「ピッチの内外で感情・魂を皆さんに届けられるように」

記事冒頭の動画は、先日行われた「2018 J.LEAGUE キックオフカンファレンス」でロアッソ熊本・巻誠一郎選手が発した言葉だ。

取材エリアで話を聞かせてくれた熊本出身熱血フットボーラーは、新シーズンを待ちわびているように見えた。個人的で抽象的な感想で申し訳ないが正直、あそこまで晴れやかな顔つきは意外だった。

彼の口癖は「ガムシャラ」だった。いつしか”ガムシャラ巻”と呼ばれた男は、日本のサッカーを変化させた。代表に招集された時代では、得意のヘディングを「利き足は”頭”」と表現したり、孤高を貫く中田英寿の指示に従わず「僕は真ん中にいたいんです」と周囲を驚愕させたエピソードは有名だ。

表敬訪問した小学校では、ピカピカのランドセルを背負った小学1年生に「何事にもガムシャラに過ごしてください」と大真面目でメッセージを贈り、小学生と保護者をポカーンとさせ、一気に張り詰めた空気を一転させた。試合中に顔面を4針も縫い、オペ20分後にピッチに立ったこともある。

震災を襲った熊本では、自ら率先し臨時駐車場に車の誘導を行った。故郷の変わり果てた目の当たりにした巻は、プロのサッカー選手なのに「サッカーどころではない。熊本が大事だ。」と訴え続け、ボランティアに明け暮れる。全てがガムシャラで突発的、そして影響力も絶大だ。

そんな巻のサッカー人生は、決して順風満帆ではない。激動の瞬間は何度も訪れ、ここ数年は ”サッカーの神” からも厳しい ”試練” を与えられた。2016シーズンは震災の影響で練習不足になり、走りたくとも走れない壮絶なピッチで泣きながら闘った。昨年は、ゴールに向かい1年間休まず自身を限界まで追い込んでいた。

どんな時も前を向き最後まで決して諦めない”ガムシャラ巻”は「2018 J.LEAGUE キックオフカンファレンス」にふわっと現れ、大勢のメディアがごった返す空間でひときわ笑顔を輝かせながら、ある言葉を繰り返した。

 

「とにかく試合に出たい」

 

この言葉には、沢山の重みが感じられた。昨シーズン、ロアッソ熊本はかろうじてJ2残留を決めたクラブだ。自動降格圏21位でフィニッシュ、本来ならJ3降格の危機だったが、J2ライセンスを持たず昇格できない秋田・沼津がJ3の順位を3位以内を確定させ、熊本降格の可能性が消えた。(2008シーズンJ2昇格以来となる)クラブワースト順位という結果を受けて、彼はどんな想いでピッチに立っていたのだろう。言い訳など決してしない人間は、何を目標に据えてサッカー人生への覚悟を決めたのだろう。

多くのアスリートにとって敗北や後悔はその後の人生において”血や肉”となり、強さや成長に繋げるキッカケとなる。しかし、”ガムシャラ巻”に限っては、一般的な方程式は当てはまらない。もはや”血や肉”どころか、生まれ変わっている状態かもしれない。数日前、まるで開幕を待ちわびた少年のような笑顔が全てを物語っていた。

”旧・ガムシャラ巻”は、2018シーズンに”新・ガムシャラ巻”となって、熊本でお披露目されるはずだ。ホーム&アウェイで大暴れする”新・ガムシャラ巻”の雄叫びは何度も目撃されるだろう。熊本の開幕戦は、山口と対戦。熊本が開幕戦を勝利したい気持ちで、山口を上回るサッカーが必須となる。”サッカーの神”が与えた”チャンス”の順番は、熊本に回ってきた。その瞬間に熱血フットボーラー・巻誠一郎の存在は、絶対に欠かせない。

熱血取材/文:編集部スージー

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J.LEAGUE全国各地のスタジアムに一人でも多くの人を誘いたいスポブル新人編集部員スージーが、J.LEAGUEに関わるヒト、コト、モノを取材し記事化するスポブル限定コンテンツ。阿部勇樹選手のフリーキックを市原臨海競技場で観た翌日から、J.LEAGUEサポーターになったスージー。雨の日も風の日もJ.LEAGUEという最高の空間で泣き笑い怒り、サッカー取材に携わり十数年。過去取材では、名将イビチャ・オシム氏から突然オシム語録を継承され、大勢のメディアが集う国立競技場で大恥をかいた苦い経験も併せ持つ。個人的な夢は、インターネットとJ.LEAGUEと地域のさらなる共存。千葉県出身で、J2/ジェフユナイテッド市原千葉に興味が高い。今季の期待は、高橋壱晟(たかはし・いっせい)選手(J2/レノファ山口FC)の突破力。

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