壁を3Dスキャンすることで、WEB上での課題閲覧を可能にした「OnlineObservation(オンライン・オブザベーション)」。OnlineObservationとのコラボレーションでお届けする本連載では、膨大なアーカイブの中から厳選…


 壁を3Dスキャンすることで、WEB上での課題閲覧を可能にした「OnlineObservation(オンライン・オブザベーション)」。OnlineObservationとのコラボレーションでお届けする本連載では、膨大なアーカイブの中から厳選した魅力的な課題を紹介していく。このサービスを体感していただくことはもちろん、課題に込められたセッターの思いなども感じてもらいたい。

 今回ピックアップするジムは、2018年3月にオープンしたばかりのDOGWOOD Climbing Gym 調布店。オーナーを務めるのは日本山岳・スポーツクライミング協会の公認ルートセッターであり、W杯やボルダリングジャパンカップでのセット経験もある岩橋由洋氏。1店舗目の高津店と合わせ、日本代表の有名選手が多くトレーニングを積んでいる事でも知られている。ご紹介するのは、本連載第2弾でも取り上げたラインセットの一種「ホールド・テープ同色セット」による3級課題。初見で最適なムーブを思いつけるか、さっそくクリックしてオブザベーションしてみよう。

Vol.4「オレンジ・3級 in DOGWOOD Climbing Gym 調布店」

ウォール:傾斜壁(約140度)
セッター:岩橋由洋(DOGWOODオーナー)
グレード:3級

<3Dスキャン>

 サービス開発者の筒井氏は「この『ホールド・テープ同色セット』というセットスタイルでは、国内のジムで多く見かける『テープの色で難易度を決める』というルールを採用せず、その名の通り使用したホールドと同じ色のテープでセットされているのが特徴です。全ての色を合わせたおかげで、何も考えず、体を動かすことだけに意識をフォーカスさせて感覚的に登ることができる。この体験はラインセットならではだと思います。またテープも基本的には一本線のみと、シンプルで課題が分かりやすいですよね」と本課題の魅力を紹介。

 続けて、「まぶし壁(※1)を登る際の『テープの色と形を覚えて、それを目で追いながら登る』のとは大きく異なるフィーリングです。もちろん目で追いながら登ることが悪いという訳では無く、それは外岩で必須となる足の置き場を探す技術が要求されているとも言えると思います」と、まぶしセットとラインセットの比較点を説明してくれた。

 また、筒井氏はもう一つの見逃せないポイントに壁そのものを挙げる。「黒や茶など暗いトーンの壁、または明るい木目調の壁など様々な壁が存在するなかで、このハリボテ(※2)の色のようなグレー1色に統一されたものは珍しいと思います。各課題の “色” がしっかりと引き立ち、見た印象がカッコいいと評判です。形状は、直線のみで構成されつつも、細かく傾斜がコントロールされていて、立ち並ぶ壁ごとの個性がしっかりと感じられます」

※1 一面にホールドが散りばめられている壁。それらホールドを組み合わせて課題を作ることを「まぶしセット」と呼ぶ。

※2 壁から出っ張っている大振りなホールド。海外ではボリュームと呼ばれることが多い。

 
 今回ご紹介したように、ルートセットにはいくつかのスタイルが存在し、クライミングの楽しみの幅を拡げている。筒井氏によれば「体を動かすことだけに意識をフォーカスさせる」ことをさらに突き詰めた「テープを一切使わないで成立させるラインセット」も存在するとのことで、それは今後の連載でご紹介していきたい。

岩橋由洋氏(DOGWOODオーナー)コメント
「(1店舗目の高津店とセットスタイルが変わりましたが?)個人的に、登りたい課題があってジムに来てくれることが一番嬉しいんです。なので、シンプルで分かりやすく、課題が映えるラインセットのジムをもともと作りたいと思っていました。ありがたいことに、最近は遠方から訪れる方もお見えになっています。そういった意味では、WEB上で課題を閲覧でき、課題に興味を持ってもらうきっかけになり得るOnline Observationが誕生したのはありがたいですね。(店舗づくりのうえで意識されていることは?)課題の難しさやタイプに偏りが出ないよう、バランスは意識しています。それと、やはりラインセットだと課題の数が少なくなってしまうので、今後はホールド替えの頻度も上げていきたいと思っています。もちろんまぶしセットにはまぶしセットの良さがあります。まぶしセット寄りの高津店とこの調布店、それぞれに足を運んでいただけると嬉しいですね」
<ムーブ動画>

OnlineObservation(オンライン・オブザベーション)

3D化された課題の写真や動画をPC・スマホで自由に“オブザベ”でき、かつ今までになかったライブラリとして誰でも共有、自由に投稿も可能な新時代のサービス。クライマーが閲覧することはもちろん、ルートセッターの課題ライブラリとして、クライミングジムのPR効果を狙ったメディアとしても活用されている。

CREDITS

取材・構成・文

編集部・OnlineObservation