腹からばたりと落ち、稀勢の里の顔がゆがんだ。はたき込まれ、今年の初場所と同様に初日から貴景勝に土をつけられてしまった。

 のっけから突き押しの応酬になった。いや、突き押し専門の貴景勝の相撲に引きずり込まれた。「ムキになって突き出そうとしたところにわながあった」とは、阿武松審判長(元関脇益荒雄)の分析。腰が浮き、足が送れない。ぱっと右からのはたきを食ったのは、そんな瞬間だった。

 8場所連続休場明けの秋場所は10勝を挙げ、祝賀ムードに包まれた。とはいえ、横綱審議委員会には、今回負けが込めば、また進退問題が浮上する、との見方が残る。貴景勝とは2勝2敗。秋場所は勝ったものの押し込まれて苦戦しており、稀勢の里にとって今場所を占う試金石といえたが――。

 貴景勝にも引けない事情がある。師匠だった貴乃花親方(元横綱)の退職で、千賀ノ浦部屋に移った。周囲の心配を振り払おうと燃えていた。「場所が始まれば、もう強くはならない。持てる力を出し切るだけ」

 稀勢の里には、貴景勝のような開き直りにも似た心持ちが必要かもしれない。白鵬、鶴竜が休場し、気がつけば一人横綱。この日の朝は人々の視線を避け、けいこ場のシャッターが降ろされてから汗を流した模様だ。こうした姿勢は福岡入りして初めて。集中するのは悪くないけれども、また秋場所のように張り詰めてしまっては、まずい。(隈部康弘)

     ◇

 ○豊ノ島 13場所ぶりに十両に復帰した場所で白星スタート。「土俵入りの時めちゃくちゃこみ上げるものがあった。泣いていい場所なら泣いていた」

 ●栃ノ心 立ち合いから腰高のまま押し出され完敗。「もったいないよ。体が起きちゃった」

 ○高安 左を差しながらの寄りで危なげなく快勝。「前に出て落ち着いて取れた。明日にしっかりつなげていきたい」

 ○安美錦 西十両2枚目。10月に40歳になった。「あと何回(土俵に)立てるかわからない。1回1回を大事にね。悔いを残さないように準備したい」

 ●錦木 227キロの逸ノ城に寄り切られる。「重たい。途中まではイメージ通りだったですけど、土俵際が……」

 ●御嶽海 大関昇進を目指す場所で黒星スタート。「(緊張は)特にない。いつも通りです」