水泳の世界選手権の会場に、必ずといっていいほど置いてあるものがある。乳酸菌飲料の「ヤクルト」の巨大ボトルだ。同社が2005年に国際水泳連盟(FINA)とスポンサー契約を結んで14年。12月に28年までさらに10年契約を更新したと発表した。長期にわたって水泳の大会を支援する理由とは。

 16日まで中国・杭州であった25メートルプールで競う世界短水路選手権。選手たちがメダルをもらう表彰台のすぐそば、ひときわ目立つ位置にヤクルトの巨大ボトルはあった。高さ180センチ、直径89センチ。ものめずらしいのか、観客席からスマートフォンで写真を撮る外国人の姿も見られた。

■「今ではすっかり定着」

 「最初は『あれ、なんだ?』と思われていたかもしれませんけれど、今ではすっかり定着しました」。ヤクルト本社広告部の志村真部長は言う。

 日本のスポーツ界ではプロ野球のイメージが強いヤクルトが、FINAとパートナー契約を結んだのは05年、カナダ・モントリオールであった世界選手権前だった。当時、FINAはスポンサー探しに苦しんでおり、大会開催地の企業を中心とした短期契約を繰り返していた。

 「FINAは水泳を通じて、我々は乳酸菌を通じて、世界の人に健康を届けるのが理念。一致するところも多く、声をかけていただいた」と志村部長は話す。水泳は赤ちゃんからお年寄りまで親しめる生涯スポーツで競技人口も多く、FINAの加盟国・地域は今、200を超える。社としてグローバル戦略を考える上でも、メリットは大きいと判断したという。

■口コミで広まる

 日本ではおなじみの商品だが、カナダでは販売しておらず、巨大ボトルを見て不思議に思う人たちも多かった。「おなかにいい飲み物」というのを認知してもらうため、試飲コーナーを作ったり選手に提供したり。販売拠点のあった東南アジアや中国ではもともと飲む習慣があり、「選手の口コミを通じて理解が深まった」と志村部長は話す。

 こうしたグローバル戦略の結果、06年はアジアを中心に26だった販売国・地域が、欧州や中東にも広がって38まで増えた。イタリアに進出した09年にあったローマでの世界選手権ではヤクルトだけで4万本近くを提供し、認知度を高めた。

 06年3月時点で2396万本だった1日の販売本数は、今では約1・5倍の3952万本に。そのうち、海外で飲まれる本数は1540万本から2983万本と約2倍に増えた。「単純に、大会で海外の人に『おいしい』と言ってもらえる。それだけで、大きな意味はある」と志村部長は語る。

 21年に福岡で開催される世界選手権でも協賛を予定している。東京五輪が開催される20年度までに1日4350万本の販売を目標にしているという。(照屋健)