24日、W杯開幕戦のスイス・マイリンゲン大会、第2戦のロシア・モスクワ大会と2週間に及ぶヨーロッパ遠征から日本代表団が帰国した。以下、帰国した選手、コーチのコメント。

野中生萌コメント(第1戦:優勝、第2戦:2位)
―― 2年ぶりの優勝となりました。
「もちろん優勝は狙っていたんですけど、本当に優勝できるとは思っていなかったので、驚きの気持ちの方が大きいです」

―― 優勝の要因は?
「去年に比べて優勝したいという気持ちがより強かったですし、オフに新たなトレーニングを取り入れたり、食事の管理も始めました。できることをたくさんやってきたことが、結果につながったと思います」

―― モスクワ大会ではカウントバック(同じ成績で並んだ場合は準決勝の順位が上の選手が上位となる)での準優勝でした。
「決勝2課題目(2トライで完登)は1トライ確実に減らせたなと思うので、本当に悔しいです」

―― ボルダリングの準決勝と決勝の間にスピードが挟まれていましたね。
「体力的にもかなりキツくて、キャンセルも考えたんですけど、いずれは必ずやらなければいけないことなので、今から経験しておこうと」

―― 実際に出場したスピードW杯の印象は?
「初めてのスピードW杯出場だったんですけど、ものすごく楽しくて。もっともっと取り組みたい気持ちが強くなりましたね」
高田知尭コメント(第1戦:6位、第2戦:9位)
―― マイリンゲン大会では初の決勝進出でした。
「すごく嬉しいんですけど、各選手の成績に差もあまりなかったですし、運が良かったんだと思います」

―― 自信が付いたのでは?
「もう少し頑張ろうっていう、前向きなモチベーションになりましたね」

―― 初めての決勝の舞台は?
「緊張しすぎで、全然周りが聞こえていなかった。いつもスタート前にカウントダウンの音を聞いてから始めるんですけど、『え、今やっていいの?』みたいな状態で」

―― 良かった部分をあげるとすれば?
「コンペ中に自分の状況、疲れ具合などを、一歩引いたところから俯瞰的に見ることができていました。焦ってるっていうのも自覚できたし、逆に今は落ち着かせようとか、今トライするのは待とうとか。昔はそうやって考えることができなかったので」
野口啓代コメント(第1戦:3位、第2戦:3位)
―― W杯開幕からの2連戦を終えてみて。
「初戦、2戦目と3位だったんですけど、予選や準決勝を1位通過していて、かなり優勝のチャンスを感じていたうえでの3位だったので、とても悔しい結果でした」

―― 反省点は?
「初戦から準決勝を1位通過できて、思ったよりも順調すぎるなか、決勝課題も意外と簡単で。アテンプト勝負への心の準備ができていなくて、少し緊張したというか」

―― 今シーズンからルールが変更されて、アイソレーションエリア(公平性を保つため、課題や他競技者の登り方を見ることができないように隔離された待機場所)にリザルトが表示されるようになったと伺っていますが。
「モニターが置いてあって、リアルタイムで表示されています。全選手が見てましたね」

―― 完登数の次に優先されるのが、完登に要したトライ数ではなくゾーン(旧名称=ボーナス)獲得数にもなりましたね。
「それで初戦、チョン(・ジョンウォン)は少しリザルトが落ちていました。これからはゾーンも全部取らないといけないと思います。4ゾーンが基準になってくる。バランスよく全ての課題ができないと難しいですよね。何でもできる選手でないと決勝に残れないし、優勝もできなくなってくる」

(編注:初戦でチョンは以前であれば5位のはずが6位に後退。また高田は初戦でルール変更の恩恵を受け決勝に進出したが、反対に第2戦では新ルールに泣いて決勝に進出できなかった)

―― 次の中国2連戦(5月5・6日 重慶大会/12・13日 泰安大会)へ向けて意気込みをお願いします。
「私は3位、3位だったので一つでも二つでも順位を上げたいです。あと中国はモスクワに比べてすごく暑いと思うので、会場も屋外ですし、環境への適応も鍵になってくるんじゃないかと思います」
楢崎智亜コメント(第1戦:2位、第2戦:優勝)
―― 2年ぶりの優勝でした。
「ついに優勝できたっていう感じですね。去年からずっと国内でも国外でも2位が続いていました。あと一歩足りないと思ってそれを埋めるためにずっと頑張ってきたので、すごい嬉しいですね」

―― 足りなかった一歩はどう改善を?
「この冬は今までで一番くらいにトレーニングをしてきたと思っているので、日々の積み重ねが実を結んだのかなという感じはありますね。特に体幹と下半身は重点的に鍛えました。以前は緩傾斜壁のゆっくりした動きが苦手だったんですけど、下半身が安定していることで、手でホールドを持ちづらくなっても冷静でいられるし、安定して重心移動もできるようになりました。下半身強化はスピード種目にも生きてくるはずです」

―― モスクワで優勝を決めた最終課題は、やはり得意な動きでしたか?
「そうですね。これを含めて今回モスクワ大会の課題は傾向が意外で。アレクセイ(・ルブツォフ)とか、フィジカル系の登り(をする選手がロシアにいるの)で、そういう系統でくるのかなって思っていたら、セッターがコーディネーション系が好きな他国の人だったらしくて。全体的に自分の得意な動きが多かったです」

―― ルール変更については?
「順位決定ルールが変わったことの影響は大きかったですね。まったくできない課題が一つあったときに勝てなくなっちゃうんですよね。以前ならそれでも2完登2または3アテンプトとか、完登に要したアテンプト数を少なく収めていれば勝てていたので」

―― 中国2連戦に向けての意気込みを。
「まずは2週間のヨーロッパ遠征で溜まった疲労を取りたいと思います。中国は自分の得意な跳んだり跳ねたりの動きが要求される課題も多いし、ホールドを保持したときの感覚も好きなので、自信を持って行きたいです」
伊藤ふたばコメント(第1戦:27位、第2戦:8位)
―― 初めてのW杯はいかがでしたか?
「ユースの国際大会や国内大会とは雰囲気がまったく違って、上手く力を発揮できなかった部分がありました。次のモスクワ大会では初戦で得た経験を生かし、準決勝に進むことができたので、そこは良かったのかなと思います」

―― 初戦で結果が出なかったのは、やはり緊張が?
「逆にまったく緊張はせず、楽しみな面の方が強くて、かえって集中しきれていなかったんだと思います。普段なら登れる課題でも登ることができませんでしたし、もちろん課題も難しかったんですが、少しでもメンタルが崩れたら簡単に予選落ちしてしまうシビアな世界だと痛感しました」

―― 今まで画面のなかで観ていた野口選手たちの登りを実際に目の前で見て感じたことは?
「W杯の決勝は自分がずっと憧れてきた世界で、生で観ると断然迫力や課題の印象も違いましたし、選手一人ひとりの姿勢などたくさん学ぶこともありました。自分もそこに立って戦いたいって改めて感じました」

―― 中国2連戦に向けては?
「今回経験したことを活かして、目標は決勝進出です」
安井博志代表ヘッドコーチコメント
―― 2戦を振り返ってみて。
「男女で優勝者が出たっていうのが、最大の収穫ですね。『今シーズンもいけるぞ』とチームが活気づきましたし、野中が優勝した初戦後のミュンヘン合宿ではみんながモチベーションに溢れていました」

―― 昨シーズンと比べ、優勝した野中、楢崎選手の印象は?
「かなり冷静に周りが見えていますし、慌てなくなりましたね。挑戦者的な部分から、本当のトップ選手に必要な精神的な強さの成長は感じました。また第2戦でヤンヤ(・ガンブレット)に破れてしまったとはいえ、野中はカウントバックという僅差で、昨年つけられていた差を埋めるような、ほぼ同じパフォーマンスができています」

―― W杯初出場の選手たち(伊藤、菊地咲希、土肥圭太)については?
「伊藤も言ってましたけども、W杯というところは空気が違う。やはりまだ慣れていない部分は大きいですね。そういった意味ではヨーロッパの空気のなかで2週間滞在して、2戦終えられたっていうことはすごく成長につながると思います。結果は出したいけれども、急ぐ必要はない。必ず力を出せる選手たちだと思っています」

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編集部