障害者スポーツ専用の体育館「日本財団パラアリーナ」(東京都品川区)が6月にオープンし、2020年東京パラリンピックをめざす選手の練習や競技の普及・啓発活動などで使われ、高い稼働率を見せている。施設のそこかしこに利用者へ配慮した工夫が盛り込まれ、草の根の障害者スポーツ普及へのヒントが詰まっている。

 日本財団パラリンピックサポートセンターが整備し、「船の科学館」敷地内に完成した。

■使いやすさ徹底

 障害者が使いやすい造りを徹底している。

 メインフロアはバスケットコート2面分。車いすバスケット、車いすラグビー、ボッチャのラインが既に引かれ、すぐ練習できる。コートの端と壁の間は広くとっている。

 空調は、汗をかけない選手のために地下鉄ホームにあるものと同じ強力な冷房をつけた。床は、車いすごと転倒しても傷つきにくいよう、ワックスが二重に塗られている。車いすラグビーで滑り止めに使う松ヤニは、運営スタッフが専用のクリーナーで拭き取る。

 更衣室のロッカーは、車いすで近づけるよう下部が空いた構造に。シャワーは車いすに乗ったまま浴びられる。トイレは、トイレットペーパーの位置が左のものと右のものの両方があり、腕の不自由な人は使いやすい。

 出入り口は、扉を上からぶら下げる仕組みで、床にレールがなく、車いすでも通りやすい。90センチと幅広くして、タイヤがハの字に開いた競技用車いすが出入りしやすいようにした。

 廊下やミーティングルームは、床が黒、壁が白。弱視の人が壁の位置を把握してぶつかりにくいようにする工夫だ。

 同センターでパラリンピック競技の選手をサポートしてきた金子知史さんによると、「車いすで床が傷つく、そもそもバリアフリーになっていない、などの理由で、一般の体育館での練習が難しいケースが少なくない」という。「車いす競技のクラブチームが3時間かけて練習場所に通っていた例もある」

■利用は無料で

 そんな中、パラアリーナは貴重な存在となった。競技団体に登録されていれば個人でも練習でき、利用は無料。「パラリンピック競技の代表やクラブチームの練習、合宿を中心に、週末はほぼ100%、平日も90%程度の利用率」という。

 工費は8億円。施工した建設会社のJSCによると、「アリーナの規模からすると20億円はかかるが、パラリンピック競技の練習のための設備に絞ったことで安くできた」という。

 とはいえ、障害者スポーツ専用の体育館を各自治体がつくるのは、ニーズとのバランスからも難しい。金子さんも「こうしたアリーナはトップクラス対象に、全国に10カ所程度あればよく、むしろ草の根では健常者と障害者が交じり合い、障害者がスポーツを楽しめる工夫を生んでほしい」と言う。

 パラアリーナは、既存の体育館でも改修や運営の工夫で、障害者もスポーツを楽しめるようにできるヒントを発信するモデルケースとも位置づけており、これまで多くの自治体が視察に訪れている。金子さんは「20年パラリンピックをトップレベルのための大会にするともったいない。障害者スポーツの裾野を広げることが、より大事なレガシーでは」と提言している。(編集委員・中小路徹)