フィギュアスケート男子の2014年ソチ五輪代表で、プロスケーター引退を表明していた町田樹(たつき)さん(28)が6日、さいたま市であった国際大会「ジャパンオープン」とアイスショー「カーニバルオンアイス」にゲストとして出演し、最後の演技を披露した。ショーでは「かけがえのない作品を滑れたことを誇りに思っている」と1万3千人の観客にあいさつした。

 独特の語り口から「滑る哲学者」とも言われた町田さん。ショーでは白い衣装に身を包んで白や青のスポットライトに照らされ、「人間の条件」をテーマにした約8分間の作品を演じた。ジャンプやスピンを組み合わせ、不条理な人生を生きていく人間の尊厳を表現した。演技後は観客の拍手が鳴りやまなかった。

 引退セレモニーでは、振付師で町田さんのプログラムを手掛けたステファン・ランビエルさん(スイス)が日本語で「お疲れ様」と声をかけた。町田さんは約4分間あいさつし、「私一人では創作を生み出せなかった。ここまで平坦(へいたん)な道のりではなかったが、多くの方々に支えられながら、自分の足で前に進んでいた。本当に幸せなこと」と感謝の気持ちを述べた。

 フィギュアスケートの未来にも触れた。「フィギュアスケートは他者に向けての表現活動。オーディエンス(観客)の皆さんが必要。フィギュアスケートをブームでなく、文化に変えていってほしい。それが私の最後の願い」と語った。

 今後は早大大学院生や大学非常勤講師として研究活動を続けていく。将来的には大学教員をめざすという。(浅野有美)