11日、大会最終日を迎えたアジア選手権倉吉2018で3種目複合のコンバインド決勝が行われ、男子は楢崎明智、女子は野口啓代が制してアジア選手権の初代王者に輝いた。また、女子2位に野中生萌、3位に伊藤ふたばが入って表彰台を日本勢が独占。男子でも2位に杉本怜が入った。

 先に行われた男子決勝は、第1種目のスピードから意外な展開に。1位を獲得したのは敗者復活からの下剋上を決めた杉本怜。1回戦に敗れるものの敗者の中で最速だったため次ラウンド進出を決めると、格上とのセミファイナル、日本人対決となったファイナルで立て続けに相手がつまづき、大きなミスなく着実に登った杉本がトーナメントを制した。2位にはセミファイナルで6秒94の自己ベストを出した楢崎明智が付けた。

 第2種目のボルダリングは、第3課題を終えて全完登の日本人4名が1位争いをリードする。勝負を決する最終課題は2段階で飛びつくスタートからのダイナミックなムーブを攻略できるかがカギとなった。高田知尭、藤井快が何度トライを重ねても飛びついた先を止められずノーゾーンで終え、完登者が現れないかと思われたが、5番手の楢崎が長いリーチを活かして3トライ目に攻略。何とかTOPにたどりつくも制限時間内に間に合わなかった杉本を押さえ、唯一の全4完登で1位を獲得した。これで交互に1位、2位となった楢崎と杉本が2ポイントで並んで首位に立ち、15ポイントで3位の藤井がすでに2人を上回れないことから、優勝のゆくえは両者に絞られた。

 順位が上の方が優勝となる最終種目のリード。少しでも高度を伸ばして楢崎にプレッシャーをかけたかった杉本は最終面の33+まで到達する。そして最後に登場した楢崎は、スムーズに高度を上げていき、杉本を越える34+をマーク。わずか一手の差が明暗を分け、楢崎がアジア選手権のコンバインド初代王者に輝いた。3位にはリードで1位を獲得したパン・ユーフェイ(中国)が逆転で入った。

第4課題を唯一完登してボルダリング1位を獲得した楢崎明智。

男子表彰台=(左から)杉本怜、楢崎明智、パン・ユーフェイ(中国)。

 一方の女子決勝。第1種目スピードは、きのう日本女子初の8秒台をマークした野中が優勢に進める。9秒32、9秒15と安定してタイムを計測しファイナルまで勝ち進むと、最後はまたもや日本記録更新となる8秒57をたたき出して1位を獲得した。2位には韓国のサ・ソル、3位には野口啓代との対決を制した伊藤ふたばが入った。

 野中は1位の勢いそのままに第2種目ボルダリングでも躍動。3連続での一撃で、第4課題を2トライ以内に登り切れば早くも総合優勝を決められる状況に持っていった。しかし、強度の高い最後の難関を攻略することができず、この種目の1位を野口に明け渡してしまう。これで優勝の芽は総合首位の野中(2ポイント)、2位野口(4ポイント)、3位伊藤ふたば(9ポイント)、4位サ・ソル(10ポイント)まで残ることになった。

 混戦模様となって迎えた最終種目のリード。優勝には1位が必須の3番手サ・ソルが28+で最高高度を更新すると、4番手の伊藤は32でその上を行く。そして5番手はボルダリングで息を吹き返した野口。誰よりも早いペースで最終局面に到達するとそのまま最後まで登り切り、完登を待ち望んでいた観客からの大声援に笑顔で応えた。これで最低でも完登が必要となった野中だったが、最後は26+で力尽き、野口の優勝が決定した。

 16年ぶりの自国開催となったアジア最高峰の戦いで5つの金メダルを含む15個のメダルを獲得した日本勢。特に2020年東京オリンピックの実施フォーマットであるコンバインドで2つの金メダルを手にしたのは、今後に向けても大きな収穫となったはずだ。

最終種目のリードで完登する野口啓代。



楢崎明智コメント
「『嬉しい』としか言えないくらい嬉しいです。最近調子が良くなかったスピードや、苦手な課題が何個か混ざっていたボルダーでは、皆さんの声援が力になって頑張ることができました。今シーズンは怪我で始まりいいスタートではなかったんですけど、兄(智亜)に支えられ、一緒にトレーニングをして頑張ってきたので最後の最後に優勝できて良かったです。今回の優勝で来年の世界選手権に出ることができると思うので、それまでにもっと強くなっていたいです」


杉本怜コメント
「正直この結果には驚いています。何といってもスピードで1位を取れたことがびっくりでした。ボルダリングの最終課題は明智君が成功していたのでプレッシャーは大きかったです。結果的には(完登したが時間切れとなったムーブの)初手を止めるという選択が遅れてしまいました。リードはアジア選手権へのトレーニングが足りていないこともあり持久力不足が露呈してしまった。大差ないかと思うかもしれませんが、その一手には全く世界が違うくらい、計り知れない差が詰まっています。コンバインドは決勝方式になると(ミスなどの)不確定要素も増えてきて自分にもチャンスがあると分かったので、これからも諦めずに食らいついていきたいですね」


野口啓代コメント
「良い形で今シーズンを締めくくることができました。3種目が続くコンバインドでは最後のリードで良い登りができない大会が続いていて、今回はしっかりと調整もしてきたので、完登ができて最高の終わり方になりました。今年は本当に試合数が多くて、世界選手権やアジア競技大会、アジア選手権と大切な大会も多かった中で怪我なく終えられたことは良かったと思います。ただ世界で戦うにはまだまだ課題がたくさんあるので、一つづつクリアして、今度はアジアではなく世界のコンバインドでも結果が出せるようにしていきたいです」


野中生萌コメント
「(第1種目のスピードでは)今日のアップで調子が良かったので、あとはファイナリストの中で一番早い記録を持っているという状況で、しっかり勝ちに行けて良かったです。ボルダリングの最終課題は(負傷している)右肩に負担がくる課題だったので、もう最後は無理せずに辞めてしまったんですが、3課題目まではすごい緊張感がある中全て一撃できました。そこは自分のメンタル的なところに打ち勝てたので、かなりの収穫でした。コンバインドの大会も多いわけではないので、こういった期間の長いタフな戦いだったり、緊張感だったりの経験ができたことはとても良かったと思っています」


伊藤ふたばコメント
「スピードで自己ベスト(9秒61)が出て良いスタートを切ることができましたし、ボルダーは途中から追い上げることができて、最後のリードでも良い登りができたので満足しています。アジアで3位でしたが、世界選手権になるとさらにレベルが上がると思うので、もっと全体的な向上が必要だと感じています」

<男子決勝>

1位:楢崎 明智(19)
   4ポイント(S 2位/B 1位/L 2位)
2位:杉本 怜(26)
   8ポイント(S 1位/B 2位/L 4位)
3位:パン・ユーフェイ(18/中国)
   20ポイント(S 4位/B 5位/L 1位)
4位:藤井 快(25)
   45ポイント(S 5位/B 3位/L 3位)
5位:チュン・チー・ショージ・チャン(23/香港)
   90ポイント(S 3位/B 6位/L 5位)
6位:高田 知尭(23)
   144ポイント(S 6位/B 4位/L 6位)

<女子決勝>

1位:野口 啓代(29)
   4ポイント(S 4位/B 1位/L 1位)
2位:野中 生萌(21)
   10ポイント(S 1位/B 2位/L 5位)
3位:伊藤 ふたば(16)
   18ポイント(S 3位/B 3位/L 2位)
4位:サ・ソル(24/韓国)
   30ポイント(S 2位/B 5位/L 3位)
5位:キム・ジャイン(30/韓国)
   120ポイント(S 5位/B 6位/L 4位)
6位:エレン・レカピ(29/イラン)
   144ポイント(S 6位/B 4位/L 6位)

※上段左から氏名、年齢、所属国
※下段左から各種目を掛け合わせた複合ポイント、各種目順位(S=スピード、B=ボルダリング、L=リード)

CREDITS

取材・文

編集部 /

写真

窪田亮