ラグビー世界最強のニュージーランド(NZ)代表オールブラックスといえば、試合前に士気を鼓舞する踊り「ハカ」が有名だ。3日にNZと対戦した日本代表はハカの迫力に圧倒されないように、ある「対策」を講じていた。

 「普通に見ます」。NZ出身で日本主将のFWリーチは試合前日、ハカへの対応を報道陣に問われてうそぶいた。実はチームメートにこう助言していた。「後ろの方で踊る選手を見よう。大したことないから」

 この一戦、NZは主力を休ませ、若手を多く登録した。キャップ(代表戦出場数)を持たない選手が先発に2人、控えに6人。彼らにとって、伝統の黒いジャージーに身を包み、大観衆の前でハカを披露するのは初めてだ。

 周りは気を使い、経験の浅い選手を目立ちにくい後列に配する。緊張しながら声を張り上げて舞う後列の姿を見れば、日本の選手ものまれることはない――。そうリーチは考えた。

 実際はどうだったか。

 日本選手はリーチを中央に肩を組み、NZ選手の間近に並んだ。先発最年少だった24歳のFW姫野は当初、リーチの指示通りに「後ろの選手を見てリラックスしようと思っていた」。NZの選手が腰を落とし、太ももを打ち鳴らし始めると感じた。「やっぱり、前と後ろでは(威圧感が)全然違う」

 自然と心が熱くなり、気がつくと「方針変更」していた。「負けたくない。前の選手の気合を目に焼きつけてやれ」。無意識のうちに、ほえていた。

 途中、リーチも高ぶりを抑えきれなくなったのか、対抗するかのごとく1歩、2歩と前ににじり寄った。チームメートも続いた。SH流が振り返る。「リーチさんが『行くぞ』と。ハカに気おされるとか、そういうのはなかったですね」

 申し合わせ通りにハカ対策が遂行されたわけではないが、日本が「立ち合い負け」することはなかったようだ。前半4分には両チームを通じて最初のトライを挙げ、6度目の対戦で初めてNZからリードを奪った。

 ただ、勢いは続かなかった。終わってみれば31―69の大敗だった。(中川文如)