ず持っていくものは何なのか、聞いてみた。

「競技をしにいくので、もちろんクライミングシューズ、チョークバッグ。リードとかスピードをやる場合はハーネスであったり、双眼鏡とかは必ず持っていきます。あとはタブレット。auからサポートしていただいていて、海外でタブレットが使えるようになったので、今まではwi-fiを頑張って見つけて、SNSを投稿したりしていたんですけど、今は海外でも日本にいるのと同じように、タブレットを使わせてもらっています。」

その他、ヘッドホンなどの音楽機器、手先の手入れなどに使う爪切りや瞬間接着剤なども持ち歩いているという野口だが、中でも競技をする上で大事にしているアイテムが「クラミングシューズ」だ。

「私はスポルティバというメーカーのシューズを18歳のときから履いているんですけど、靴は全部メーカーのオリジナルを履いていて、私専用に作っていただいたり、どこかをカスタマイズしてもらったりというのは一切したことがないんです。ほかのスポーツだったらありえないかもしれないですけど、市販で売られているものと全く同じものを履いていて、オーダーメイドではないですね。」

世界のトップ選手でも履くのは市販品

野口が今年の5月から履いているものが「LA SPOLTIVAのスクワマ ウーマン」2万500円(税別)で売られている市販品だ。野球やサッカーなど他競技のトップアスリートは、選手専用に作られるオーダーメイドが主流だが、一方でクライミングの場合は、野口らトップ選手でも市販されているものを使っているケースがほとんどだという。スポルティバ ジャパンの佐藤美芳さんは市販品でも、各選手にフィットする理由として、こう分析している。

「海外にもオーダーメイドの選手はいなくて、みなさんそのまま正規品を使ってるんですよね。スポルティバのブランドって、選手とかユーザーの声を取り入れて、商品を開発するということに長けているブランドで工場と本社のとなりにリノベーションセンターという商品開発にだけ力を入れる建物を建ててしまうくらい、人の声を取り入れるのがうまいので、もしかするとそういうところがオーダーメイドを作らなくてもいい靴になっているのかなと思っています。」

1足を履きつぶすまで…

今年5月に新調し、今でも同じものを使い続けているという「スクワマ ウーマン」。共に大舞台で戦うシューズを選ぶ際、野口が気にかけていることとは…。

「第一に自分の足型。足型と一緒にソールの裏の厚みであったり、あとクライミングシーンでは、普通につま先でホールドに乗ることもあるんですけど、つま先の甲の部分をホールドにひっかけたり、かかとの部分でフックしたり、乗る以外にかけるという動作もあって、そういうフックの相性もこの靴はすごく良いので、愛用しています。」

選手によっては1ヶ月で、新しいシューズに履き替える人もいるそうだが、野口は1足を練習でも、試合でも同じものを履き潰れるまで履くのだという。それだけ長く履くのにはある理由があった。

「大会用、練習用、アップ用と分ける人が結構多いんですけど、私の場合は、足の裏の感覚が馴染むのに、ある程度の期間が必要なので、1足をすごく長く履いちゃいますね。練習もリードもボルダーも外の岩場もそうですし、大会も全部一足を履いて、履き潰したらまた新しいのという形でやっているので、毎日同じシューズを履いています。」

野口が言うに、壁の中で足を使うときにいかに裸足のような感覚の状態にクライミングシューズを馴染ませていくか。それには、ある程度の期間が必要なのだという。

「だいぶシューズが痛んできたら、この大会まで履こうと決めて、その大会が終わったら1ヶ月空くから新しいシューズを履き直そうとか、そういう形でやっています。」

近年の課題の傾向と同時にシューズも変わっていった。

2018シーズンのボルダリングの世界大会を見ても、例年以上に体を宙に浮かせたまま、遠くのホールドをつかむなどアクロバティックな動きをしなくてはならない課題が多く見られた。では、以前はどうだったのか。

「今までのクライミングシーンって小さいものを踏むことが多かったんです。だからなるべく親指に力が入って1点で踏むという、そういう動作多かったですね。」

“小さいホールドに指先で乗る”という動作が多かった以前の課題から、近年は派手な動作を求められるアクロバティックな課題が多くみられるように。

それと同時にクライミングシューズの型も変わっていったという。

「私がクライミングを始めたころは小さいホールドを踏むという動作が多かったので、バレエシューズみたいに小さいものを履いて、親指1点に圧をかけて、乗るみたいな。だからちょっと痛かったんです。でも今は、ダイナミックな動きを求められるようになってきて、点で乗るというよりも面で捉える動作が、必要になってきて、指の関節が1つ1つ曲がってバネで動けるようになったので、少しシューズの中が緩くなりました。今までは、初心者とか女性の方は足が痛くて登りたくないとか、きついシューズを履きたくないとかやっぱりあったと思うので、そういった意味でも、初心者の方とか一般の方がとっつきやすくてすごくいい傾向だなと思っています。」

シューズの性能は言うことなし。1点だけメーカーにお願いしたいこと。

「もし、野口選手がメーカーにこんなクライミングシューズがあったらいいなど、オーダーをするとしたらどんな要素があるか」聞いてみた。

「スポルティバのシューズってすごく完成度が高くて、逆に自分でカスタマイズしようとすると多分ダメになっちゃうんですよね。あまり直したいなとは思わないんですけど、でもみんな同じシューズを履いていたら間違えちゃうので、自分で色とかデザインとかをオーダーメイド出来たらいいなと。性能ではなくて、デザインの部分でちょっと遊べたらなと思います。」

ちなみに、選手たちは同じ靴を履いていると、どれが自分の靴なのかわからなくなるらしく、自分でマジックペンを使って、絵を描いたり、名前を書いたりしているらしい…。

TEAM au野口啓代。2019年は、8月に日本初開催となる世界選手権が行われるなど、彼女にとって、大事な大事な1年となる。

まずは、1月のボルダリングジャパンカップで連覇を達成し、幸先のいいスタートを切りたいところだ。

 

■TEAM au

TEAM au は、日本におけるスポーツクライミングを、子どもから大人まで多くの人が楽しめるメジャーなスポーツとして発展・普及させるべく結成されました。チームメンバーは、すでに国内外の大会で輝かしい実績を残し、世界の頂点をねらう実力派クライマーで構成されています。2016年8月、TEAM auは、文字通り“壁を越える”為の最初の一歩を踏み出しました。今後は、クライミングを愛する全ての人とともに、様々な活動を通じて日本のスポーツクライミングシーンを牽引し、盛り上げていきます。

詳しくはこちら(https://climbing-au.jp/

大会ハイライト動画はこちら(https://sportsbull.jp/climbingtv/