9日、鳥取県で開催中のアジア選手権倉吉2018ではボルダリングの男女決勝が行われ、男子は楢崎明智が、女子は伊藤ふたばがそれぞれシニアの主要国際大会初となる優勝を果たした。女子は2位に倉菜々子、3位に菊地咲希が入り、10代の日本人選手が表彰…


 9日、鳥取県で開催中のアジア選手権倉吉2018ではボルダリングの男女決勝が行われ、男子は楢崎明智が、女子は伊藤ふたばがそれぞれシニアの主要国際大会初となる優勝を果たした。女子は2位に倉菜々子、3位に菊地咲希が入り、10代の日本人選手が表彰台を独占。男子は2位に渡部桂太が入った。

 2002年の富山大会以来16年ぶりとなる日本開催となったアジア選手権で、10代の日本人選手が男女アベック優勝を決めた。先に行われた男子決勝は、パワーが要される第1課題、バランシーな第2課題と対照的な課題が続き、これを切り抜けたパン・ユーフェイ(中国)、楢崎明智、渡部桂太の3人が序盤の優勝争いで優位に立つ。

 勝負を分けたのが地ジャンスタートの第3課題。力で抑え込むゴール取りに選手たちが苦戦する中、楢崎が4トライ目に攻略してこの課題唯一の完登を決め、単独首位に躍り出た。登り切れば優勝の最終課題は、連続して手を出すコーディネーションの最後の一手がなかなか止まらず苦戦。「登れば優勝ということはわかっていたので、すごくプレッシャーにもなっていた」というが、残り1分を切った7トライ目で難所を克服し、優勝をその手に掴んだ。

男女12名のファイナリストの内、日本人が9名を占めた。

コンディション不良で欠場した兄・智亜の不在を感じさせない登りを披露した楢崎明智。

野口啓代、野中生萌らを抑え、国際大会初優勝を決めた伊藤ふたば。

 続けて行われた女子決勝は、第2課題を終えて連続一撃の野口啓代、菊地の2人がリードし、伊藤がわずか1アテンプト差で追いかける展開に。ホールド間に距離のある第3課題、1番手の伊藤が2アテンプトでまとめて後続にプレッシャーをかけると、続く3人は誰も登れず。5番手の菊地は3トライ目で完登したが、最後の野口はゾーン獲得がやっと。これで伊藤が2位に、菊地が首位に浮上した。

 迎えた最終課題、バランシーな出だしを2アテンプトで突破した伊藤はゾーンを獲得するも、その後の体の振られに耐えられずフォール。3完登4ゾーンで結果を待つこととなった。2トライ以内にゾーンを獲得すれば優勝の菊地だったが、リーチが足りずにゾーンさえ遠く、3完登3ゾーンで競技終了。伊藤の暫定首位は守られた。最後に登る野口は2アテンプト以内の完登で逆転優勝が可能だったが、最後までゾーン手前の足場が安定せずに2完登3ゾーンで終える。この結果、各課題を少ないアテンプトで収めた伊藤が見事に初優勝。2位には難関の最終課題を登り切って観客を沸かせた倉が逆転で入り、3位に菊地が入った。野口はまさかの失速で5位、今季W杯年間女王の野中は4位で終えている。

 5名の日本人選手が表彰台に上がり、自国開催でさすがの強さを見せた日本代表。中でも、いずれもシニア主要大会の自己最高順位を更新した10代選手たちの躍動は、多くの観客の印象に残ったことだろう。

楢崎明智コメント
「最終課題は世界選手権でみんなが登れた課題を登れず予選落ちしたときのものと似ていて不安でしたが、その結果を引きずらないように努めました。今回の優勝は嬉しさがじわじわと湧いてきていますが、今すごく喜んでしまうと明日のモチベーションに関わってくる(リード決勝)ので多少気持ちを抑えています。この優勝を来シーズンへつなげていきたいです」


渡部桂太コメント
「最終的には優勝できる大会だったと思いますが、コンディショニングの詰めが甘かった。そんな中である程度の力を出せたとは思いますが、特に登れなかった第3課題はいまいちムーブを読み切れない部分があり、モヤモヤが残る出来でした。今シーズンの締めくくりとしては悪くありませんが、満足はしていません。また来シーズンに向けて頑張ります」


伊藤ふたばコメント
「W杯で勝てず、世界選手権には怪我で出れず悔しい気持ちばかりだったので、久しぶりの優勝が嬉しいです。(国際大会への出場権に影響する)IF枠を持っていなかったので来年にも繋がる優勝になりました。(今日午前の)スピードで決勝に残ることができ、そのいい流れ、いい精神状態でボルダリング決勝に挑めたことのが良かったと思います。今回の優勝だけで野口選手、野中選手との距離が縮まったとは思っていないので、これから冬のトレーニングを積んで来シーズンのW杯や世界選手権で勝てるようにしていきたいです」


倉菜々子コメント
「今回のアジア選手権では正直決勝に残っただけで嬉しくて、まさか2位を取れるとは思わず満足しています。表彰台が全員高校生で、野口選手、野中選手に勝てたのは初めてだったのですごく嬉しいです。今年からW杯に参戦して、最初のヨーロッパラウンドでは予選も通過できませんでしたが、中国ラウンドくらいから準決勝に残れるようになって良い経験が沢山でき、それが今回の結果にも繋がっていると思います。自分はコーディネーション系やガンガン行く系のムーブが得意。今回の1課題目みたいに、地味に動くのは苦手なので、少しづつ克服していきたいです」


菊地咲希コメント
「決勝前は予選(2位)から順位が落ちるかもって思っていましたが、自分に合っている課題だったので想像以上の成績を出せました。3位になれて嬉しかったんですが、最後の課題が登れずにもっと上に行けなかったのは悔しかったです。W杯ではなかなか準決勝にも行けなくて良い結果を出せず、直前のアジアユースの結果も良くなくて、今年は成長できなかったなと思っていましたが、今回結果が出て少しは成長できたかなと思いました」 

<男子決勝>

1位:楢崎 明智(19)/4t4z 13 13
2位:渡部 桂太(25)/3t4z 7 8
3位:パン・ユーフェイ(18/中国)/3t4z 9 11
4位:藤井 快(25)/2t4z 3 6
5位:杉本 怜(26)/2t3z 5 10
6位:チェク・ヘイ・ホー(20/香港)/0t2z 0 8

<女子決勝>

1位:伊藤 ふたば(16)/3t4z 5 7
2位:倉 菜々子(18)/3t4z 9 7
3位:菊地 咲希(16)/3t3z 5 5
4位:野中 生萌(21)/2t4z 6 7
5位:野口 啓代(29)/2t3z 2 6
6位:エラン・レカビ(29/イラン)/1t4z 1 15

※左から氏名、年齢、所属国、決勝成績
※決勝成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数

CREDITS

取材・文

編集部 /

写真

窪田亮