15日にあったラグビーのトップリーグ決勝を兼ねた日本選手権で、神戸製鋼が18季ぶり10度目の日本一に輝いた。トップリーグでは初年度以来、15季ぶり2度目の優勝。「いいチームだ」。感慨深い思いを持つのが、1983年度に初めて関西社会人Aリーグ(当時)を制した時の主将、安積(あづみ)英樹さん(63)だ。

 同じ日程で行われたトップリーグ下部にあたるトップウェストの入れ替え戦の運営を担当していたので東京・秩父宮ラグビー場に駆けつけることはできなかった。ただ、帰宅後に映像をみて感じた。「選手が楽しそうにプレーしていた」

 約1カ月前、神戸製鋼OBの忘年会が大阪・難波のジンギスカン屋であった。日本選手権7連覇が始まる88年度より前の、60歳前後のメンバーを中心に30人ほどが集まった。

 例年の忘年会と違ったのはチームの福本正幸チームディレクター(51)が世界的スターでもあるSOダン・カーター(36)や主将を務めるSHアンドリュー・エリス(34)とフランカー前川鐘平(30)ら現役選手を連れてきたことだ。

 どういうやりとりがあったのかは覚えていないが、気付くと机を挟んで向かい側にカーターが座っていた。チームの歴史を知りたいのだという。「僕は7連覇の時の選手じゃないよ」と伝えたが、「関係ない」という。

 いっぱい話した。当時は部員の誰もが午前9時から午後5時半まで会社員として仕事を勤めあげ、ラグビーとの両立に誇りを持っていた。繁忙期は練習後の午後9時を過ぎてから会社に戻り、残業をした。当時のグラウンドは芝でなく土で、雨が降ればどろどろだった。クラブハウスは木製で、すきま風吹く「掘っ立て小屋」のような建物。そんな中で初めて関西Aリーグを制して礎を作った。

 カーターは真剣なまなざしで聞いてくれた。黄金時代だけを「歴史」ととらえていない。それがうれしかった。カーターに促されて2人で記念写真におさまった。

 実はそれまで、安積さんらの年代のOBと現役選手が交流する機会がほとんどなかったという。今季就任したウェイン・スミス総監督(61)が「歴史を知ること」を重要視。福本チームディレクターが会に選手を連れていくことを企画した。

 安積さんは7連覇が始まる2シーズン前の86年度、31歳で引退している。その後にチームは黄金時代を築くが、自身がすぐ東京に転勤になった。直接に部と関わることが少なくなったと同時に「自分自身が日本一になりたい思いが残っていて、『うらやましい』という気持ちがあったのかもしれないね」と振り返る。

 しかし今は違う。「子どもたちくらいの年代の選手たち。改めて神戸製鋼が自分たちのチームだと思えた。心から応援できる」と安積さんは続けた。

 今季の神戸製鋼は応援してくれる会社関係者、神戸市民ら周囲に思いをはせることに重きを置いた。だからこそ、見えぬ力に支えられたのかもしれない。(有田憲一)