日本のスキー・ジャンプ界に新しいエースが誕生した。欧州伝統のジャンプ週間で6日(日本時間7日)、史上3人目の4戦全勝を決めた小林陵侑(りょうゆう、22)=土屋ホーム。口数の少ない天才肌の選手は試練も乗り越え、日本勢21季ぶり2人目の総合優勝を果たした。

 岩手県出身。兄の潤志郎(27)=雪印メグミルク=や姉の諭果(ゆか、24)=CHINTAI=、弟の龍尚(たつなお、17)=盛岡中央高=の4人きょうだい全員がジャンパーという家庭で育った。父の宏典さん(54)によると「4人の中で最も感覚に優れている」。小学校に入学する前、小さな台で初めてジャンプしたとき、きちんと踏み切って上に飛んで周りを驚かせたという。

 一方で、話すのは得意ではない。「はい」「そうっすね」。報道陣によく発する言葉は、この二言。笑顔は人なつっこいが、心境が表情に出ることはほとんどない。ヘルメットなどのお下がりをもらって使っている龍尚は「多くは話さないが、ひと言、ひと言を良くかんで理解すれば、ためになることを言っている」。

 盛岡中央高時代の小林陵をスカウトしたのは、土屋ホームで監督を兼任する葛西紀明(46)。2季前のワールドカップ(W杯)で30位以内に与えられる通算得点がゼロで憔悴(しょうすい)していた教え子に、「お前、ノーポイントだな」とあえて厳しい言葉をぶつけたときの姿が忘れられない。「顔に出していなかったけれど『悔しいです』という感じだった」

 それが今季のW杯では11試合戦って8勝目。日本男子初となるW杯総合優勝も視野に入ってきた。(勝見壮史、笠井正基)