4月21・22日、ボルダリングW杯第2戦がロシア・モスクワで開催された。男子は楢崎智亜が決勝を唯一の全完登で2年ぶり3度目となる優勝を果たし、女子では熱戦を制したヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)が優勝、野中生萌が2位、野口啓代が3位に輝…


 4月21・22日、ボルダリングW杯第2戦がロシア・モスクワで開催された。男子は楢崎智亜が決勝を唯一の全完登で2年ぶり3度目となる優勝を果たし、女子では熱戦を制したヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)が優勝、野中生萌が2位、野口啓代が3位に輝いた。

 2016年の世界選手権パリ大会以降、国内外を通じ一度も頂点に立てていなかった楢崎が、見事な逆転劇で待望の金メダルを獲得した。男子決勝の第1課題、バランシーなスラブ(緩傾斜壁)上で飛びつく難所を6トライ目で攻略し完登した楢崎は、昨年年間王者のチョン・ジョンウォン(韓国)らに続き4位でのスタート。パワーが求められる第2課題は地元のアレクセイ・ルブツォフが強靭なフィジカルで会場を沸かせるも、楢崎、チョンはそれを上回る一撃(最初のトライで完登すること)。楢崎は3位に順位を上げる。第3課題はそれまで首位だったグレゴール・ヴェゾニック(スロベニア)を除く5人が完登し、楢崎はチョンに完登のアテンプト数で1及ばない2位となる。

 そして勝負を分ける最終課題は、スタートからダイナミックなムーブが要求される楢崎得意のものだった。ぶら下がった状態から勢いをつけて足場に飛び乗り、そのままダブルダイノ(ジャンプして両手でホールドを掴みにいくこと)する難所を、楢崎はバネのような動きから見事に2トライで完登。最終競技者のチョンは3アテンプト以内の完登で優勝というシチュエーションだったが、なかなかダイノが決まらずに大苦戦。9トライ目でゾーンを掴むに止まり、課題を進めるごとに順位を上げた楢崎が全完登で優勝を果たした。2位には初戦優勝者のイェルネイ・クルーダー(スロベニア)、3位には初のファイナルを戦ったヴォゾニックが入った。

 一方の女子決勝ではマイリンゲン大会に続いて野口、野中の2人がファイナリスト入り。第1課題、足の置き場に苦慮する繊細なスラブに多くの選手が苦しむなか、野中、ガンブレットらがTOPを射止める。その後、野中が第2課題を2アテンプトで、第3課題を一撃すると、ガンブレットもまったく同じスコアで進んでいく。

 最終課題、ファーストトライの野中はダイナミックなムーブを止めて会場を沸かせると、その勢いのままTOPを掴み雄叫びをあげる。優勝するには一撃しか残されていない状況のガンブレットだったが、スロベニアの19歳は貫禄すら感じさせる圧巻の登りでミッションを完遂。同一スコアの場合は準決勝での成績が優先されるため、準決勝1位のガンブレットが今季初優勝となった。野中は準決勝の結果に泣き2位、野口は最終課題で逆転し3位に食い込んだ。

女子表彰台=(左から)野中生萌、ヤンヤ・ガンブレット、野口啓代。男子と合わせ、日本とスロベニア勢が表彰台独占という結果となった。(写真=JMSCA)

 なお、今大会ではスピードW杯開幕戦が同時開催。日本から男女各6人がエントリーしたが、1人も予選突破はならず。男子では緒方良行の43位(7秒90)、女子では野中生萌の44位(10秒51)が最高だった。男子決勝では現世界記録(5秒48)を持つレザー・アリプアシェナ(イラン)が5秒82という好記録で圧勝。女子は昨季の年間女王アヌーク・ジョベール(フランス)が世界記録に並ぶ7秒32を叩き出し優勝に華を添えている。

 楢崎が2位のマイリンゲン大会に続き見事なスタートダッシュを切り、女子も野中、野口が2大会連続での表彰台に並び立つなど今年も好調な日本代表チーム。15歳の伊藤ふたばも初戦の27位から大幅に順位を上げる8位フィニッシュとなり、今後の可能性に期待を感じさせるなど、楽しみは尽きない。

<ボルダリング男子決勝>

1位:楢崎 智亜(21)/4t4z 12 12
2位:イェルネイ・クルーダー(27/スロベニア)/3t4z 5 6
3位:グレゴール・ヴェゾニック(22/スロベニア)/3t4z 6 9
4位:チョン・ジョンウォン(22/韓国)/3t4z 9 18
5位:アレクセイ・ルブツォフ(29/ロシア)/2t4z 4 27
6位:ガブリエーレ・モローニ(30/イタリア)/2t3z 7 14
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8位:渡部 桂太(24)※準決勝進出
9位:高田 知尭(23)※準決勝進出
10位:杉本 怜(26)※準決勝進出
14位:原田 海(19)※準決勝進出
17位:藤井 快(25)※準決勝進出
19位:石松 大晟(21)※準決勝進出
21位:村井 隆一(23)※準決勝進出
23位:渡邉 海人(21)
25位:緒方 良行(20)
28位:藤脇 祐二(22)
41位:土肥 圭太(17)

<ボルダリング女子決勝>

1位:ヤンヤ・ガンブレット(19/スロベニア)/4t4z 7 5 ※準決勝1位
2位:野中 生萌(20)/4t4z 7 5 ※準決勝4位
3位:野口 啓代(28)/3t4z 8 9
4位:ペトラ・クリングラー(26/スイス)/3t4z 9 10
5位:ファニー・ジベール(25/フランス)/2t3z 2 3
6位:ショウナ・コクシー(25/イギリス)/1t3z 4 6
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8位:伊藤 ふたば(15)※準決勝進出
13位:菊地 咲希(15)※準決勝進出
31位:中村 真緒(18)
37位:小武 芽生(20)
49位:倉 菜々子(17)
59位:尾上 彩(22)
66位:金子 桃華(18)

※左から氏名、年齢(大会初日時点)、所属国、決勝成績
※決勝成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数

<スピード男子決勝>

1位:レザー・アリプアシェナ(23/イラン)/5秒82
2位:ウラジスラフ・デューリン(23/ロシア)/6秒87
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43位:緒方 良行(20)/7秒90
49位:藤井 快(25)/8秒50
54位:楢崎 智亜(21)/8秒85
56位:石松 大晟(21)/8秒86
57位:土肥 圭太(17)/9秒11
71位:原田 海(19)/false start

<スピード女子決勝>

1位:アヌーク・ジョベール(24/フランス)/7秒32
2位:ユリヤ・カプリナ(24/ロシア)/false start
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44位:野中 生萌(20)/10秒51
45位:伊藤 ふたば(15)/10秒66
50位:倉 菜々子(17)/11秒19
53位:野口 啓代(28)/11秒61
62位:小武 芽生(20)/12秒93
63位:菊地 咲希(15)/13秒05

※左から氏名、年齢(大会初日時点)、所属国、成績
※1・2位選手の成績は決勝記録
※日本人選手の成績は今大会の最高記録

CREDITS

篠幸彦 /

写真

Ryu Voelkel/アフロ