(ボクシング・スーパーフライ級王座決定戦)

 ともにミニマム級から一つずつ階級を上げ、3階級を制した両者。終始、ハイレベルな攻防が続いた。全12回を終えると、ニエテスは両手を上げ、井岡はうなずいた。接近戦での手数、打ち終わりの有効打の数で及ばなかったか。判定は1―2の末、井岡は4階級制覇を逃した。

 3階級制覇を果たしてから、約3年8カ月。当時は叔父の弘樹氏が成し遂げられなかった「井岡家の夢」を追っていた。では、いま現在戦う理由は何か。前日の計量後、そう聞かれた井岡は答えた。

 「決意、挑戦」

 前回の世界戦後は、紆余(うよ)曲折をたどった。

 2017年4月にWBAフライ級で5度目の防衛に成功した後、父が会長を務める大阪市内の所属ジムから、拠点を東京に移した。6年連続で戦ってきた大みそかの舞台をどうするのか。答えが出ないまま、11月に王座を返上。年末に引退を表明した。

 復帰の決め手は18年2月、米国で見たボクシングの試合だった。興行主に会い「新たな環境で、新たな挑戦をしたい」という思いが、ふつふつと湧いた。このときを境に体を動かし始め、本格的な練習にも取り組むようになった。

 誰もやったことがない世界に足を踏み入れ、「唯一無二の存在」を理想とする井岡。日本人初の称号を得ようと果敢に挑んだが、偉業達成はならなかった。(井上翔太)