■望月秀記の目

 2年後の東京五輪で競泳が午前決勝になることが決まった。開催中のパンパシフィック選手権のように午前10時から予選、午後は決勝、に慣れている選手にとっては、五輪では昼と夜がひっくり返る感覚だろう。

 30年間競泳を見てきたが、これまで五輪での午前決勝はたった2回しかない。1988年のソウル五輪と08年北京五輪だ。多額の放送権料を払う米テレビ局NBCの意向とみられがちだが、背景には競泳最強国の米国の事情がある。

 マイケル・フェルプスが8個の金メダルを獲得した北京五輪以降、米国では選手のプロ化が加速。今大会、米国代表の半数以上がプロ選手だ。3月にはリオ五輪個人3冠のケイティ・レデッキーが学生ながらプロへ転向した。選手にとって五輪はスポンサー企業を獲得する最大の好機で、自国のゴールデンタイムで中継されれば、それだけ注目度も増す。

 フェルプスの活躍もあって米国では五輪のたびに水連の選手登録数が大きく伸び、北京五輪後の10年間で約10万人増えた。スター選手が活躍し、テレビを見た若い世代の裾野が広がる好循環。午前決勝は米国のテレビ、水連、選手の利益が一致しているのだ。

 今大会に参加した米国のリンゼイ・ミンテンコ監督は「米国のゴールデンタイムで放送されることは、選手にとっても連盟にとっても素晴らしいことだ」と話す。多額のカネを払う五輪での「米国第一主義」に対し、日本がアスリートファーストを貫くのであれば、他国の連盟、選手たちと連携するスポーツ外交力を高めるしかない。(元日本水連広報委員)