(16日、フィギュアスケート・ロシア杯男子SP)

 冒頭の4回転サルコージャンプが、今季世界最高得点への号砲だった。4・30点の出来栄え点(GOE)を引き出した羽生結弦(ANA)の完璧な着氷に、会場が一気に沸き立つ。歓声を追い風に、ステップもスピンも全て最高のレベル4を記録。隙のない演技で、息をのむようなショートプログラム(SP)を完成させた。

 グランプリ(GP)シリーズ今季初戦は、2週間前の第3戦フィンランド大会だった。この時も、今季世界最高得点をマーク。だが、SPを終えた羽生は満足していなかった。「ジャンプの出来に関して、まだできるところがたくさんあった」。だから、今大会のテーマは明確だ。「(SPもフリーも)あの時以上のものを見せられるように」

 鍵は、「休憩に力を入れた」という羽生の述懐にある。フィンランド大会後に調子を落としたが、練習の密度を自分で考えて調整し、復調を遂げたという。「良い経験をさせてもらった」。言葉通り、「あの時以上の」演技には王者のすごみがのぞいた。唯一、後半の連続ジャンプがわずかにぐらついたが、「ノーミスと胸を張って言えるくらい。この構成では実質ほぼマックス(の点数)」。普段は自分に厳しい23歳は白い歯をこぼした。

 「本当に、このリンクにはいろんな思い出がある」と語る通り、会場のモスクワ・メガスポルトには、特別な記憶が詰まっている。シニアデビュー2年目の2011年11月、16歳だった羽生がGPシリーズ初制覇を飾ったのが、この場所だった。あれから7年、今回が4度目のロシア杯だ。今回優勝すれば、節目のGP通算10勝目(ファイナルを含む)。高橋大輔(関大ク)を抜き、日本男子単独最多となる。

 17日のフリーには、ファイナルを除けばGPシリーズ自身初めての連勝もかかる。だから、気は抜かない。「SPとフリーをそろえて、なんぼ。そろえられるように、明日またしっかり」。表情がまた、引き締まった。(吉永岳央)

■「結果としてノーミス」

〈男子SP首位の羽生〉 「まあなんとか、結果としてノーミスと言っていいのではないか。準備段階で反省点があって、不安が大きかったので、できてよかったとほっとしている」